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終わる時・始まる時

平成12年 4月30日 AM12:00

「もう1か月が過ぎちゃったか・・・・・」

人が寝静まり、住宅街の明かりが消え、春を感じさせる優しい風が、ゆらゆらと桜の花びらを空へと舞い上げていく。

そんな真夜中に一人、公園の広場に立っていた。

しかし、それの色は夜空ではない、まるで炭で空を塗ったかのようなグレーの空・・・

そんな異常な空の元の立つ、人影は現代では絶対に着ないであろうRPGに出てきそうな黒いレザーコートを身にまとう一人の少年が夜の夜空を見上げながらつぶやく。

「ウォォォォォォォン」


人が住む街中に獣の遠吠えが響きわたり、地面をかける足音が少年へと近づいてくる。

彼は待っていたと言わんばかりにゆっくりと瞳を閉じ体を後ろへと向けていく。

振り向くと同時に近づいきた足跡はドンッと大きな音と共に止まり消えていく。


少年は再びゆっくりと瞳を開けるとそこには漆黒の体毛に覆われ、鋭い牙と爪を月光に煌めさせ、獲物に対しての唸り声をはっしていた。

狼――――都会に居るはずのない狼がそこにいた。しかし狼といっていいのだろうか?

全長2メートルほどの狼がこの世にいるのだろうか。

だが、その圧倒的大きさに怯えることなく、少年は深いため息をつき、口を開く

「はぁ~・・・・だから、嫌なんだよ・・・・」


少年は右手を開き、空に上げる。

(出てきてくれ・・・・)

心の中で、何かを呼ぶ・・・それに、答えるように少年の足元には二色の光が現れる。

黒と金色の光が立ち上がる、その光は少年の足元をまるで、走るように進んでいく。

それは、少しずつ地面に跡を刻んで行く、六つの円を結ぶように六角形になり、魔方陣が刻み込まれる。


そして、少年の手にも二つの光が集い、形を成していく・・・金色の宝石・・・黒い刃・・・長槍のように長い戦斧が少年の手に現われる。


戦斧を華麗に振り回す、それは、舞い散る桜と共に舞っているかのように・・・

そんな中、漆黒の狼はその鋭い牙を光らせながら、少年を睨み付け、その巨大な前足で地面を蹴り、少年へと飛び掛かる。

狼は爪をたて、少年の顔面に向けて伸ばしていく、しかし、少年は避けようとはせずにその場に立ったまま。


鋭い爪が少年にあたろうとした途端、ガっシャァンと何か金属がぶつかったかのような音が響き渡る・・・その音は、爪と少年の間に光の壁が現れ、少年を護っている。


狼は前足に力を込めているように震え、地面についている足は、力を込めているのを表すように大地に少しめり込んでいる。

しかし、少年は光の壁に守られ、ぴくりとも動いていなかった。

少年は、下を向き大きくため息をつく・・・そして、再び、狼を見つめるとその手に持つ戦斧を振りかぶる。

戦斧から斬撃を飛ばし、狼に向かい飛んでいく。


「ウォオオオオオ!!!!・・・・・」

狼は前足を伸びたまま、唸り声を上げる・・・しかし、それは徐々に弱くなり消えていく。

唸り声が止まると同時に、左右上下に狼の身体がずれていき、そして、塵のように、灰のように崩れて行った・・・・


「はぁ~・・・ようやく終わった・・・」

少年は、再び、大きなため息を尽いていると、少年を包むように影が覆った。


「遅いわよ!!あんなのに何手こずってんのよ?」

空から聞こえるのは若い女性の声、少年は肩を落としながら、空を見る。

そこにいたのは、髪はかすかに色素が薄いのか茶髪に見え、ポニーテールに赤い紐で結んでおり、桜花色の着物に、藍色の袴のように見れるロングスカートを履く巫女装束のように見える服装に、銀色の羽衣纏っている。

