表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/10

第5話:Reverse Yggdrasil①

――現世・大阪の街。


その大通りには、コミュニティのリアルセミナー会場へと向かうライチの姿があった。


とあるビルの前に、男が立っていた。この顔は、毎日のようにコミュニティのオンラインサロンで見ている。


メンターの下で働く直弟子――”サポーター”と呼ばれる数十人のうちの1人だ。


ライチは、挨拶をする。


「あっ、みっきーさん こんにちは。太一と申します。」


「こんにちは!リアルセミナー会場は、このビルの5階です!エレベーターで上がってください!」


やたらハキハキした口調で返された。


(”みっきー” は、この人の 情報商材業界での名前だ。なぜかこの業界では、”ぴんきー” だの、”さいぽん” だの、珍妙なニックネームを名乗る人が多い。)




5階に上がり、リアルセミナー会場についた。


会場には、100を超えるパイプ椅子が、ズラッと並べられている。


ライチは、その一つに腰を下ろし、リアルセミナーの開始時刻を待つ。




……ひと昔前は、”●●で稼ぐ系” の情報自体が少なく、価値があった。


だが、今や無料の情報で、それらの情報自体は手に入る。


なので、情報自体にお金を払う価値はない……と言われる。

(だが、有名インフルエンサーは、情報自体の信頼性も高い……と思われてるので、情報単体、情報自体も売れる。)




だが、俺は30万円払って、有料のコミュニティに入ってしまった。


30万円あれば、様々な施策ができたはずだ。


……後の祭り。


だったら、できる限り元を取ろう。


今日ここに来た理由は、リアルセミナーの内容そのものではなく……他者との情報交換。


ここで、メンターや実際に稼いでいる会員に話を聞くのだ。




――開始時刻になった。


サングラスの胡散臭いおっさん……もとい えーと、ナイスミドルが現れた。


この人が、このコミュニティの運営者でありメンターだ。


メンターは、数年間で数億円を稼いだという、そうそうたる実績を声高に語る。


メンター自身は凄い実績らしいが、このコミュニティに30万円払って入った約100人の内 大多数が、一円すらも稼げないまま、業界から消えていくんだろうな……。


だが、セミナーの中で、時折

「貴方たちは、投資意識が高い極めて優秀な起業家です」

「ここにいる人たちとは、一生モノの付き合いにしたい」

などと言ってきた。


なるほど。悪い気はしない。


こうやって会員の気分を良くさせてリピーター化して、継続的にお金を得る狙いか。




つまり……


メンターは、『「●●で稼げます!」で稼ぐ方法』を、俺等に教えて稼いでる……?


頭こんがらがってきた……。




メンターの数十分のセミナーの後は、直弟子達によるセミナーも複数回行われた。


……数時間に及ぶリアルセミナーが終了した。


その後、近くのオシャレなバーを貸し切って ”二次会”が開催。

(参加者には、別途料金が発生)


軽食と共に会員同士の情報交換が始まった。


メンターの近くには、とうぜん多数の会員が集まり、マンツーマンでの会話は難しそうだ。




だが、俺と同じく「異世界で稼げます!」で稼ごうとする人とは、2カ月間チャット上でやりとりをしてきた。


いつもチャットしてるメンバーの1人であり、顔写真をアイコンにしている会員を発見。


陰キャなライチは、平静を装いながらも話しかけてみた。


しばらくすると、異世界以外のジャンルで稼ごうとする複数の会員も集まってきて、情報交換をすることができた。


「異世界×AIの未来予測」

「NFT・メタバースは、異世界同士を繋ぐインフラたりえるか?」

「いずれ自分でコミュニティ運営をする場合の戦略」


様々なテーマで、議論が交わされる。


高額なこのコミュニティには、向上心が高い人物が集まっており、建設的な議論が展開される。


なるほど、視野が広がった。


気になったことはすぐに質問出来て、お互いの知見を深め合える。


建設的な議論を楽しめる。クソ企業の同僚たちのように、足を引っ張り合う人間関係ではない。


……うっすらと、心地よい雰囲気が流れる。


”ここには、仲間がいる”




……だが、俺は長年のぼっち生活で、1人でいることの充実感を知った。故に、この場を冷静に俯瞰できる……つもりだ。


――孤独感が解消される……という満足感を提供することで、リピーター化しやすくなる構造なんだな。


会員同士がコミュニティ内で人間関係を構築すればするほど、それを維持するためリピーターになってくれる確率が上がる。


メンターは時折 交流のきっかけを提供するだけ。その後の手間は発生しない。


金は、懐に入る。




”孤独感の解消”

”自己肯定感の向上”


それが、コミュニティビジネスの極意なのかもしれない。




そして、ここにいる人間も、実のところ腹の探り合いをしている。


自分が狙っている市場の 具体的な重要情報は、決して口外しない。


他人に知られたら、ライバルが増えるからだ。


フレンドリーに接して、相手を褒めちぎって、グイグイ情報を引き出そうとする者もいる。


この雰囲気に、呑まれてはならない――。






一通り話した後、ライチはメンターへと視線を向ける。


その近くにいる人間は、さっきよりも少ない。話しかけるチャンス!


”メンターに、直接アドバイスをもらいたいので、失礼します”

と言っては、この場にいる人たちに失礼に当たりそうだ。


ライチは、少し考えた後に、口を開く。


「僕たちが話し合った意見を、メンターはどう評価するのか……知りたくないですか?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