第6話:帰還
ルークを連れて辿り着いたダンジョンの出入口。
外から差し込む松明などの明かりが、ダンジョンの中に流れ込んでいた。
「おい、誰か来たぞ!」
歩く私とルークの人影を見つけた、人が振り返りながら叫ぶ。
ぞろぞろと他の人達が集まり、入口から出る頃には人が溢れていた。
「クロ殿、クロ殿だ!」
「ルークも居るぞ! 急げ」
そう言って駆けて来た人達が後ろで歩いていたルークに寄り添い、私にまで近づいて来る。
「私は、大丈夫ですから」
そっと手を前に出すと、距離を取って歩いてくれる。
そして私は、歩く先に居るノエルさんと目を合わせた。
「無事に、戻りました」
私がそう告げると、ノエルさんはほんの少し目を細め、静かに頷いた。
そして直ぐに、安堵したような声が聞こえて来る。
「仲間を救ってくれて、ありがとう。そして、君が無事で、本当に良かったよ」
そう言って差し出された手を、私は少しだけ迷ってから握り返した。
「ありがとうございます」
「ダンジョンの中で、何か変わった異変は、あったかい?」
「いえ、特には。ただ、スケルトンなら居ましたよ。沢山」
「スケルトン? 変だな、スケルトンの報告なんて暫く……」
考える様に俯いたノエルさんが、不思議そうにする。
そんなに、スケルトンってやっぱり居ないよね。
私も、帝国に来てからは見てないし。
「でも、倒せたので問題ないですよ。私が王国で相手してたのよりは、マシですよ」
「そうか……なら良いんだ。スケルトンが出た事に関しては、こちらで調べておくよ」
「お願いします」
そう答えた私に、ノエルさんは頷いてルークの所に向かっていった。
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「約束通り、明日の昼過ぎに」
ダンジョンの警備として残る私に向かって、ノエルさんが話しかけてきた。
私としては問題ないけど、ノエルさんこそ大丈夫なのだろうか。
「私は大丈夫ですけど、ノエルさんこそ大丈夫なんですか? 他のお仕事とか」
「朝の内に終わらせるさ。それに、重要じゃない公務よりも、君に対する約束を優先した方が、他の皆も怒らない筈だよ」
それはそれで、怖い気もする。
「分かりました。明日の昼過ぎ、ですね」
「君の方こそ、大丈夫なのか? 余り眠れないんじゃ」
「平気ですよ。朝に寝て、お昼に起きれば」
「余り、無理はしないでくれよ。君に倒れられたら、それこそ大変だ。でも、休みたかったら言ってくれ、元々君が居なくてもどうにかしてたんだ、一日や二日であれば、我々も対応する」
「分かりました。ありがとうございます」
休みか。
なんか、欲しいって思わないんだよね。
私っておかしいのかな。
「必要になったら、言いますね」
と、返したのは良いけど、このダンジョンがある限りそんな事は出来なさそうだけど。
ダンジョンか……。
出て来たダンジョンに目を向ける。
何処まで続いているんだろう。
王国で戦っていた頃は、南の大陸から魔物が来ていた。
けれど、こいつらダンジョンの魔物は、何処から……。
この世界には、解明されてない事ばかりだ。
「攻略とか、あるのかな」
ダンジョンを消滅させられれば、私の仕事はなくなる。
そうなれば、もう少しゆっくり出来そうだけど。
一人呟いた私。
それを少し離れた場所から、ノエルさんが見ている事に気づく事はなかった。
次話エピソードタイトル:『これって、デートかな』