羽衣の両先には短剣のような刃が鎖で繋がっていた。

さらに服の上には、細部に白い甲冑のようなものを身に纏っている少女が宙に浮いていた。



少年は、やっぱりかと言わんばかりに落ち込み、地面を見つめる。

「うるさいぞ! ”かなで”!」

空飛ぶ少女・・・奏に問いかけた。


その言葉に、奏は頬を膨らませながら叫び始めた。

「何よ!!全然、こっちの手伝いもしないで、こんなとこで戦ってる奴を探しに来て上げたんじゃない!!って!”海里カイリ聞いてんの!?」


海里と呼ばれる少年は奏の話も聞かず、とぼとぼを歩いていた。

「聞こえてるって!大声出さなくてもだろ? それに、そろそれ”無界むかい”が消えるぞ!!」

「わかってる、わよ!!」

奏はそう言うと空から、まるで段差から飛び落ちるように大地にその足を着け、海里の元に走って行った。


パキッパキッ!!


奏が走っている途中、二人の耳に聞こえてくる、まるで何かが割れるような音だった。

それは、灰色の空にヒビが入り、崩れていく・・・・そして、崩れいく空から見えたのはいつも見ている、黒い夜空だった。

「まぁ、今日もはずれだったね・・・”手がかりなし”!!」

「まぁな・・・てか、今日でもう1か月立っちまったな・・・」

「そうだね・・・本当に私たち”元の時間”に戻れるんかな?・・・・」


二人は、空を見上げながら、たそがれていた。

そう、二人は・・・いや、彼らはこの平成12年の時間の者ではない・・・・今から1か月前と13年後の未来から始まっていた。


平成24年「10月10日

毎日のように働く日常を過ごしている社会人、学生たち。

何事もないようにただに日々を凄ぢている。

時には友人と出会い、遊び、時には恋人と共に時間を過ごし、互いのことを分かり合っていく。

仕事をし、勉強をする。


ただそれだけの人生を人は繰り返し積み重ねていっている。

だが、全ては喜びや幸せだけではない・・・・・・。


それに比例して必ずと言っていいほどに苦痛と不幸がその牙を向くのだから。

彼ももそのアメと鞭の人生を今日この日も、変わらぬ朝で迎える。

瀧峰タキミネ 海里カイリは飲食店に勤務する24歳の青年は特に長所などなくただ平凡意よくも悪くも毎日を何事もなく仕事をしていた。


「はぁ~~~~辛い、死にたい」素晴らしい朝に似つかない第一声を口にし、頭を掻く。

180cmを超える長身だが筋肉はほとんどなく骨と皮だけと言う表現が似つかわしい体をゆっくりと起こしていく。

仕事への荷作りをし,職場へと向かう。


ただ、ただその平凡でなんの変化もない日々・・・

そう、彼はつまらない毎日を過ごす

新宿行きの電車に乗り、その日一日の始まりと終わりの仕事場へと向かう。



夜、仕事も終わり、何もすることなく自宅へと向かっている。

「はぁ・・・今日も最悪だった・・・なんでこうだめなんだよ・・・俺は・・・」


駅から歩きながら、今日起きていた出来事を思い出し、自己嫌悪の落ち込んでいた・・・

そんな暗い雰囲気が海里の運命を変えてしまった。


「9時・・・帰ってもすることないか・・・!、この道・・まだ通ったことないよな?」

海里は普段通っている道ではなく、人通りの少ない、暗い道を見つけた。

年甲斐もなく未知の道に興味を持ち、進んでしまう。


「へぇ~こんな道だったのか!こっちの方が駅まで近いかも・・・」

暗い道を歩いていると、後ろから誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。

(あっ・・・やっぱり、人通るんだ・・・)などと考えながら、特に気にせず進み続ける。


しかし、いくつかの横道を過ぎても、足跡は遠くならず、それどころか少しずつ近づいてくる・・・

(た、ただ、まだ同じ道なんだよな・・・)

いくら成人した男だとしても、暗い夜道で後ろから近付いてくるのは、正直怖い・・・


海里は少しずつ、歩く速度を上げていく。

足音は遠くなることもなく、さらに近づいている。

しかも、その足音は初めに聞こえ始めたときと変わらずのスピードだった。


そんな時、電柱が見えてきた・・・海里はその電柱に向けて早歩きで向かい、たどり着く。

「はぁ・・・はぁ・・・」緊張のあまり、呼吸が切れてしまう。

呼吸を整えようと必死になっていると、足音が消えていた。


(な、なんだ・・・早とちりか、ははっハズい・・)

呼吸を整え、気になってしまい、後ろを振り向いてしまう。

「えっ?」

海里は、驚き自分の目を疑ってしまった。


今まで、通っていた道が”消えて”いた・・・今まで通っていた道・・・いくつも家が建っていて、いくつもの木々があったはずなのに、振り向き、見た光景は・・・闇の一言がふさわしい。

「な、なんだよ・・これ?夢?」

その光景を受け入れられず、海里は目をこするがまったく光景は変わらず、後ろに下がってしまった。


ドン!


