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第1話:しょーもない立志編①

自由に異世界転移できるアイテムが実用化されて、約1年が経った。


当初は数十万円もしたが、ビッグテックが次々と製品を発売。


価格競争が起きて 今や数万円で買えるようになった。


社畜で無趣味な俺は、貯金はそれなりにあるので、試しに買ってみた。


ベルト型・ペンダント型・指輪型など、いろんなタイプがあるが、とりあえずベルト型を購入。




付属品であるARレンズ(拡張現実コンタクトレンズ)と同期させて――いざ起動。


ARレンズを通した視界に、仮想キーボードと仮想ウィンドウが浮かび上がる。


必要事項を入力して、ユーザー登録を完了。


いよいよ、異世界に行ける。




星の数ほどある異世界。


検索機能を使って、その中から行きたい異世界をピックアップ。


手始めに、中世ヨーロッパっぽい異世界を選択。


「転移」ボタンをクリックする。


-フォンッ-




……目の前には、無限の闇が広がっている。


え……なに……怖い。


と思った次の瞬間、目の前に広がった光景は……。


城壁に囲まれた旧市街。


中世ヨーロッパっぽい異世界に来た!来れた!!


もちろん、異世界でもネットはつながる。




――本物だ!


この ”異世界転移” アイテムは、自由に異世界を往来できる!


それから数日間かけて、多種多様な異世界に行ってみた。


大正時代っぽい異世界。

中華風の異世界。

勇者と魔王が戦ってそうなファンタジー風の異世界。


異世界を回っていると、俺と同じような転移者たちと遭遇することもよくある。


だが、お互い認識していても、関わりたくないので目も合わせない。




「どうせなら、異世界転移でなく、異世界 ”転生” できるアイテムを開発してくれ!」


そう思う人間は多いだろう。


モブ顔でこの世に生まれ落ちて22年間 陰キャとして生きてきた俺だが、叶うならば王族のイケメン陽キャ御曹司に転生したい!


…と思ったが、他の人間も同じことを考えるだろうな。


結局、優良な転生先は、宝くじみたいな確率になってしまうのは、目に見えてる。


(と思ったら、聞いたことない企業による「異世界転生できますよビジネス」が流行りはじめた。転生は一回限り。守秘義務とやらで詳細不明。…なんかやばくね?やめとこう)




そして、俺は思いついた。


「発展が遅れてる異世界なら無双できて、楽に大金を稼げるんじゃね?」




――労働地獄で貯めた全財産は、それなりの額になった。


そのうち、十数万円ほどを手に取って、両替所へと足を運ぶ。


現状、実質 ”すべての異世界共通の通貨” となっているゴールドに替えた。


ビットコインの方が手軽だが、発展が遅れている異世界では、ブロックチェーン技術などまだ開発されていない。


よって、どんな異世界でも対応できるゴールドが良いのだ。




準備は整った。


いざ、人生を変える旅へと歩を進める。


この灰色の現世を、抜け出してやる!




――俺は、とある異世界へと降り立った。


それは、まだコンピュータが開発されていない異世界。


長年パソコンというコンピュータを存分に使ってきた俺なら、ここで無双できる!




そう思っていた時期が、俺にもありました。


「コンピュータって、どうやって作ればいいの?」

「そもそも、どんな構造で成り立ってんの?」

「仮に作れても、プログラミングが出来なきゃ意味なくね?」


全方位からパーフェクトに詰んでいる。


……俺は、この異世界では稼げない。




次は、医学の遅れている異世界に行ってみた。


とうぜん俺には、医学の知識も経験もない。漢方などの医薬の生成技術もない。


だが、この異世界にも医者はいる。


Wikipediaの内容をそのまま話せば、後はその医者が実践してくれる。


そして、俺をメンター(師匠)と仰ぐだろう。


噂が噂を呼び、弟子は増えていくだろう。俺はこの異世界の医学界の頂点に君臨するのだ!




「この●●ってのは、どのように■■すればいいんだ?」


医学の遅れている異世界の医者が、質問してきた。


わからない。深い質問をされても答えられない。


AIに質問を投げてそれらしい解答は得て、それをそのまま話してみたが「んじゃお前、調合してみろ」と言われたので……逃げた。




俺は、生まれてからずっと 文明の利器を享受してきたが、それがどのような構造で作られ、維持されているかは全く知らない。


完全なるブラックボックスなのだ。


……俺は、異世界で稼げないのか?




――いや、待て!


農業なら、We Tube動画で都度検索すれば、なんとか行けるのでは?


農業が遅れている異世界に行ってみた。


だが、同じことを考える先客が、多数いた。


やる前から失敗。


……スキルがないと、異世界に行っても結局は稼げないのか。




――ならば、動画プラットフォーム黎明期の異世界で、バーチャルWe Tuber(VTuber)の元祖となってアイドル活動するか。


トークスキルは、後から磨いていこう。


……先客がいた。


すでに、四天王と呼ばれる先駆者たちが動画を投稿して、人気を博していた。


〇〇➜先客がいた。

◇◇➜先客がいた。

△△➜先客がいた。


……俺は、異世界に行っても稼げないのか?




茫然自失の俺は、ふらっと大きな公園に立ち寄った。


エメラルド色の空。ゴールドに輝く湖。


……眩しい。


七色に輝く大きな樹があったので、腰を下ろして寄りかかる。


そして、大きなため息をついた。


「あ~、どこも先客ばっかりだなぁ……!」×2




……あれ?俺の声が……二重に響いてる?


「あれ?私の声が、二重に響いてる?」


どこからか、女の子の声が聞こえてくる。


七色に輝く樹の裏側から、その女の子はひょこっと顔を出した。


目が、合ってしまった。


金髪ツインテールの20歳くらいの、THE・ギャルって感じの女の子。


「……アナタも、稼ぎ目的の転移者?」


「えっ、あっ……ハイ、たいら 太一たいち と いいまひゅっ」


キョドった。噛んだ。


「……塩那えんな 琉希るき です」


「……あ、ハイ。よろしくお願い致します……」


「……」


「………………」


よろしくお願い致した後、微動だにしない男。


なんともいえない表情で、男を見つめるギャル。


気まずい空気に包まれる2人を、太陽が優しく照らしていた。



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