二つ名の心配
「おまえ…どーするだんこれから…うちのパーティー来るか?いいぞ?俺は、片足でもよ!」
なんか言ってんなカトラが…
いや、心配してくれてんだ。
真面目に答えますか…
フリではない。
「明日Cランク試験受けるつもりだ!片足だろうがなんだろうが、受かってやるよ!だから俺はまだソロだ!」
「!ハッハッハそうか!ハッハッハそうだよな!おまえ強いもんな!片足なんて大したことねーもんな!ハッハッハそうだよなハッハッハ!」
なぜウケた?
なんか嬉しそうだからいいか。
コイツにも心配かけたみたいだしな。
「よう!狂人!なんか絡まれてたって?」
「なんだよ狂人って!」
なんかデルトが不穏な単語を口にしながらやって来た。
しかもニヤニヤして。
「あ?名前持ちにいきなり遭遇して、逃げるんじゃなくて、挑んだんだ。そんなのはな、狂人のすることだろ?」
「違いないなハッハッハ、バカだバカ!」
「……………」
えー、それでえー、納得がいかん!もっとあんだろーが!
カトラめ!笑いやがって!
楽しそうだからいいけど!ね!
「で、何で絡まれた、やり返してたみたいだが……」
「ん?どんな奴等だ、ソイツら!」
…いや、殺気立つなよ急に。
違うから、そういうのじゃないから!
「助けた奴等かパーティー組みたいって言ってきただけだ!足手まといだって断っただけ!絡まれたわけじゃねーよ!」
「ん?そんだけか?」
「それだけだ!」
「おまえそれ…惚れられたか?」
カトラどうしたらそうなる。
教えてほしい。
「なんでだよ、ただパーティーに誘われただけだ!」
「ほ、ほーん。」
「ほ、ほーん。」
おい!コイツらニヤニヤし始めたぞ!
あ?
やんのか?
「まあ、カトラの言うことは間違いではないだろ?命救ってんだ、それぐらいあるだろ?」
「だな!しかも名前持ち!そんな姿見せられたらそうなってもおかしかないな!ハッハッハ!」
……そんな感じじゃなかったと思うけどな。
「そんな単純なもんじゃねーだろ!チゲーよ、ちげえ!」
「いーや、間違いないな!」
「そうだな、ランク詐欺なんかしてるからそうなるんだ!」
デルトまだ言ってんのかそれ!
周りでも言いふらしてないよな?それ!
俺の二つ名それだったら、まずお前をボコす!
絶対に!
なんとなく遠回りをして宿に向かう。
少しそんな気分になった。
二人は俺が顔を見せて嬉しかったのかもな。
冒険者が足をなくすって引退を考える理由には十分だから…
俺も考えてると思われてもおかしくはないか。
一切考えてなかったけどね。
失った瞬間から。
でも、それは他人にはわかんないからな。
狂人か…
間違ってはないかもな。
他にもあるらしいけど…
正直、気にならない。
面と向かって言われたら、コノヤローって言うくらいだ。
それは気にしてるのと変わらないか?
どうだろ、わからないな。
……ただ、向こうの世界の物語のようには、行かなかったな…
あの時、体が勝手に動いた。
何か考える前に…
英雄願望…あったんだな俺。
好きだったからな、勇者や英雄の話。
だから、助けようとした。
ただ…そうじゃなかっただけ。
知ってただろ?言ってただろ?
自分で…
なのにだ。
それなのに…
だから失ったし、あんな顔させた…
そして、同じような事があっても…
繰り返す、絶対。
考える前に動いたんだ。
止まる要素がない。
どれだけの強者であっても足を止める理由にならない…
死ぬとわかってもだ!
俺は何者でもないのにな。
降りかかる理不尽には、積み上げた努力なんて関係ない。
悔しいよな!
だから強くならないと。
だから足を失っても変わらない。




