スーパーエロガキ物語
深夜の一時をまわった。
この時間は1日において最も汚い。なぜなら、思春期を迎えた男と女が一番あんあんしたがる時間帯だからだ。
リア充どもは顔を歪ませ、自身が人間であることすら忘れてひたすら腰を振る。
ぼっちはぼっちで、人としての理性を忘れて一人で頑張っている。
身近なところでは、今頃クラスのA君とCがやりまくっていると思う。
そう思うと自然に涙が出てくる。私だってA君と付き合いたかった。それをCに取られた。あのクソ女、ちょっと胸がでかいからって露骨にそれをアピールしやがって。私も胸パッド買おっかな。
そんなことより。今日は大事なイベントがある。
本日は十二月の十日。クリスマスを目前に控え、さらにリア充がうっとうしくなる時期……ではなく、サンタさんが待ち遠しくなる超ウキウキの時期である。
別に私はサンタさんなんて信じてない。サンタさんより彼氏が欲しい。
だが七つ下の弟――シュンはまだ七歳だ。彼女よりサンタさんが欲しい年頃である。
だから夕べ、親にこう言われた。――サンタさんに化けてシュンの欲しいものを聞いといて。これ、サンタさんの衣装ね。
なにが楽しくて真夜中にサンタのコスプレなんかせにゃならんのか。しかし小遣い五千円を突きつけられてはぐうの音も出なかった。足元見やがって。
仕方がない。さっさと仕事を終わらせて、五千円にありつこう。
☆
コンコンとドアをノックする。
「シュンくん、シュンく~ん」
返事がなかった。
おかしい。寝てしまったか。
今日は起きている約束を親としていたはずだが。
「シュンくん、入るよ~」
勝手にドアを開ける。
「わわっ!」
驚いたような声。どうやらシュンはベッドに潜り込んでいたらしい。
「シュンくん、サンタさんだよ~。出ておいで~」
「サ、サンタさん? ちょっと待ってて!」
ベッドのなかでなにやらイソイソしているシュン。
様子が変だ。なぜ早く出てこない。
私ってことがバレたかな。
でもそんなはずはない。ヘリウムガスで声を変えてるし、変装も完璧なはずだ。
数秒後、シュンはベッドから降りた。なぜか怯えている目つきである。
「シュンくん……どうしたの? なんか汗すごいけど」
「えっ!? いや、なにもしてないよ!」
なにもしてない? 妙な返答だ。
おっと、そんなことはどうでもいい。仕事仕事。
「シュンくん、もうすぐクリスマスだね」
「う、うん」
「私がなんでも好きなものを送ってあげるよ。なにがいい? ゲーム? マンガ?」
「ん~」
シュンはしばらく黙考していた。
「ううん。ゲームもマンガもいらない」
「へっ……?」
おかしい。そんなはずはない。シュンはたしかポ○モンとか妖怪○オッチとかが大好きなはずなのに。
「いらないって……本当かいシュンくん」
「うん、いらない」
「遠慮なんかしなくていいんだよ。私はサンタさんだ。欲しいものはなんでもあげるよ」
「ほんと……?」
「ほんとさ」
もしシュンの欲しいものを聞き出せなかったとなれば、小遣いがもらえなくなってしまう。絶対に聞き出さねば。
シュンはまたしても黙考していたが、ほどなくして口を開いた。
「……絶対に誰にも言わないでね。お母さんとかお姉ちゃんには百パーセント内緒だよ」
「うん、約束するよ」
「ぼく……、おち○ちん触ってほしい」
「はっ……!?」
思わず大きな声を出してしまった。と同時にヘリウムガスが切れた。慌てて口を塞ぐが、時すでに遅し。
「その声、まさかお姉ちゃん!?」
「ち、違うよぉ。私はサンタさんだよぉ」
「嘘だぁ! その声は絶対お姉ちゃんだぁ! うわーん!」
そう言って泣き叫ぶシュン。
まずい。こんな時間に泣き出されては色々迷惑だ。
「わ、わかったよシュンくん! 私が望み通り触ってあげるから落ち着きな!」
「やだよー!! お姉ちゃんに触ってもらっても気持ち悪いだけだよー!」
き、気持ち悪……!?
「なんだとこのクソガキ! 人が下手に出ていれば! 私だってな、この貧相な体に悩んでんだよコラ!!」
瞬間、妖怪オカアサンが現れた。
「うるさい!」
その後、夜が開けるまで壮絶な家族会議が開かれた。