「!!?」

後ろに下がると背中に何かが当たり、勢いよく振り返ると・・・ドズッ!!

海里の左胸に違和感を感じた、海里はゆっくりと自分の左胸に目線を送る。

そこに見えたのは、黒い刃・・・刀・・・胸に刺さる、その黒い刀身に流れる赤い光は俺の左胸から流れていた。

「あ・・あぁ・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


それを認識した途端、左胸から伝わる激痛に身体中が熱くなっていく・・・そして、流れる己の血に海里の服が赤く変色していく。

そして、痛みのせいで声が出ない、驚きの叫び声を叫んでから、悲鳴も、助けも呼べない、海里は胸に刺さる刃を無意識に握りしめ、地面に膝をついてしまう。



膝をつき、後ろに倒れ込んでしまいう。

その時、倒れいくそこにいた人物を気を失いかけながら、見つめてしまう。

黒い服・・光の反射で髪がまるで銀髪に見える・・・・しかし、顔は確認できないでいた。

電柱の光で顔は影で隠れていた・・・・

「ふ・・・うざ・・・んな・・・」

俺は、消えゆく意識の中で最後の言葉を発する・・・そして、犯人は倒れた海里に言葉を送った。



「行ってらっしゃい、よい”過去”を・・・・・・ように・・・」




その言葉を最後に聞きながら、闇へと落ちていく・・・・・・・・。


平成12年 3月



「ああああああああああああああああああああああ!!!!!! はぁ、はぁ、はぁ・・・」

俺はいきなり勢いよく、起き上がり荒々しく息を切らしていた・・・。

「ゆ、夢・・・?」

汗をかき、右腕で額の汗を拭う。

(なんだよ・・・夢かよ・・・嫌な夢だな・・・!?ここは・・・)

生きていることに安堵するが、なぜが、違和感を感じた。


そこは、実家の自室のベッドに眠っていた・・・しかし、そこはもう住んでいない部屋だった。

「ここは・・・俺の部屋?・・・でも、なんで昔の状態なんだ・・・・」

部屋は、俺が中学生の事に使っていた部屋・・・高校からは寮へ入り、今ではもう倉庫として使われていたはず・・・

しかし、今はいる部屋はまさしく俺の部屋だった。


(いつ家に帰ってきたんだ?・・・ん?)

ふっと目覚まし時計が目に入ってくる、時刻AM8時・・・・

「いやぁあっぁあああああああああああ!!!遅刻!!!!!!!!!!」

仕事開始時間は9時からだ、実家から向かうと2時間ほどかかる為、さらに全身から冷や汗が噴き出す。

俺は、ベッドからずり落ちるように慌てて、1階にかけ降りる。


「かかかかか、母さん!!なんで起こしてくれないんだよ!!」

リビングにたどり着くと、扉を叩くように開く。

そこに居たのは俺の母親が、驚くように俺の顔を見つめながら、驚きの言葉を口にしていた。


「何よ!カイリ・・・まだ、時間あるじゃないの!」

「何言ってんだよ!!お台場までここから何時間かかると思ってんだよ!!仕事に遅刻しちゃうだろ?俺の服は?」

「?、あんた何言ってんのよww、仕事って・・13歳で仕事なんてしてるはずないでしょ?」

「じゅ・・・13歳?何言ってんだよ・・・」


母さんが口にする13歳と馬鹿な事を言っている、俺はとうとうボケが始まってしまったと思った。

「ほら、早く顔洗って、着替えなさい!春休みだからって怠けないの!4月から中学生なんだから、しっかりしなさいよ!」

(ちゅ、中学生?何言って・・・)

