プロローグ Ⅱ
気づくと少女は草原で寝ていた。
森に出たときに安心して寝てしまったのだ。
空が夕暮れの赤色に染まりかけている。
少女は体を起こして辺りを見渡した。
すると先程の少年が自転車に寄りかかり、何かを作っていた。
少女が起きたのに気づいたのか、少年が少女に向かってきた。
少女はいきなり少年が向かってきたので、顔を下に向けた。
「あっ起きた?びっくりしたよ!でたときによんでもへんじしないから」
「ごめんなさい…」
「んーん。きにしてないよ。ねえ、これあげる!」
そう言って手渡されたのは、少しいびつな形をした花冠だった。
「はじめてつくったから、じょうずにできなかったけどね」
「ありがとう」
少女は顔を下に向けたまま礼を言った。顔を見られるのを恐れているのだ。
「あのヒヨコさんは?」
「ピー!」
ヒヨコは少年の肩に乗っていた。
「ヒヨコさんもありがとう…」
「ピー!!」
少女の声に応えるように、ヒヨコが力強く鳴いた。
「---のてれやさん!」
「ピー!」
「…なかよしさんだね」
「うん!でも、きょうからキミもなかよしだよ!」
「ほんとう?」
少年の言葉に少女は少し驚いた。
今まで自分に仲良しだと言ってくれるヒトがいなかったからだ。
「うん!じゃあ、そろそろいこうか」
「どこに?」
「こーばん!おまわりさんはなんでもしっているから」
「うん」
「じゃあ、じてんしゃにのって!」
顔を見られたくないように振舞う少女を不思議に思いながらも、少年は肩にヒヨコを乗せて、自転車を押し交番へと足を進めた。
少しして交番に着くと、少年は建物の前に自転車を止めて、大人のヒトを呼ぶためにヒヨコを少女の肩に乗せて、建物内に入っていった。
「この子が迷子の子なんだね」
そう言って一人の警察官が少年と共に出てきた。
「うん!」
警察官は少女の顔を見るために屈んだ。
「!」
少女の顔を見た警察官は言葉を失うほど驚いた。
「ううっ」
警察官に対して怖くなったのか、少女は泣き始めた。
「あー!おまわりさんなかした!いけないんだ!」
「ピー!」
「ああ、すまん!泣かないでくれ!」
少年とヒヨコにダメ出しされ、警察官は少女を慰めようとしたが、泣き止まない。
「んー…!」
少年は良い考えが思いついたようで少女の前に立った。
「ねえ、さっきいったよね。ボクがいればだいじょうぶだって」
少年がそう言うと、すると少女は泣き止んだ。
「ねえ、キミのかおみてもいい?」
「……うん」
少女は少し迷って返事をすると、初めて顔を上げた。
「うわあ!キレイ!」
「!…ほんとう?」
少女は驚いた。
「うん!あおときいろのめキレイ!」
自分の異色目を見てキレイなどと誰も言わなかった。
少女は初めて見る少年の姿をまじまじと見た。
緑色の髪が風に揺れて、哀愁を感じる姿を少女は忘れないと思った。
「ねえ、キミのなまえは?」
少年が聞いてきた。
「!-------…」
「---だね!ボクは-----っていうんだ!こっちはあいぼうの---だよ」
「-------だって!?ちょっと待っていてくれ」
そう言って警察官は交番の中に入って行った。
「どうしたんだろう?」
「ねえ…」
「ん?どうしたの?」
少女は少年の服の袖を引っ張って声をかけた。
「もうバイバイかな…」
「んー。たぶん…でも、またあえるよ!」
「!…うん!」
少女はその日初めて笑った。
「ピー!」
「やっとわらったね!じゃあ」
少年は小指を少女の前にさし出した。
それに反応して少女も小指を出す。
「やくそく!!」
平仮名だけの会話って難しいです。
そう考えると漢字は便利だと、痛感します。
これで、プロローグはおしまいになります。