平和な時間、明るい場所
現在俺、西野騎士はというと、お久しぶりに学校へとやってきていた。
ま、久しぶりの学校ということもあり、友達たちとも顔をあわせるのはそれなりに久しぶり。
教室に入ると、「無断で」欠席していた俺に皆の視線が注目する。
「よっ、お前なんでこんなに休んでたんだ?」
・・・なんて言うべきかわかる人はいる?
ま、ありのままを話してもど~せ「・・・頭大丈夫か?」といわれるのがオチだ。
「フッ、無断欠席ほど心が爽やかになるものはないぜ。」
「・・・」
・・・今落ち着いて思えばなんでこんなこといったんだろう・・・
「つまりお前は無断で欠席して、楽しい毎日を過ごしていた、ということだな。」
友達のうちの1人である「片倉」が言う。
・・・冗談じゃない。
これが楽しかったら、俺はな~んの文句もない。
「そういうことじゃない!俺は俺で忙しかったんだ!!」
「人生ENJOY!!・・・ってか。ヤダヤダ・・・」
「ま、落ち着けって。こいつにはこいつの事情があるんだろうぜ?」
すると後ろから俺がクラスで一番信用できる男子生徒「樋田」がやってきた。
・・・ちなみに・・・だが・・・
「樋田」という男は野球部で、ケンカなら誰にも負けない。
だがそんな強さをもっていても、皆のことを考えて動ける。
そんないい奴だ。
「樋田、お前はいつも皆の肩を持ちすぎだぜ?もう少しババンと攻めてもいいんじゃねぇか?」
「本人が言いたくないならそれでいいんじゃないか?」
どうやら今日も樋田に救われてしまったようだ・・・
そんな会話をしていると担任の先生がくる。
「出席とるぞ!」
いつの間にやらチャイムもなっていたらしい。
・・・時間って経つのが早いね!
「おっ、西野。久しぶりだな。」
・・・先生ですらこの反応。
ま、「無断欠席」ですからね。
担任はこのクラス、37名の出席をとると、出席簿を閉じて教卓に手をバンと叩きつける。
「・・・痛ててて・・・」
この教師はバカなのだろうか・・・?
「きょ・今日は転校生がいる。」
「おぉ!?」
転校生か。
・・・この時期では珍しいものだ。
しかも高校で。
皆もテンションが上がっている。
ただでさえ珍しい転校生がうちのクラスなんて、まさに神様に感謝だ。
・・・可愛い子かな?
な~んて期待が俺のなかでも若干あったりしたりして。
・・・が!!
俺の期待は見事にぶち壊されることとなる。
「五十嵐 漣、よろしく。」
「島風だ、諸君よろしくたのも~!!」
「不死鳥 翼です、よろしくお願いします。」
・・・わ~い、てんこーせーだ~(棒
「一気に3人とか、マジ仕組まれてるみたいだぜ!」
いや、実際仕組まれてるだろ。
「あ~、席が足りないな・・・少し待っててくれ。」
そんなことをいうと、担任は廊下へとでていった。
・・・転校生がくることぐらいわかっていただろうに、机ぐらい用意しとけよ。
とか思ったりする今日この頃。
「待っていたまえ、秘境の机たちよ!!今、この奇跡の天才教師が迎えにいく!!ひゃほ~!!!」
・・・なぜ廊下で騒ぐ・・・?
・・・ダメだ、あの教師・・・
「さて、保健室にでもいくか。」
すると早くも「飽きた」と顔に思いっきり表情がでている島風は教室を出て行こうとする。
「ってちょっと待った!!」
「あぁ?なんだよ、西野。」
「何勝手に抜け出そうとしてるんだよ!!」
みんなもいってやれ!
転校生がいきなり授業放棄とかさすがだぜ。
プロはやることが違う!
「っていうか、お前と転校生って知り合いなのか?」
「・・・あ・・・」
我ながら完全なる自爆。
「ハッハッハ、こいつとはと~ってもいいか・ん・け・いなんだぜ。」
その誤解を招くようないい方はやめていただきたい。
「ふ・不潔よぉ~!!」
「BL!?薔薇だと!?西野、お前・・・やっぱりそうだったのか・・・」
「やっぱりってなんだよ!!」
・・・ほら、バカどもが食いついた・・・
もうやだ、この高校・・・
「俺も一目見たときから薄々感じてはいたが・・・」
それはすごく失礼だな、おい。
「これは薄い本量産だな、うん。」
「・・・薄い本?」
「この際、ヨスガっちまえ!!」
・・・片倉のいう言葉は専門用語すぎて何がなんだかわからん。
「そうすれば俺が薄い本を書いて・・・コミケで売る!!」
コミケ?