俺は、母との間に違和感を感じ、母親に近づく。

「なによ?、本当にあなた大丈夫なの?」

母の目の前に立つと、そこにあるのは母の顔・・・そう、目線がほぼ一緒なのだ・・・俺の記憶では、180㎝の俺と母親は20㎝ほどの身長差があったはずなのに、その差がほとんどない。

さらに言えば、母親の顔は些か若く見えた。



俺は、自分身体を確かめた・・・・来ているのはまさに昔着ていたパジャマ・・・いつ、ここに帰ってきた覚えはない、それどころか、あの部屋を準備した記憶もなければ、話も聞いてもいない。

それに、パジャマなど高校から着ていない、すでにスウェットに全て変えたはず・・・・そして、母との会話のずれに俺は混乱し始めた。

確かようと、洗面所に走り出した、後ろからは母の声が聞こえるが、言葉は頭に入らない。


洗面台にたどり着き、台に両手をつけ、下を向く・・・そして、早くなっている鼓動を落ち着かせ、顔をあげた。

「・・・・う・・そ・・・・だろ・・・・」

鏡を見た俺は、自分の目を疑ってしまった。

そこに、映るのは俺の知らない少年の顔だ・・・まだ、幼さがほぼ残り、少し大人への成長しようとしている少年の顔、それは、確かに中学生と言われるはずの顔・・・それは、俺の知る自分が中学生の頃のものとはかけ離れている。



俺は鏡に映っている顔に触れる・・・その手から伝わる感触は確かに本物のだと知らせる。

「なんだよ・・・なんのドッキリだよ・・・なんなんだよ・・」

同じようなことを呟きながら、再び、リビングへ向かう。

そこで、朝食を並べている母いた。

「ちょっと、本当に大丈夫なの?」

「あ・・・あぁ・・」

母の何も変わらない接し方に戸惑いながらも、返事をする。


着替えもせずに、朝食が並ぶテーブルの席に座る。

そこに新聞が置いており、俺は手を伸ばし、新聞を広げた。


内容は至って問題などない、平和な情報のみ・・・しかし、そんなことはどうでもいい。

俺が知りたいことは、その日付のみ・・・視線を動かし、日付を見るとそこにあるのは平成12年3月27日と書かれていた・・・。

今までの驚きのせいでさほど、驚くことができず・・・その日付を望み込んでいた。


「もうすぐ中学生ねぇ~、早いなぁ~我が子が成長するのは」

「えっ・・・う、うん・・・そだね・・・」

母は満面の笑みで俺の事を見つめていた、だが、俺はその目線がなぜが不快に感じていた。

それもそのはずだ、今の俺の顔も、体も、何もかも変化している・・・いや、遡ってる。


不安と焦りが母に問いかけた。

「母さん・・・あのさ、俺・・・何か変わって・・・ないかな?」

「ん?何がよ?・・・もう、さっきからおかしいわよ?」

その反応は、母の記憶の中の俺は、この顔なのだと察した・・・・そもそも、母は整形などは嫌いな事は昔から知っていたのだから、俺の顔を変えるなど考えられず、他に誰かにされたとしたら、今頃パニックになっているはずだ。


