捕縛
就業を告げる鐘が校舎内に鳴り響いた。それと同時にガヤガヤと騒がしくなり帰り支度を始めた生徒達の中、俺だけ未だ着席したまま。
頬ずえをついて、ぼーっと机に置かれた一枚の紙を見つめる。
昨日、話が終わった後で伊織に手渡されたその紙には『入部届け』と書かれていた。
『もし私達に協力してくれるんだったらこれを持ってまたここへ来てもらえるかしら』
『入部届け?』
話を聞くに普通の学校じゃまず有り得ないような部活動。てか、入部希望者もいるかも怪しい部なのに入部届けって……。
『一応我が校は必ず何かしら部活動に入るのが決まりですからね。形上ですよ』
『ちなみに上辺でのうちの活動内容は何でも屋。先生達専用のな』
『何でも屋ぁ?』
って事は教師のパシリって事じゃねぇか。
これでもかって程露骨に嫌そうな顔をすればそれを見た土方さんが苦笑いしながら『大丈夫』と俺の肩をポンポンとたたく。
『実際言われても荷物運びとかそんなんだからさ。それもたまにだし』
『じゃあ普段何やってんだよあんたら』
『うーん……学園内の散歩、とか?』
散歩って……。
なんか一気に胡散臭いぞこいつら……。
『いや、散歩も大事なんだよ? さっきみたいに結界の隙間を縫って旧校舎から抜け出す奴とかいるし。そーゆーの見張ったり捕まえたりするのも俺達にしか出来ない仕事だから』
『ふーん』
まぁ簡単に言えば牢屋の看守みたいなもんか?
『まぁ今すぐ答えをくれとは言わないからさ。ちょっと考えてみてくれるかな?』
そう締めくくられてその日は終わったんだけど……。
「新撰部……かぁ」
なんだかなぁ……。
名前を聞く限りだったら歴史オタクの集まりって感じなのに、昨日の山南さんの、なんだっけ。し、しき、しきが、み? の犬があの化物を食うの見ちまったし……。