十二
本人はフォローしてるつもりなんだろうが、実際は真反対。土方さんが喋る度にどんどん山南さんの笑みがどす黒くなっていく。
勿論それを本人は気付いておらず、未だ「やぁ紗月も人間だよなぁ」とか「大丈夫俺と伊織がフォローするからさ」と言っている。
いい加減気付け、と俺の口を塞いだままの掌をバンバン叩いてみるけどそれは無駄に終わりそうだ。
最終山南さんが眩しい笑みを見せて懐から二枚の札を出したとき。やっと事の状況に気が付いた土方さんがびくりと肩を揺らした。
「さ、さつ、き……? なんで札なんか。しかもそれなんか"爆"って書いてありますけど…………」
「おや、駄犬のくせに神代文字が読めるんですか? じゃあ皆まで説明しなくてもいいですね」
言いつつ山南さんが札を持った手を振り上げると、それと同時に土方さんはガバリと立ち上がり逃げ出した。
「うわっ、ちょっ……それ絶対火傷じゃ終わらないだろ!!」
「大丈夫大丈夫、ちょっと穴が空くぐらいですよ」
「何が大丈夫だバカヤロー!」
山南さんが放った札はどういう事か宙を舞い、土方さんと絶妙な距離を保ちながら彼を追いかけていく。まるで、そう、照準を合わせたミサイルのように。
その札から目を剥いて必死に部屋中を逃げ惑う土方さんを見て、フフフと怪しい笑いをもらす山南さん。そんな二人を俺はポカンと惚けた顔で眺めて、伊織は慣れているのか深くため息をついて肩をすくめた____。