「だ、大丈夫だよ!!なんでもない、気にしないで」

そう口にした俺は、急いで朝食を食べ、自室へと戻る。

そして、タンスから私服を取り出し、着替えた。

黒いパーカーにジーンズ、昔よく着ていた服を着ると、部屋を捜索し始めた。


「これが、夢やドッキリだったら、何か変なことがあるはずだ!!」

言葉を発し、自分に言い聞かせる。

すると、本棚に小学生の時の卒業アルバムを見つけた。

「これなら・・・・」

俺は小さな希望を持った・・・個人の顔の写真は変えられるかもしれないが、学校生活の時の写真はいくらなんでも変えるのは難しいはずだ。


だが、その希望は簡単に壊されてしまった・・・運動会、合唱コンクール、臨海学校・・・・いくつものイベント時の写真には今の顔の写真が載っていた・・・・。

「なんで・・・・なんでだよ・・・・どうなってんだよ!!!!」

視界が歪み、瞳から涙がこぼれてくる・・・そして、自室で叫びを上げてしまった。


その後、部屋に籠り、その日を過ごしてしまった。

「海里~ご飯よ!!降りてきなさい!」

下から母さんの呼ぶ声が聞こえるが、食欲が無いので返事もせず、部屋にいた・・・・・。


****************************************************************************************



PM10;00


「んっ・・・寝てたのか・・・」

目を覚ますとベッドに横になっており、いつの間にか眠っていた。

目覚まし時計は10時を指していた。


周りを見渡すが、何も変化はない・・・懐かしの部屋、夢ではないことを改めて思い知らされる。

ベランダに出ると、春なるがまだ夜は冷えていた・・・。

「もう・・・このまま、過ごすしかないのか・・・・」

俺は、過去に戻ってしまった事を受け入れるしかなかった・・・でも、まだ心の残る黒い記憶・・・それは、本当の過去ならば、俺は中学校を恐れてる。


俺は、その頃は精神的・身体的ダメージをよく受けていた・・・いわゆる、いじめられっ子だった・・・・その過去は受け入れがたい黒歴史・・・・

そう簡単に受け入れることではない。

俺は、ため息を尽き空を見つめた・・・して、俺はこの体になり、初めて外に出た・・・・


昔から落ち込んだり、考え込むとよく行っていた公園に向かう。

そこは、この時間になると誰もいなく、静かに過ごすことができ、好んで向かっていた。

今の気持ちもその公園に行けば、落ち着くと考えた。


「はぁ~ここは変わんないのな・・・・」

そこは、サッカーや野球が試合できるぐらいの巨大な公園でもちろん、グランドもあり、一番いいのはこの時期は、公園を囲むように桜が花を咲かしている。

夜桜・・・花弁が散り、舞っているのが風流で綺麗なものだ。

空は雲もなく・・星が見える・・・しかし、それが少し切なくさせ、落ち込ませる。


ザッ!


「!!!?」

後ろから突然、雑草を踏む音が聞こえ、驚きながら振りかえる。

その音は、あの黒服を思い出し、それは恐怖を思い出させるからだ・・・・・

心臓を激しく動き、鼓動がまるで耳元でなっているかのような感覚を錯覚させる。


額に汗がこぼれ、頬を伝う。

そして、音の方へ視線を動かすとそこにいるのは・・・・・一人の少女だった・・・


髪はポニーテールに結び、ジャケットにショートパンツ姿で、今の俺と同い年ぐらいの少女が俺の事を見つめていた。

その子は、俺は黒服と勘違いしてしまったと心の中で息を吐く。

「あ!ごめんなさい・・ちょっと驚いてしまって・・・」

「あなた・・・あいつの仲間?」

「はい?」


少女の口から聞こえたのは訳の分からないものだった・・・〈仲間〉その単語がなぜかきになってしまった。

そして、その少女は俺に少しずつ近づいてきながら、口を開く。


「あなたは、あいつの仲間の?・・・・答えなさい!!」

「えっ?いや・・・あいつって誰のこと?」

「!!、ふざけないで!!あいつよ!私を”殺した”あの黒服の事よ!!」

「!!? 君、あいつの事知ってるのか?」


少女は、突然大声で叫び、俺に向かってくる。

それどことか、この少女が殺された・・黒服・・・という言葉が頭の中を巡っていく。

その言葉が俺を慌てさせ、後ろに下がってしまった。


「やっぱり・・・何か知ってるのね・・・教えてもらうは・・・」

「へっ?な、なんだ!!」

少女は立ち止まり、その場で両手を広げると、少女の足元に桜花色の光が込み上げ、円形の魔方陣が現れる。

「来て!!オリヒメ!!」

何かの名前を叫ぶと桜花色の光は、少女の両手を包むように集まり、そして、銀色の羽衣が現れる。


「な、な、なんだよ・・・それ・・・?」

羽衣が現れたことにも驚いたが、俺の目線は羽衣の両端に鎖で繋がっている短剣・・・刃物・・・・

その短剣が見た瞬間、俺は逃げるように走り出した。


「逃がさない!!」

走りながら、後ろの少女を見ると、追ってきながら羽衣に付いた短剣を握り、俺に向け投げ飛ばしてきた・・・いや、羽衣がまるで、生き物のように動きながら、伸び向かってきた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

俺は、その伸びながら向かってくる短剣を転ぶように倒れてしまった。

しかし、致命傷は避けることが出来たが、左頬に切り傷を受けてしまい、傷口から流れてしまった。


「マジで・・切れた・・・いってぇ」

血が出ている頬に手の平で抑えながら、再び、後ろを振り向く。

そこには、走らずゆっくりとこちらに歩いてくる少女がいる。


「なんでだよ・・・なんでこんなこと!!」

「あなたが逃げるからよ・・・それに”また殺されたら”たまんないからね・・」

少女の言葉が理解できなかった。

また殺される・・・その意味を気にしていると、俺の耳に何かが聞こえてくる。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!


