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第五羽 大阪

 十月、僕と翼は大阪へ行く。

 なぜなら、四人の男が「飯塚翼と飯塚ウィングは実験の邪魔をしたクズだ。」

「クズはこの世にはいらない」と言って、その会話を聞いていた留美子さんが「いらないなら、芦屋で預かるわ。」と話に首を突っ込んだから。

 留美子さんは十月の第二金曜日に芦屋に帰る前に大阪に寄るからだ。留美子さんの本業は関西学院大学文学部の教授。北海道の随筆・エッセイは大学に提出する予定。副業は事務所の社員。彼女の家族は現在、大阪に住んでいる。もちろん、僕と翼はそこに住む予定。

 でも、大阪に住むには、三つの条件が必要だ。

 前世の記憶を使うこと。

 養子縁組届を淀川区役所に提出する。

 医術を使うこと。


 医術とは、医者が使える術。医術の発動条件は呪文を素早く言うこと。

 僕が使える医術は三つある。

 ひとつ目は記憶喪失の人を治す。「木火土金水」

 ふたつ目は忘れていた記憶を強制的に思い出させる。「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」

 三つ目は記憶を完全削除する。「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」

 この三つだ。そのふたつは今日の夕方に使う。使用時は僕の頭脳。

 僕と翼が大阪に行く準備をしているとドアノックの音が聞こえた。

「ウィングくん、翼ちゃん。大阪に行きたいんだよね。」

 留美子さんが入って来た。

「そうだよ。」

「『そうだよ。』じゃなくて、ウィングくん、翼ちゃん、大事な話があるの。」

「大事な話?ウィングくんと翼ちゃん、そのまま大阪に住ませたら、おばちゃん、誘拐犯になっちゃうの。だから、大阪に着いたら、即効、淀川区役所に行って、養子縁組届を提出すんの。」

 留美子さんは既に養子縁組の契約書を書いていた。後は淀川区役所に行って提出するだけ。

「どうしてなの。」

「そう言う決まりなの。ウィングくんは大丈夫だけど、翼ちゃんは、養子縁組の契約をしなダメなの。」

「養子縁組って何?」

 翼は首を傾げた。

「養子縁組は、家族の契約。つまり、新しい家族の契約。」

「へぇそうなんだ。」

 養子縁組のことぐらい、知っているよ。なぜなら、僕の親戚が警察、弁護士、裁判官、検察官だから。


 第二水曜日、僕と翼の大事な物は全て、留美子さんによって、大阪に送られた。

 第二金曜日の朝、僕と翼、留美子さんは早起きをしてすぐに飯塚邸を出た。

 これでいいんだ。これでいいのだ。今日から僕は前田ウィングになる。前田ウィングなって、翼の成長を見守る。

 とかち帯広空港に着いた三人は荷物を即効預けて飛行機に乗った。

 飛行機に乗った僕はMrs.GREENAPPLEの「Magic」を聞きながら伊丹に向かった。

 伊丹空港に着いた三人は荷物を受け取ってから白い大阪モノレールに乗って蛍池へ向かった。

 蛍池に着いた三人は阪急電車を待った。

 電車を待ってから三分後、小豆色の電車が来た。三人は阪急電車に乗ってすぐに座席に座り、十三へ向かった。

 十三へ向かう途中、曽根駅の近くにある古いビルに描かれている女性バレリーナの踊っている姿と暗闇の世界にいるエロい花嫁の壁画や服部天神駅に生えている一本の神木を見た。

「次は十三、十三。西宮北口、神戸、新開地、嵐山、京都河原町にお越しの方は次の電車にお乗り換えください。次は中津。中津の次は大阪梅田、終電です。Next is Juso, Juso. If you are heading to Nishinomiya Kitaguchi, Kobe, Shinkaichi, Arashiyama, or Kyoto Kawaramachi, please change to the next train. Next is Nakatsu. After Nakatsu, the next stop is Osaka Umeda, the last train.」

 アナウンスが聞こえた三人は十三に着くまで座席に座った。

「十三、十三です。西宮北口、神戸、新開地、嵐山、京都河原町にお越しの方は次の駅でお乗り換えください。次は中津、中津。中津の次は大阪梅田、終電です。Juso, Juso. If you are coming to Nishinomiya Kitaguchi, Kobe, Shinkaichi, Arashiyama, or Kyoto Kawaramachi, please change at the next station. Next is Nakatsu, Nakatsu. After Nakatsu, the next stop is Osaka Umeda, the last train.」

 十三に着く寸前にアナウンスが聞こえ、駅に着いた。

 駅に着いた三人は十三に降りた。

「翼ちゃん、今から家族の契約をするよ。今日からあなたは前田翼。ようこそ大阪へ。」

 留美子さんは翼に歓迎をしてから区役所に行って契約書を提出した。

「翼ちゃん、契約書を出したことだし、今からかき氷屋に行ってかき氷を食べよう。今は十一時すぎだから、空いていると思うよ。」

「うん。」

 三人は十三駅前の商店街を通ってかき氷屋に向かった。

「ここがかき氷屋?えっと、のぐちしょうてん?」

「そうだよ。翼ちゃん今からメニュー、決めようか。」

 のぐちしょうてんに着いた翼と留美子さんは早速メニュー表を見た。

 かき氷の値段はすべて四百円であり、翼は「どれにしよう」とかき氷を選んでいる。

「留美子さん。私これにする。マンゴーミルク。」

 翼はマンゴーミルクの画像に指を指した。

「分かった。じゃあ、おばちゃんは宇治抹茶。」

 留美子さんは秒でメニュー名を言った。

 メニューを決めた留美子さんと翼はレジに行った。

「すいません。」

 留美子さんが声を出した。すると、髭男のメンバー似の男性店員が来た。

「あ、はい。ご注文は何ですか。」

「えーっとね、マンゴーミルクと宇治抹茶。」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

 注文を受けた店員は大きな氷を出してかき氷器にセットした。店員はかき氷屋のボタンを押した。氷は超音速回転をしながら白金の雪山のかき氷になった。店員は雪山にシロップをかけた。店員がかき氷を作っている間、三人は席に座っていた。

