第8話:拡がる海を、赤く染める②
しかし、すでにギャル系インフルエンサーとして、ブログ・WeTube・Twittelで 影響力を獲得している ”ぎゃうぴ” が、異世界レビューを始めた。
ぎゃうぴは、ライチと同じく、胡散臭いおっさんの高額コミュニティの会員だ。
有名インフルエンサーとまでは言えないが、既にそれなりに影響力がある。
その影響力を駆使して、ルキが獲得しようとするポジションを奪いにかかるだろう。
ぎゃうぴ は、ルキと比較した場合は……相対的に、強者となる。
強者は、後追いであろうと……影響力のゴリ押し戦略で、先駆者を追い抜くことが可能なのだ。
――ライチは、ルキ宛のメッセージを、仮想キーボードに 目にも止まらぬ速度で打ち込んでいく。
――――とある異世界。
広大なスケールの荒野に、悠久の時を感じさせる遺跡が数千個も点在している。
それらを眼下に見下ろすほど高い塔の上。
マンゴーシェイクをテーブルに置き、椅子に腰かけ、仮想ディスプレイを睨むルキの姿があった。
「――今さっき、ライチが忠告してくれたのは、この ぎゃうぴ って人か」
ARレンズを通したルキの視界、仮想ディスプレイには、『若いギャルの視点で異世界レビュー』というルキと同じコンセプトのブログ・WeTube・Twittelが表示されている。いずれも、PVやフォロワーはルキよりも5倍~20倍多い。
余談だが……
仮想ディスプレイを睨んでいるルキの視線は、その先にいる男性にも見事に突き刺さり、男性はびっくりしている……
だが、ルキはまったく気づいていない。
傍から見て、ガラが悪いギャルである。
ルキは、考えを巡らす。
ぎゃうぴ は、暗号資産系インフルエンサーとして、中堅レベルだったのだが……
――異世界転移技術が開発されるや否や、異世界同士での共通通貨として 暗号資産への期待が爆発的に高まった。
(現状は 現物のゴールドが共通通貨だが、異世界同士のブロックチェーン技術の互換性調整が完了すれば、圧倒的に利便性が高い暗号資産が 共通通貨となるだろう)
その結果。
”現世の” 暗号資産系インフルエンサー達が……つまり、ぎゃうぴのライバルが激増した。
――さらに、既にインターネットが実用化されている異世界同士での、インターネットの同期が実現。
その結果。
あらゆる異世界のインフルエンサー達が、同じ土俵に放り込まれた。
既に、暗号資産が実用化されている異世界のインフルエンサー達も、だ。
そして、”星の数ほどある異世界の” 暗号資産系インフルエンサー達が……ライバル関係となった。
ぎゃうぴのライバルが、超爆増した。
必然、ぎゃうぴ のフォロワーは微減、メディアのPVは激減していた。
なので、それなりの収益を上げているブログ・We Tubeはそのまま放置、新しいコンセプトを模索していた。
……その時、影響力ゼロから発信を始めて、短期間で好調にフォロワーやPVを伸ばしているルキを発見……。
ルキの 『若いギャルの視点で異世界レビュー』というコンセプトが有望と判断、方向転換した。
異世界レビューのブログ・WeTubeを立ち上げた。Twittelは、告知用にそのまま引き継いだ……。
――というシナリオだろうか?
確認はできないが、充分ありえる。
ぎゃうぴ のメディアのコメント欄を見ると、暗号資産系インフルエンサー時代からのリピーターも少なくない。
彼らが、発信内容を見てくれることで、SEO評価が上がり、より拡散されやすくなる……。
ルキは、両手で頭を抱えながら、ストローでマンゴーシェイクを飲んでいる。
――突如、ルキの両目が見開かれた。
「……マンゴーシェイク、美味うまっ」
ルキは、地平線に視線を移す。
幾千の遺跡が点在する果てしない荒野……の上空。
遥か遠くの空。
老いた巨大な鳥が太陽に向かって弱々しく飛んでいく姿を、ルキは見つめていた。




