第60話:星空の下で
少し離れた所にある馬車を取りに、アレクシスさんとブレンダさんが向かった。
今は、私とノエルさんだけが居る。
周囲を感知しても、魔物らしい存在は見つけられない。
これで一時的でも帝国はいつも通りに戻った筈だ。
「終わりましたね」
「君のおかげだ」
先ほどまで魔術の炎で明るかった周囲は暗くなり、今は夜空が綺麗に見える。
無数に輝く星空がいつもより近く感じ、戦闘の余波で温められていた空気は元に戻っていた。
その代わり、月明かりに照らされた小さな粒が空から降り注いでいる。
――綺麗。
そう思うと同時に、冷たい風が肌に触れる。
「う……」
こんなにも寒いのなら、辺りを燃やして温めたくなる。
「すみません、ノエルさん」
巻き添えを食らうノエルさんに申し訳なく思ってしまう。
纏わり付いていた冷気が身体を冷やし、手足を更に冷たくさせている。
それで衣類も冷たくなっているのだから笑えない。
「何がだい?」
そう言いながらノエルさんが羽織っていた上着を後ろから私に被せていた。
謝った原因を無くされただけでなく、ノエルさんに迷惑がかからないか心配になる。
「寒くありませんか?」
「魔術を使った君よりは、平気かな」
そう言ってノエルさんが微笑んでいた。
敵を倒した事で、私と同じ様に少しは緊張が解けているのかもしれない。
けれど、見るからに寒そうだ。
「ノエルさんも入って下さい」
「良いのかい?」
「ノエルさんのですよ? 聞かないで下さい。ほら片側だけなら肩が入ります」
ノエルさんに上着をかけようとすると、端の方がノエルさんの肩に乗る。
二人でちゃんと羽織っている訳ではないが、これはこれで良い気がした。
触れ合う肩から温かさが伝わってくる。
「ありがとうクローディア」
「どういたしまして」
二人で見上げた星空が綺麗に輝き、時間だけが過ぎていく。
こういう平和な時間だけが続けば良いのに。
そう思った私はこれからも、この時間を追い求め続けるのだろう。
戦闘して誰かが傷つく世界なんて、別に要らない。
私が戦って、誰かが助かるのならそれで構わない。
こうして似た様な時を、その誰かが体験してくれるのなら――。
……あれ、何だか身体が温かい気がする。
でも私は……魔術は使っていない。
だとしたら単純に――。
そんな事を考えていると、ノエルさんが後ろを気にしてから口を開いた。
遠くから聞こえる馬車の音を耳にしたのだろう。
「帰ろうか、クローディア」
それを聞いて一人でクスっと笑い頬を緩めた私は、そっとノエルさんの方を向いた。
肩が触れ合う距離だから、ノエルさんとの距離がいつもより近い。
そんな当たり前の事で、私は何だか更に嬉しくなっていた。
「はい、帰りましょうノエルさん。私達の守るべき場所へ」
これからも私は誰かを守る為に戦い続ける。
――それが私の歩む道で、
その隣にきっと、ノエルさんなら居てくれる。
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『第二章』投稿予定日は【12月15日・月曜日】です。
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――海月花夜――