「おまたせしました。マンゴーミルクと宇治抹茶です。」

 店員はふたつのかき氷を机に置いてレジへ戻った。

「翼ちゃん。いただきます。」

「いただきます。」

 留美子さんと翼は雪山を食べ始めた。翼が食べているかき氷はマンゴーミルク。留美子さんのは宇治抹茶。僕は羨ましそうにふたりがかき氷を食べている姿を見ている。

 ふたりはかき氷を完食したすぐに「ごちそうさま。」とAdoの『きっとコースター』の最後の歌詞を歌うように言った。翼は僕を抱っこして留美子さんと手を繋ぎながら前田プロジェクトへ向かった。

 前田プロダクションへ向かう途中、僕は十三商店街の景色やダイヘン、ファミリーマート、スーパーマルハチ田川店などの見た事がある建物や前田プロダクションの近くにある影山弁当屋、喫茶エンゼル、四葉スタジオなどの見た事が無い建物を見た。

 田川の街を散策した三人は前田プロダクションに着いた。


 前田プロダクション。通称、前プロは芸術を中心とした芸能事務所。今は大阪にしかない。

 約二十年後には、東京に第二事務所を建設する予定。内容は音楽、美術、文芸、演劇の四種類を使って個人的にSNSのフォロワーや視聴者を増やす。でも、SNSの利用は十三歳から。十三歳未満が利用した場合、警察によって大切な人生が破壊される。と言っても、前プロには、犯罪者はいない。

 前プロの所長は前田良考。副所長は留美子さんの妹、前田律代。社員は前田実希人。通称、ミッキー。前田夏。通称、なっちゃん。このふたりは僕の高校時代の同級生。今は四人とも兵庫県で仕事中でいない。事務所にいるのは、前田留美子。ひとり。


 前プロ到着後、留美子さんは翼に床拭きを頼んでから窓拭きを始めた。

 ふたりは家に帰ってすぐに家の大掃除の準備を始めた。留美子さんは雑巾を四枚出して翼に一枚渡した。

「翼ちゃん。今からおばちゃん、YouTubeMusicでAdoの『飾りじゃないのよ涙は』を流しながら雑巾掛けをするよ。翼ちゃんは床拭きを頼むね。翼ちゃんが床を拭くとね、床が綺麗になるの。でも、体のバランスをとらないとね、怪我をしちゃうからね。」

「はーい。」

 留美子さんは翼に掃除の楽しみ方を言ってから掃除を始めた。

 留美子さんは窓拭き。翼は床拭きを担当することになった。

 翼は僕を置いて床拭きを始めた。僕は彼女が一生懸命床を拭いている姿を十五分見た。


 十五後、翼と留美子さんは大掃除を終わらせ、四人の帰りを待ちながら夕食の準備をした。

 ピンポーン

 インターホンが鳴り、留美子さんはインターホンのモニターを確認した。

「あ、もうなっちゃん。帰って来たのか。」

 モニターを確認した留美子さんは玄関へ向かった。

 留美子さんはドアを開けた。

「おかえりなさい、なっちゃん。」

「ただいま。留美子さん。って、この子誰?」

 なっちゃんが帰宅した。帰宅したなっちゃんが僕に近づいた所で前世の記憶と医術を使う。

「あ、この子は。」

 今だ。

「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」

 僕はなっちゃんに第二の医術をかけた。すると、なっちゃんはボッーとした。

「あれ?なんだか、懐かしい気配がするね。前田翼と時花藤のことを思い出す。なぜ、なぜなんだ。」

「それは、僕の前世が前田翼だから。」

 なっちゃんが謎の独り言を言わせている間に前世の記憶を使った。

 僕の計画通りにいった。

「ただいま。」「ただいま。」

 ふたりの男性の声が聞こえた。ミッキーと良考さんが帰ってきた。

 二回目も同じくいく。

「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」

 ミッキーに第二の医術をかけた。すると、なっちゃんと同じく謎の独り言を言い始めた。

 謎の独り言から一時間後、妹の律代さんが帰ってきた。

 六人揃った。全員集合したので、六人は夕食の準備をした。今日の夕食はハンバーグ。

 六人は「いただきます。」と言って箸でハンバーグを切った。六人はハンバーグをひと口食べた。

 六人揃って「美味しい。」と言った。

 ハンバーグを食べ終わった六人は神戸プリンを食べながら自己紹介をした。

 自己紹介が終わり、留美子さんは芦屋市に帰った。

 翌日の朝、前プロは家庭裁判所に行って前田翼を『前田里沙』に改名した。

 里沙の由来は、日本の女性歌手の本名が由来。

 改名をしてもらった前田里沙は本格的にダンサーを目指すのである。

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