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前田ウィング  作者: 日野夢


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2/8

第一羽 生まれ変わったらオレンジ色のカワセミだった。

 始まりはいつだっただろう。分からない。記憶の中では、十一歳。小学五年生。席が隣で、持っているノートが同じだった。ノートの特徴は、画像。内容は歌姫がライブで歌っている一枚の画像。それがきっかけで彼女との幸せな時間が増えていく。彼女の名前は時花(ときばな)彩乃。今で言う前田彩乃。彼女は髪が群青色で美しい。僕と同じ成績優秀スポーツ万能。彼氏である僕がこの世で一番愛している人。でも、彼女との幸せな時間は高校二年生の終わりまで続いた。なぜなら、三年生には、大学受験があるからだ。彼女の両親は毒親。僕と彼女は毒親から楽しいことを減らされ、推しの物は捨てられ、笑顔を壊された。僕だけ毒親から脅迫された。理由は彼氏だから。

 僕は毒親から過酷な言葉を言われた。


「あなたのような男は世界中の子供たちを不幸にする。そうでしよ。前田翼くん。あなたのせいで私たちの親族はめちゃくちゃになったのよ。あなたのせいで、あなたなんか、この世から死ねばいいのに。あなたが医学部に不合格したら、自殺して、な、あなたはこの世から要らないから。あなたの命は生ゴミのようだから。今日からあなたは『生ゴミの前田』と呼ぶから。」


 過酷な言葉を言われた僕は「死にたい死にたい」と毎日言い続けた。誰にも言えず、誰にも話せず。

 彼女の親は高校三年生から僕と彩乃の幸せを完全削除するように捨てた。幸せを捨てられた僕と彩乃は毒親に受験勉強を一年間、させれられた。

 結果、合格。僕は自殺せずに済み、喜んだ。でも、彼女の笑顔は無かった。ブラック企業で働いているかのような生活は八年間続いた。彼女の家系は医者。彼女の親族は過酷でひどい人たち。彼女の幸せを毎日、毎日、奪っている。


 それから二年後の四月、僕と彩乃の結婚式が行われた。でも、衣装は私服。

「前田くんの私服ダッセェ。」

「世界一駄目な日本人の前田くん。結婚おめでとう。」

「さっさとアフリカに行けよ。お前は日本にいる資格なんてないから。」

「前田くんは日本に住む資格ありません。」

「おめぇなんか、日本から消えろ。」

「消えろ。消えろ。消えろ。消えろ。日本から消えろ。」

 僕は親族から差別的な言葉を言われた。僕にとっては、地獄のような式だった。

 結婚式から一週間後、僕と彩乃はアフリカに行った。


 四月、アフリカの小さな病院で働く看護師、前田翼。僕は毎日毎日患者の人数をしっかり確認している。僕と彩乃は小さな病院に住んでいる。僕の食事は水と残飯。

 彩乃の食事は親族と同じ。なぜなら彩乃の仕事は内科医。彩乃は毎日休むことなく苦しい環境の中、一人で患者たちの健康診断に尽くしている。僕が勤務している小さな病院にも親族の男がひとりいる。名前は時花リーブス。彼の個人情報は知らない。


 アフリカに住んでから十一年後の夏、僕の愛する妻、彩乃は十ヶ月後の妊娠をしている。でも、彼女は妊娠しているにも関わらず、いつものように仕事をしている。理由は医者は人の命を守る職業だから。

 三日後の朝、彩乃は急に倒れた。

「大丈夫、彩乃。」

 僕は彩乃を起こそうとした。しかしあのは目を覚まさなかった。すると珍しい音が大きく聞こえた。

「何?誰なの?」

 僕は目を丸くして周囲を見回した。周囲を見回すと、多くの医者や患者、関係者がたくさんいた。

「前田さん。何か手伝いましょうか。」

「前田さん。」

「前田先生。」

 多くの人々が僕と藤を助けてくれた。

「ありがとう。みんな。」

 僕は涙目をした。周囲の人々は妊娠中の彩乃を慎重にゆっくり病室のベッドまで運んだ。僕はみんなに「ありがとうございます。後は全部自分でやりますから。みんなは自分のことをやってください。」と言って周囲の人々は病室から出た。僕は近くに置いてあった椅子に座ってベッドで寝ている藤を見詰めた。