音が少しずつ大きくなってくると同時に地面が揺れ始める・・・・

「な!?地震?」

「もう!こんな時に!面倒ね!」

地震は強くなり、そして、突如止まる。

その急な止まり方が、不安を掻き立てる・・・・


ガァアアアン!!


その音が鳴り響くと同時に公園の地面が天高く噴き出していった、まるで噴火のように・・・その土や石が意思を持つかのように宙を泳ぎ、そして、俺たちに向かい落ちてきた。

「あぁああああ!!」「うるさい!!」

俺は恐怖に叫び、少女は俺に駆け寄り罵声を上げる。

襲い掛かる土はまるで槍のように固まり、降り注ぐ、それは周りの地面に突き刺さる。


もちろんそれは俺達にも降り注ぐ、しかし、俺の目の前に立つ少女が助けてくれた。

少女はその手を伸ばすと桜花色の光が壁となり、槍から俺を助けてくれた。

その光景、唖然としてしてしまい、少女を見つめる。

「あ、ありがとう・・・・」

「はぁ~あんた、本当にあいつの仲間なの?何もできないじゃない・・」

「いやいやいや!!俺はあいつの仲間じゃねぇよ!!俺も殺されたほうだよ!」

「えっ・・・・・?嘘・・・・あんた逃げたじゃない!」

「当たり前だろ!!刃物を見せられて、しかも襲い掛かられたそりゃ逃げるわ!!」


少女は驚きの顔をしていた、俺は、その時初めて少女の顔をまともに見た・・・・とても、整った顔・・いわいる、美少女だ。

綺麗な顔を見ていると、大地に刺さっていた槍が動いたのが見た。


「危ない!!後ろ!!」

「えっ?」

少女の後ろには土が集まり、大きく膨らみ、形を成していく。

それは人型となる・・・・ゴーレム、その言葉があっている。

ゲームやマンガとかでよく見るゴーレムが、今、俺の目の前に現れた。


「うっそ・・・」

その言葉に反応したかのように、ゴーレムは左腕を上へと伸ばした。

俺は、その場を走り出した・・・・恐怖のあまりその場から逃げ出したかった。

「馬鹿!私から離れ・・・!」


走り出した俺の後ろから、何かが近づいてくるのが分かり、つい、振り向いてしまった。

目の前に見えたのは、巨大な壁・・・いや、腕だ。

ゴーレムの腕が俺に向かってきていた。

その時、俺は改めて死ぬのだと自覚した・・・目をつぶり、死を受け入れた・・・はずだった。


しかし、激しい振動が体に伝わるが、痛みは感じない・・それどころか、暖かくいい香りが感じた。

ゆっくりと目を開く。

そこにいたのは、あの少女だった。

彼女は俺を抱きしめた状態で俺の下で倒れ込んでいる。

「お、おい!大丈夫・・・あっ?」


彼女は気を失ってしまったのか、目を閉じたまま動きがない。

ドスンッと大きな音が響き渡る・・・・・


ゴーレムが俺らの方に巨大な体を近づかせて来る。

「・・・なさい・・・」

「! 起きたか?逃げるぞ!!掴めれ!」

俺は、少女をお越し、背中に乗せた、その時、少女の弱りきった声を聞いた。

「逃げなさい・・・私は残るから・・・」

「馬鹿言うな!こんな化け物の前に置いて行けるか!」

「いいから!降ろして!!・・・・心配してくれるのはありがたいけど・・・大丈夫・・・今までも一人でやってきたの・・・だから・・」


少女は背負われた俺の背中から降りようと動き出すが、その体からは全く力を感じない・・・。

「無理だ!そんな体じゃ!!」

俺の言葉を聞かず、それでも必死に降りようとする。


「大丈夫って言ってるでしょ・・・こんな傷・・すぐに治せる・・・あっ!」

俺の背中から落ちる少女、俺はすぐに駆けつける。

