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可愛いあの子は。  作者: ましろ
第二章【フィリス編】

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14.対話(2)


「…私ね、ディーン様を王子様としか見ていなかった。それだけじゃなく、フィリス様を愛していると思い込んでいたの。

だって彼に愛されたかったから。

私以上に関心を寄せる女性に不安になったの。一度も彼とそんな話をしたことがなかったのに。


ねえ、どうして?なぜ、今更そんなことを言うの。もう、婚約は解消しちゃったわ。どうしようもないじゃない……」

「王子殿下が『言えない』意味を考えたことはありますか?」


私だって言えるのなら言ってしまいたかった。

婚約が消えてからしか言えない呪いのような契約だったのだから仕方がないじゃない。


「やっぱり、王命……?」

「他にも色々ありますが、王命もその一つです。

私は、お二人の婚約が無くなってからならあなたに話していいと陛下に許しを頂いたので、今、やっとこうしてお話しすることができています」

「うそ……」


本当に気付かなかったのかな。それとも、ご自分の恋情のために軽く見ていたの?

でも、国王陛下は決して甘いお方ではない。


「王女の誘拐未遂ですよ?陛下が調べないわけ無いでしょう。絶対に10年前に調べ上げている。それでも犯人を公表できていない。その意味をあなたは一度も考えなかったの?」


私の誘拐なんてすでに終わった話だったから?

王女の身代わりで誘拐されたなんてお可哀想にと、たったそれだけで終わりにしていたの?

あなたの義妹になる人の身代わりだったのに……。

それは結構酷いことだよ。


「……あの時。あの時点で私とディーン様の道は違えてしまったのね。

国王陛下からの指示を言葉の通りにしか受け取れない。それどころか恋心を優先させてディーン様のサポートすら途中で放棄した。

有事の際に、すべてが伝えられる訳ではないと教えられていたのに。自ら付いて行かねば置いて行かれますよと、王子妃教育で教えられていたのに。

……ねえ、まだ事件は終わっていないの?」

「すみません、私もずっと憶測で話していました。ただ、エディの行動がらしくないから。それに、陛下の言動を合わせて考えたらそうなんだろうなと考えた次第でして」


どうしようか。どこまでヴァレリー様に伝えていいのだろう。


「らしくない……。そうね、そんな姿をたくさん見たわ。それを私は心変わりだと受け取ってしまった。

王子妃教育を受けていないフィリス様に気付けたことが私にはまったく分からなかった。

自分が情けないわ……、私は本当に王子妃が向いていなかったみたい」

「まだ経験が足りないのは仕方の無いことだと思うわ。私はずっと一人だったから。他人の顔色を窺って、行動パターンを分析して、あれこれ考えて動かないと生きていけなかっただけだよ」


そうしないと痛い目を見るのは自分だったから。


「いいえ。私が相応しくなかったのはディーン様の隣ではなく、王子妃という立場ね。

いくら勉強ができても、いくらマナーを学んでも、私の思考は守られる側なんだわ。自ら進んで国のために、何かを守るために動くだなんて、1から10まですべて説明されないと行動できない。そのくせ偉そうに、ディーン様には頼りたくないと手を離してしまった。


……ねえ、ディーン様は本当に私を大切に思ってくれていたかしら」


ヴァレリー様は高位貴族らしくない人だ。

彼との小さな幸せがあれば本当にそれだけで幸せだったのだろう。


「…昔ね、お互いにどんな相手がいいかを話したことがあったの。その時にエディが言ったのはギラギラしていない子だって」

「は?地味ならいいの?」

「そうじゃなくて、一緒にいて安心できる子がいいって言ってたわ。それってあなたでしょう?」

「……そうだったなら嬉しいわ。……そっか。王子妃にふさわしい人とかでは無かったのね。

お父様の言う通り、私は努力の方向性を間違っていたみたい」

「こんなことさえなければ、彼は本当にさっさと王位継承権なんか放棄して臣籍降下して、あなたと二人で侯爵家を守りながら幸せに暮らしていきたかったんだと思うわ」


彼は王族である自分が好きではなかった。でも、その思考はどこまでも王族な可哀想な人。

この二人は根本があまりにも違う。


「……私は、あなたが望むならもっと詳しく話すことが出来るわ。

でもそれは、エディを理解することはできるようになるけれど、かわりに今まで信じていたものが崩れ去るかもしれない。


……あなたは……どちらを選ぶ?」




 


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