「彩乃、無理しなくてもいいよ。後は僕とみんなでやるから。」

 僕は寝ている彩乃の右手を握った。

「彩乃、目を覚まして。お願いだから、起きて。」

 彩乃は目を覚まさなかった。なぜなら彼女は十ヶ月の妊娠をしているから。僕は彩乃の右手を握りながら見詰め続けている。僕はキスしようとした。すると彼女の親族が部屋に入室した。

「気持ち悪い日本人の前田くん?どうしてここにいるの。さっさと仕事に戻って。君は看護師。少し考えれば、分かるよね。看護師は俺らのような医者のもとで、診療や治療の補助を行い、病気や怪我(けが)などで不自由な生活を送っている人をサポートする。ただそれだけ。」

 親族は僕に感謝を言わず過激な言葉を言った。

「そんなに言う必要はありません。僕だって命を持って病気と闘っています。世界中で絶望をしている子供たちは『死にたい死にたい』って(すが)ってたって何も意味が無いことを言っています。僕と君は何も知りません。形あるもの全てに終わりが来ることを。最底、酩酊(めいてい)で、ありのままの、無茶苦茶な環境の中で僕たちは生きています。僕たち、いや、世界中の医者の能力によって救えない命がいくつもあります。」

 僕はリーブスに強い名言を連発した。

「日本語がおかしい名言言って何か変わるの。変わらないよね。」

「変わるに決まっています。」

「前田くん、何おかしな日本語言ってんの。」

 僕は下を向いて黙った。

「じゃあもういいよ。前田くん。君はこの世にいらないから。」

 リーブスに差別的な言葉を言われた瞬間、小さい飛行機の音を耳にする。


 僕は「死にたい死にたい死にたい」と言っている間に飛行機の音が大きくなった。少しずつ音が大きくなっていくうちに、建物の中が大震災のように急に揺れた。大震災が起きている間、壁が急に崩れ、僕は建物の下敷きになってしまった。建物の下敷きになった僕の命は力尽きようとした。つまり、死。死の直前、僕は彩乃が生きているのかを知らずに。

 僕は死んだ。


 建物の下敷きになった僕は目を覚ました。

「ここはどこ?」

 目を覚ました僕は暗闇の中にいる。暗闇の中、幻覚が急に起きた。

「今のなんだ?今、身体が小鳥のようにふわふわする。足は人間のような感覚がする。」

 僕は人間ではないことに気づいてしまった。そう、僕は新種の小鳥に生まれ変わってしまった。

「翼、お誕生日おめでとう。」

「ありがとうおじいさま。」

「翼、鳥の名前は何にする。」

「ウィング。飯塚ウィング。」

「ウィングか。『翼』の英語名。」

 見知らぬ老翁と謎の少女の楽しそうな会話が聞こえた。

 藤、僕は新種の小鳥に生まれ変わるよ。

 今から出ますよ。飯塚翼。

 僕は両足で卵の壁を蹴って光の世界に出た。

「ん?僕、もしかして。」

 僕は近くの鏡を見た。

 背中と翼の上面と下面が太陽のように輝いている橙色。胸と腹が美しい青色。(くちばし)に目と足が神秘的な漆黒。耳羽と喉が清潔的な白色の四色に染まったオレンジ色のカワセミ。

「オレンジ色のカワセミに生まれ変わったのかよ。」

 僕はカワセミに転生したことに驚いた。

 僕はオレンジ色のカワセミ、飯塚ウィング。今で言う前田ウィングに生まれ変わった。

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