少女は自力で立ち上がろうと、体を起こそうとしているが、その腕は震えている。

その姿を見た瞬間、自分が恥ずかしくなった・・・例え異常なものが襲っているとしても、女の子がこんなにも必死になっているのに、俺は逃げることしか考えていなかった。


それは、普通の人ならば、当然の事なのかもしれないが、しかし、守ってくれた事を思い出す。

唇を噛み、手を握りしめる。

「傷・・・対したことないんだな・・・」

「えっ?」

「俺があいつを引きつける・・・その間になんとかしてくれよ」

「あんた!何言って・・・・あっ!こら!」

俺は、少女の意見など聞かずゴーレムの目の前に走り出し、そして、立ち止まる。


(で、デカイ・・・・でも!!)

ゴーレムは10メートルほどに見えるその巨大な体が、そびえ立つ。

正直、足は震え、気を抜けば座り込んでしまいそうになる。

「でも!やるしかない!!」

足元にある石を掴み、ゴーレムに投げ飛ばす。

「おいこら!!こっちに来い!!」

あまりにも、定番の台詞しか出ないものの、これが精一杯の事をするしかない。


俺は、少女とは違う方へ走り出す。

ゴーレムは定番のように、俺の向かいゆっくりと歩き始めた。

(その調子・・・こっちに来い・・!!!?)

走り出し、惹きつけることが出来た安堵した時、急に視界が下に向かって行った。


ドジにもいいことに、転んでしまった。

「クソ!!・・!!!」

起き上がった瞬間、地響きが成り上げる。

真後ろにはゴーレムがすぐそこに追いついていた。


ゴーレムはその巨大な両手を俺の方に伸ばすと、その手は変形し、まるでガトリング砲のような形状になった。

「なっ!!?」

そして、その銃口が回転し始めた・・・・(もうだめか・・)

俺は、また諦めてしまった。

「動かないで!!」


その声の少女のものだった。

少女は、今にでも倒れそうなほど、ギリギリにで立っていた。

しかし、その地面にはあの魔方陣が吹き出て、そして、その周りに無痛の桜花色の光の球体が浮かんでいた。

「穿て、桜華!!」

叫び上げると同時に光の球がゴーレムに向かい、飛び出していく。


ガガガガガ!!!!

その光はゴーレムに当たるとまるで、光の花が咲くように弾け、土で出来た体が灰のように撃ちぬき、崩れて行った。

ボロボロと崩れ落ちていく土・・・それと同時にゴーレムの動きが止まる。


「スゲェ・・・・」

俺はその光景をまじまじおと見つめ、唖然としてしまった。

「大丈夫?・・・あんた、無茶しすぎ・・・いっ!!」

少女の強気な発言が聞こえた途端、その場に座り混んでしまった。


「!!?おい!大丈夫か!?」

彼女に元に駆けつけると、少女は腹部を押さえ込んでいた。


「平気よ・・まだ、完全に治ってないから・・・・」

「当たり前だろ!人間がそんな早くにケガが治るわけないだろ!!」

当たり前のこと言っていると、後ろから何か動いた音を感じた。


「?、どうしたのよ?」

俺は、ゆっくりと振り返ると、そこに見えたのは、先ほど壊したはずの銃口がこちらに向けられていた。

「あぶっ・・・」

危ない・・・そう叫ぼうとした瞬間、銃口から火花が飛び散る。


俺は、無意思に動いていた。

少女の目の前に立ち、壁になった。


その時、視界が灰色になった・・・弾丸がゆっくりと向かってくる・・・少女が叫んでいるのが、何を言っているのか分からない。

この短い間に何度、死にかけている。

ここまで来ると、まったく怖くない・・・それどころか、何も感じられない。


ドックン!!


