第三羽 知床の夜空
金曜日の夜、僕と翼は豪華な夕食を食べてから自室に行った。
「ウィング、明日の夜、知床の夜空が観られるんだって。」
彼女の瞳に僕は「観るよ。あの男たちにバレないように。」と答えた。
翌日の夜、僕と翼はあの男たちにバレないように扉の鍵を閉め、スライド式の窓を開けた。僕は翼を背負って超音速で知床に向かった。
知床に着いた僕と翼は満天の夜空を見上げた。
知床の夜空は芸術作品のように輝いている。
輝く夜空を見ていると翼は「ウィングと綺麗な夜空を見れるなんて。初めてだわ。そうだ、ウィング、バースエメラルドって知っている?」と早めの感想を言いながら僕に質問をした。
「バースエメラルド?それって翼が言っていたバースのこと?」
僕は首を傾けながら質問に答えた。
「そうだよ。ウィング。」
「バースの意味は誕生。」
「バースエメラルドは七つ。バースが七つ揃うと、奇跡が起こる。奇跡を起こすには、バースコントロールが必要なの。」
「バースコントロール?」
「バースコントロールは、バースエメラルドをコントロールして奇跡を起こす技。バースコントロールをした人はひとりの日本人。バースコントロールをして奇跡を起こした三人の日本人男性がいるの。そのうちひとりの男性の実話を話すよ。」
「ひとりの男の実話?」
僕は首を傾げた。
「舞台は千葉県の田舎。」
僕と翼は満天の星空を見上げた。
水曜日の朝、俺は西崎と一緒に学校へ行く。
俺の名前は吉野優一。通称、吉野。男子高校生。隣にいるのは、西崎皇一。通称、西崎。
俺たちふたりは千葉県旧大総高等学校、通称、大総に通っている。
学校は楽しいけど、授業は超ブラック過ぎるスパルタ授業。休み時間は少ないし、昼休みもなく、死ぬか卒業までずっと通う。俺らふたりはもう限界なのだ。もう嫌なのだ。こんな学校通うの。でも、留年や停学、退学、夏休み、冬休みは無い。一年生、二年生はテストが無い。でも、三年生だけ、テストがある。俺らは今、高校三年生。大学志望じゃないのに、テストがある。最悪。もう嫌。生きたくない。死にたい。もう限界かも。
キンコーンカンコーン。
一時間目の授業が始まった。でも、俺と西崎は授業を受けない。
「西崎、今日の授業受けるのだるくね。」
「マジそれな。」
「西崎、なんかやりたいことやりたくね。」
「あ~そうだなぁ。」
「西崎、なんかおもろいことでも考えたのか。」
「ねえ、吉野、俺らふたりで、バースエメラルドの夜の奇跡、起こさね。」
「バースエメラルド?」
「バースエメラルドは、神戸に存在する七つの宝石。で、宝石が七つ揃えば、奇跡が起こる。今、七つあるから今夜奇跡起こそうぜ。」
「へえ~そうなんだ。」
「だからさ、今日の学校サボって神戸に行こう。」
「おぉいいじゃないか。」
こうして、俺と西崎の大冒険が幕を開けた。
授業中、俺と西崎は、学校を抜け出して、神戸へ向かった。
神戸に着いた俺と西崎は、早速、観光を始めた。南京町やメリケンパーク、神戸ポートタワー、川崎シーワールドに行った。
本番の夜、俺と西崎は奇跡を起こそうとした。
「吉野、行くよ。」
「いつでもいいぜ、西崎。」
「バースコントロール」「バースコントロール」と新幹線で一生懸命覚えた言葉を言った瞬間、謎の爆発が起きた。
「なんや、何が起きたん?!」
俺の頭は真っ白な状態になり、周囲を見た。
「ここはどこや、全部、真っ暗やん。」
俺の周りは真っ暗になっていた。
「どうしよう。」
俺が頭を抱えた時には、体のオーラが黄金に変わっていた。
「え?どういうことなん?」
俺の頭はまた真っ白になった。
「俺はもう死んだかも。」と最期の一言を言って天国へ旅立って行くように真っ暗な夜へ駆けていった。
実話が終わり、翼は僕を見た。
「そうだ。ウィング、言うの忘れたわ。知床にある『紅の月』は立ち入り禁止なんだって。なんで立ち入り禁止なのかまだ分からない。」
「そう、まだ分からないのか。」
「ウィング、私は将来ミュージシャンになるの。でも、なれない。なぜなら、あの四人がうるさいからダメって。私、どうすればいいの。」
翼は涙をひとつこぼした。
「大丈夫だよ。翼、今年の十月の第二金曜日に大阪へ行こう。そうすれば、翼は自由になれる。誰かが作った人生なんてうっせぇわ。」
僕は翼に大阪へ行く提案をした。なぜなら大阪に知り合いがいるから。
「そうだよね。ウィング。」
僕と翼はハグをした。
これがきっかけで新しい人生への一歩が進んだ。