やめるってよ
「よう!ランク詐欺!調子はどうだ!」
今日は珍しい人が、ギルドの食堂にいた。
「どうもです、カーキさん、試験ぶりですね。」
「おう!あの時はよくもぶっ飛ばしてくれたな!覚えとくぞ!」
「なんか怖いんでやめてください!」
「ガッハッハ!お前にも怖いもんがあったか!ガッハッハ!」
「いや、そりゃあるでしょ…」
何いってんだ?このおっさんは、怖いものなんて沢山あるだろ普通。
「カーキさんは食堂で何してるんですか?珍しいですよね?」
「ああ、冒険者引退するからな、知り合いに声かけてまわってる。割と長くやってるからな俺も知り合いが増えたもんだ。ガッハッハ!」
……俺のせいかな…どうだろ…
「そんな顔すんな!お前のせいじゃねーよ、もともと考えてたことだ!生きて引退すんだ!そう言う時はよ、笑って見送るんだよ!辛気臭ー顔すんな!な!」
「ハイ…ありがとうございます。」
「で調子は、大丈夫か?それは…」
カーキさんが義足に目を向けた。
「まったく問題ないです!」
「だろうな、あんな動きしやがったしな…不思議な戦い方をするやつは何人か見たが、目の前に現れて、すぐ消えるやつなんざ初めてだったぞ?ありゃ俺が危機察知持ってなかったら危なかった。」
スキルバラしていいのか?
と言うかやっぱり持ってたか。
「いいんですか?持ってるスキルバラして。」
「あ?引退するからな。それに何人かは知ってるぞ?わざと教えたりしたしな。フンッそのほうがいいスキルもあるってこったな!」
「なるほど…」
抑止力的なことかな?持ってるから意味ねーぞみたいな。
後、パーティーメンバーとかか?
「一緒に夜警戒するやつには伝えたりしたんだ、まあ程度は伝えなかったけどな!」
「程度ですか?」
「?お前知らないのか?同じスキル持ってても人によっては、出来る事、できない事がある。例えば死ぬ様な攻撃しか分からないとかな。その点俺は、俺に対する攻撃であれば分かるってわけだ!ガッハッハ!」
「おーすごいっすね!」
「だろ?だけど…速すぎたりするとな、分かってはいても止められんかったな。身体がついていかなかった…まさかランク試験でやられるとはな…」
「なんかすんません!」
「いやいい!ところでお前は上目指すのか?」
ランクの話かな?とりあえずは今のままでいい気はする。
王都に興味ないからな…
「特に考えてないですね。」
「本当に詐欺するんだなお前は…」
「いや、しませんよ?カーキさんは良かったんですか?Bランクで。」
上に行ける実力はあるって話だったしな。
俺と同じなんじゃないか?
「俺か?俺は良いんだよ…一番なりたがってた奴が居なくなったからな。」
カーキさんは話してくれた。
パーティーを組んでいたこと、Aランク試験に行く前の探索で名前持ちに遭遇したこと、5人パーティーのうちの3人が帰って来れなかったこと、その内の1人が一番Aランクになりたがったことを…
ソイツを置いてAランクにはなれなかった。
そう教えてくれた。
それと酒場には行ったかと聞かれた。
なんか俺が歌われてるらしい、詩人に。
聴けるかっそんなもん!
恥ずかしすぎるだろ!
最近知り合った奴に会えたから帰るらしい。
「お前みたいな無茶するやつに言っても聞かねーだろーが、死ぬな、優秀だった俺の様に生きて引退しろ!」
「ハイ!ありがとうございます!」
後手を振りながら帰っていった。
多分わざわざ俺に気にするなと言いに来てくれたんだろうな…
そう言う事してるから知り合い増えたんですよ。
いろんな人から慕われた人なんだな。
後ろ姿がなんかカッコいいと思った。