何も聞こえなくなった世界から、突如、耳元の鼓動のような音が聞こえた。

それだけじゃない、左胸・・・黒服に刺された所が・・心臓が熱くなってくる。

痛みでなく、まるで生き物が俺の心臓から、今にでも生まれいでるような感覚が伝わってくる。


その熱と鼓動が感じられた瞬間、頭の中に何かが浮かんでくる。

それは、形のイメージ・・・・そして、2色のイメージ・・・


パッチン!!


いつの間にか、目を瞑ってしまていた、黒い世界から何かが弾ける音が聞こえた。

体から熱は消え、鼓動の音も消えている。

そして、瞳を開くと目の前には、黒いものが目に入ってきた。

右手には、何か握り締め重量感を感じていた。


その手に持っていたのは、槍のように長く、そして、鋭い刃が見える。

それは、戦斧だった・・・・

「なに・・・これ・・・・えっ?」

まじまじと見つめと、頭の中に言葉が浮かんできた。

「し・・シオン・・・トーレ・・」

その名を唱えた瞬間、黒と金の光が輝き始め、そして、足元に六つの円と、それを結ぶように六角形の魔方陣が現れる。


その時、ゴーレムの銃口が再び、火花を散らす。

その瞬間、俺の体は無意識のうちに動かし、薙ぎ払う。

薙ぎ払うと2色の光が、輝き飛んでいく。

ゴーレムはその光に飲み込まれた。


そして、目の前が暗くなる。





「・・・・・・・」

誰かの声が聞こえる。

「起きなさい!!!」

少女の声が聞こえ、それに答えるように目を覚ます。

「起きた!あんた大丈夫なの?」

「えっ?」

少女の問いに、体を動かす、手も足も感覚はある。

そして、ゆっくりと起き上がり、少女を見る・・・涙――――少女の瞳には涙が浮かんでいた。


「だ、大丈夫だけど・・・!!・・・あの怪物は!」

思い出した・・・ゴーレムに俺は手に持つ戦斧で何かを飛ばしたした後、気を失ったことに・・・

少女は、手で涙を拭い、そして、指で示した。

その方向に顔を向けると、そこには大きく大地を抉り、土が露にされている光景があった。


「なに・・これ・・・」

「あんたがやったのよ」

「俺?」

少女の言葉に耳を疑った。


そして、知った・・・・俺はシオントーレを使い、ゴーレムを倒したと・・・

倒れていたところの隣には、戦斧が倒れていた。

「これは・・・」

それを再び、手に持つと斧は2色の光の粒となり、消えていった。

「役目が終わったから、あんたの中に戻ったのよ・・・」

「えっ?」

「それは、あんたの武器よ・・・私の羽衣と同じね・・・」

少女は、まるで何もかも知っているような口ぶりで語った。


「・・・・って!!どうすんんだよこれ!!人が来ちゃうじゃん!!」

思い出したように、目の前の惨事に混乱してしまう。

すると、少女は立ち上がち、再び口を動かした。

「大丈夫よ、まだ当分、人は来ないわ」

「なんでわかんだよ!!」


すると、空に指さす少女・・

俺は、上を見ると、そこに見えたのは、黒ではなく灰色の空・・・

「なにこれ?」

「無界よ・・・空があの色の時は私たちしか居ないから大丈夫」

「無界・・・」

多くの事に驚きすぎてしまい、もうリアクションも取れないでいる。


「君、名前は?」

「えっ・・・海里・・・瀧峰 海里だけど・・・」

「そう・・私は、里音 奏 (さとおと かなで)よ・・・じゃまたね・・・もうすぐ無界なくなるから早く帰ったほうがいいわよ」


奏は名を伝えると、走り去っていった。

俺は、混乱して飛び止めることもできずに、見送ってしまった。


それと同時にに灰色の空は崩れ、いつもの空が現れる。



その後、急ぎ家に帰り、自室に戻った。

まだ、頭の仲が混乱していたが、体が怠く、そのまま、眠りについていた・・・・

それが、彼女・・・奏とのはじめての出会いだった・・・・



初めまして、ノマノムといいます。

読んでいただきありがとうござます。


文章力がない為、描写などがわかりづらいと思います・・・誠に申し訳ありません。

自分なりに面白くなればいいと思い書かせていただきました。

自分で考えた話ですが、もし被っていることがあれば本当に申し訳ありません。


楽しんで貰えたらいいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

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