捕縛、そして束縛
清楠高校。京都はS市に建設された私立学校。一昔前は良家の子女が行儀見習いで入学するお金持ち学園として有名だったが、代を変えてからは金を払えばどんなバカでも入れる学園だと有名になってしまう。
幼稚舎からの内部組は今でも大きな企業の子息だったり元華族の娘などが多いが、高校からの外部組は中流家庭の、それもどこの高校からも入学を拒否されたちょっと素行の悪い奴らばかりの集まりである。
そんな学園の北に位置する建物は昔から人でないモノが〝出る〟と生徒達の間ではよく噂されていて、実際見たという者もちらほら。
「そしてやって参りました、ここがその噂の旧校舎でございます!」
つらつらと語られたモノローグと共に、ドンッと眼前に鎮座する建物にすっと指を指し高らかに紹介してくる鉄之助に、俺は露骨に嫌そうな顔を見せる。
何故か。
それは今眼前に見る建物がこの間新撰部で教えられた曰く付きの旧校舎だったからだ。
薄汚れた壁を見上げれば山南さん作であろう札が貼られていて、その札から時折バチバチと青い火花が飛んでいる。
ああ、これは間違いなくここに入ったらあの人にお仕置き受けるレベルだ……。
先日受けた仕打ちを思い出し、サーッと青ざめる顔。それを鉄之助は俺が怖がっていると勘違いしたのか、ニシシッと悪戯な笑みを見せる。
「なぁんだよお前もしかしてこーゆーの怖いのか?」
「ああ」
化物がっつーより、ここを管理してる眼鏡がな。
「ここは入るなって言われてんだろ」
入学式の時のホームルームで、担任にこの旧校舎は建物が古くて壁にヒビが入ってたりして危ないから入らないようにと言われた。つか、それなりに視える人間だったら絶対近寄らないと思うけど。