第9話:The Spiral Rising①
――ライチの朝は早い。
太陽よりも早く起床。
脳が活発に動く 起床後数時間は、アウトプットに集中。メディアに投稿する記事を作成。
50分間毎に、10分間 仮眠を取る。そしてまた50分間 記事作成。
アウトプットの効率が悪くなってきたら、インプットに切り替える。
(書籍やWe Tube動画や、胡散臭いおっさんのコミュニティの情報に目を通す)
インプットをしつつ、それをヒントに大局的な戦略・具体的な戦術を熟考する。
インプットの効率が悪くなってきたら、休憩がてら食事、腹ごなしに散歩。
散歩から帰ってきたら、再びインプット。
気が付いたら夕方。適度な運動をして、食事、風呂……右手でムスコを……就寝。
記事を大量に書き続けることで、文章スキルは格段に向上した。
稼ぐための戦略・戦術を考え続けることで、マーケティングスキルも格段に向上した。
それを土台に、AIを活用する方法を模索し続けている。
ライチは、根本的なマインドから別人になっていた。
ライチは、土壇場で覚醒したのだ。
――今までの生涯で、明らかに一番頑張っている。
――ルキの朝も早い。
太陽よりも早く起床。
異世界の宿の一室、安く狭いシングルルームで、作業を始める。
脳が活発に動く起床後数時間は、アウトプットに集中。昨日収録した動画の編集・それを文章化した記事を作成。
アウトプットの効率が悪くなってきたら、今日の動画撮影予定を再確認して、異世界の街へと繰り出す。
しっかりと撮影許可をいただいた上で、現地人のギャルを中心に話を聞き、視聴者にとって有益な情報を集めていく。
休憩中・食事中に、突如として浮かぶアイデアは、都度メモをする。
撮影後、宿に戻ったら、シャワーを浴びてリフレッシュ。
動画編集・記事作成に取り組む。
夜食の後、明日 行く他の異世界の情報をチェックして、就寝。
ルキの心には、闘志がたぎっている。
ぎゃうぴ には、負けない!
絶対に勝つ!!
ライチとルキは、お互いに励まし合いながら、ひたすらに、努力を重ねた。
テキストでも、ビデオ通話でも、ライチはルキと話す時間が とても楽しかった。
ライチが幼少より特技としているスキル・妄想。その妄想の中で、ライチはルキと色んな異世界を旅していた。
――いつしか、ライチとルキが出会ってから一年間が経過しようとしていた……。
――――インターネットという、無限に広がる大海原。
異世界との同期により、無限に拡がっていく大海原。
そこに暮らす、無限に近い数の人々。
いや、”人々” だけでない。ネット上では もはや人間とAIの判別すらも難しくなっている状況。
――富・名声・力・自由――
情報商材を売って、この世のすべてを手に入れた者達
”有名インフルエンサー”
彼らが売り際に放った一言は、全世界の情弱を海に駆り立てた。
「俺のノウハウか?欲しけりゃくれてやる。買え!そのすべてを情報商材に記してきた」
世はまさに――――
――――夢か。
現世・自宅のボロアパート。
机に突っ伏した体勢で、ライチは目を覚ました。
1日8時間睡眠はしっかりと確保してはいたが、連日に及ぶ脳の酷使で、疲労が溜まりすぎて――作業が終わって気が緩んだ瞬間に、寝落ちしていた。
――その間、実に30時間。
「腹が減った……」
ライチは冷蔵庫から、サランラップで包んで保存していた白米を取り出し、皿に盛って、電子レンジにかける。
ある程度、白米に熱が通ったところで中断、レトルトカレーのパックを開け、白米の上からぶっかけ、再びレンジで加熱した。
数分後、ライチはカレーライスを食べながら……期待と不安が入り混じった表情を浮かべる。
ありとあらゆる情報を収集して、
ありとあらゆるパターンを熟考して、
ありとあらゆる施策を実行してきた。
もし、これでダメだったら……?
努力したところで、報われる補償など無い。
それは、これまでの人生で、充分すぎるほど理解しているつもりだ。
……だが!しかし!!
もし、これでダメだったら……俺は……。
ライチは、震える手で空中を二回タップ。仮想ディスプレイが浮かび上がる。
俺のメディアの、PV数は どうなっている?
俺の人生に、成功の予兆は 来ているのか?
俺は、自分の人生を生きることが……できるのか?
ライチは、全身を震わせながら、アクセス解析ページを……開いた。




