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可愛いあの子は。  作者: ましろ
第二章【フィリス編】

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10.悪夢(2)


「メイ、大丈夫。もう大丈夫だよ」


…なに?いま、夢を見て……


「……エディ……なんで?」


うそ、どうしてここにいるの。

あなたはいてはいけない人だよ。


「君は酷いね。親友がこんなにも苦しんでいるのに放っておけると思っているの?」

「……そうだよっ、放っておきなさいよ……」


なんで?学園ではちゃんと平気な顔をしていたはずでしょう?!

まさか、


「……うちから連絡がいったの?」


そうでなければ、私の部屋に彼がいるはずがない!

女性の私室に二人きりだなんてありえない。


「馬鹿だな。もっと早くに助けてって言いなよ」

「……違うでしょう?あなたが手をのばすべきなのはヴァレリー様だよ!今っ!ここに来たら絶対に駄目なのにっ!」


どうして?ミュアヘッド侯爵が見逃すはずかないわっ!


「もういいんだ」

「……何が」

「ヴァレリーはエミルが守るから」

「は……なにを言って……」

「エミルが告白した。たぶん……ヴァレリーは受け入れるだろう」


何それ。意味が分からない。


「君だってもう分かっているだろ。2つの契約がある限り、私がヴァレリーと結婚する道なんか無いって」

「どうして?!もっと必死になってよっ!彼女はあなたのことが好きなのよ?!」

「……彼女が好きなのは、優しい王子様だ」

「あなたは王子じゃないっ!」

「残念ながら、彼女だけの王子にはなれない。全てを君に丸投げして生きるなんて嫌だ」


嫌とかそういう問題ではないでしょう!


「母に頼んで厳しいことを言ってもらったから、その後の告白は響いたんじゃないかな」


バシッ!


「……力が強いよ」

「仕組んだわね?何してるのよ。人の気持ちをなんだと思っているのっ!!」


拳で殴ればよかった!


「……ヴァレリーがサイクス国と戦える?」

「もっと早くから準備しなさいよ!どうしてあんなに甘やかしたの?!やりようなんて幾らでもっ」

「どうやって?私は20歳までは臣籍降下できないから、ヴァレリーには王子妃教育を受けさせる約束になっていた。それだけでも彼女には負担だったんだよ。

それなのに、侯爵が隠し事をしていることをバラして、いつ婚約解消になるかもしれないと教えて、サイクスと戦う準備をしてくれというのか」


……サイクスと戦う準備をしていたの?


「私は10年経っても半端なままだ。父や侯爵に立ち向かえるほどの力は無いし……申し訳ないが、彼女だけに向き合ってはいられなかった」


……分かってる。私だって自分の力の無さに泣くしかなかったじゃない。


「……ごめん。酷いことを言ったわ」

「いや。本当のことだから」


悔しいね。どうしてこんなにも生きることは大変なのだろう。


「来てくれてありがとう。エディと話がしたかったの」

「うん。遅くなってごめん」


私達が仲違いしている場合じゃない。


「ね、さっきの。戦う準備って何?」

「……父上とは別で動いてる。まあ、知っている可能性は高いけどね」

「そうね。狸爺なら分かってて泳がせていそう」

「一応、私の父親なんだけど」

「知ってる。けど腹立つもの。あなたの娘になりたくないからエディとは結婚しませんって宣言しておいたわ」

「メイ、最高っ!」


ケタケタと笑い転げている。お母様達が驚くから止めてあげて。


「で?さっきの続きは?」

「ああ、まずは父の方からね。今、クリストファー兄様が動いている。向こうの王子をようやく引き込めそうだと言っていたよ」

「……何を条件にしたの」

「ラッカムとの橋渡し。これはパトリシアの功績だよ」

「え?なぜそこでパティが出てくるの?」

「あの子が嫁ぐからね」

「待って。まさかラッカム国王?!パティより20近くも年上じゃない!」


なんでそんな……


「私達は罪を犯したから」

「……その罰だとでもいうの?」

「君は、なぜ誘拐事件が起きたのか聞いていないの?」

「……サイクスがこの国を狙っているからだと思っていたわ」

「そうだね。私達が利用されたんだよ」

「え?」

「パトリシアがサイクスの王女の挑発に乗ってしまった。何とか止めたんだけど……事件が起きてしまった」

「そんなの罪にならないよ」

「巻き込まれた君が言うの?」

「私以外言ったら駄目でしょう」


だからそんな政略結婚なんて止めようよ!


「パトリシアはずっと悔やんでいた。ようやく少し罪が償えるって救われた気持ちなんだ。

君には酷だけど、今度会ったら褒めてあげてよ」

「……何それ」


嫌だよ、そんなの。そんなこと望んでいないのに……


「パティは馬鹿だ」

「……うん。ごめんね」

「でも、王女としてその道を選んだのね」


二人とも、ずっと苦しかったのね。だからヴァレリー様を大切にしきれなかったの?

私を犠牲にしたのに自分達だけ幸せになるのは許されないと思った?


「……悪いと思うなら幸せになって。二人の、幸せな姿が見たいわ」

「それならメイも一緒に幸せにならなきゃ」

「ヴァレリー様もね。サージェントは落ちぶれろ。失墜してしまえ」

「どうしてそこで呪うの」

「私は恋よりも友情派だからね」

「そうか。ありがとう」


ああ。幸せになりたい。皆で幸せになりたいね。

諦めるな。頑張れ……。






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