コミュニケーション?
「そりゃずいぶんと儲かり話じゃねぇの。ここは1つ、俺と山分け、でどうよ?」
その話に島風はのっているように見える。
・・・世の中はわからないことが多いな。
「へぇ~、転校生、そういう知識があるのか。」
「ふ・不潔よぉ~!!」
・・・これってもしかして・・・
今の女子、「相山」の言葉でなんとな~く想像がついたことにはついた。
・・・ここは否定したほうがよさそうだ、良いに決まってる。
「今度ともにアニメイトへ行かないか?」
「いや、個人的には虎の穴かな・・・」
・・・意気投合、とはまさにこのことか。
「あ・あの!不死鳥さんって好きな食べ物とかってあるんですか?」
「僕?・・・僕は基本野菜が好きかな。」
「わ・私も大好きです!」
・・・イケメン氏ねよ・・・
「じゃぁ今度、一緒にレストランなんてどうかな?」
「は・はい!わ・私でよければ!!」
「あ~、ずるい~!」
・・・なんというハーレム。
・・・羨ましくなんてないぞ、決して羨ましくなんて!!
「五十嵐さんって得意教科ってあるの?」
「数学と理科。」
・・・定型的な理系だな・・・
「今度一緒に勉強しない?」
あっちはあっちで女子生徒と仲良くやれているみたいだ。
・・・てか、なじむの早いな。
「嫌よ、あんた頭悪そうだし。」
さっそく友達ができてよかったな・・・
っておい!!!
お前、そりゃないだろ!
「えぇ!?」
「じゃぁこの問題とける?」
「・・・え・え~と・・・」
あの女、サイテーだ・・・
俺、絶対あの女には学校では近づかないぞ!!
とりあえずホームルームは担任が机を探しにいってから帰ってこないので、勝手に終わらせてしまった。
休み時間になっても皆は転校生3人に夢中。
そんな中、1人だけ目もくれずに外を向いている男子がいる。
・・・樋田だ。
「よっ、お前はあの3人と話さないのか?」
「そのうち慣れるだろ。」
そんなことを言って、再び窓の外を見る。
「ちょっと樋田という言うの、来なさいよ。」
するといきなり横から首を突っ込んでくる女性が1人。
・・・言うまでもない、五十嵐だ。
「なんだ?」
「この高校、初めてだから案内してほしいんだけど。」
「おぅ、任せとけ。」
・・・珍しいな、こいつが自分から進んで人に話しかけるなんて・・・
さて、その後は非常に大変だった。
島風はこの高校の教師にケンカを売りまくるし・・・
五十嵐はこの高校の生徒にケンカを売りまくるし・・・
不死鳥はこの高校の女子生徒をナンパしまくってるし・・・(←しかも全部成功中
マジこの高校生活終わっとる・・・
「はぁ・・・なんなんだよ、この疲れ・・・」
そんな愚痴を吐きつつも、時間は刻々と過ぎていき、気づけば帰り道となっていた。
帰り道は片倉、相山、樋田、それと3人組み。
あと俺、なので結構大人数で帰っていることになる。
「すなわち!!ここ最近のアニメは「こいよI氏!」レベルが高い気がするんだよねぇ・・・」
・・・I氏?
・・・ま、一応言っておくが東京都の現都知事とかじゃないんだからな!!
「てか1クールを量産しすぎなんだよ。俺はあれほど2クールのほうがいいと・・・」
・・・意味わからん。
こっちの話はとりあえずわからないので、右を向く。
左がダメなら右!
これ基本中の基本なり!!
「今日は助かったわ。また今後も学校についていろいろ教えてもらえると助かる。」
「いいってことよ。」
こいつ(五十嵐)が人に感謝をするなんて・・・
気に入られてるな、樋田。
「気に入られてますね、樋田くん。羨ましい限りです。」
お前はハーレムのくせにその言葉を言うか・・・
その言葉、俺からしたら嫌がらせにしか聴こえん。
「ね・ねぇ、西野くん。」
「ん?」
後ろを見てみれば相山がにっこりと笑っている。
「3人もこのクラスにくるなんてすごいよね!まるで仕組まれてるみたい!!」
ですから先ほども仕組まれていると(ry
「だな、ホント奇跡としかいい様がないな。」
我ながら声に張りがない。
・・・俺、もう疲れたんだ・・・
「疲れてる?」
「疲れてる。」
「大変ね。」
「大変だよ。」
って俺はリピーターか!?
・・・そういえば素朴な疑問だが、物事に「er」をつけると人になるが・・・
なんでも通用するのだろうか。
「なぁ、そういえばなんでも語尾に「er」をつかれば人になるのかな?」
「は?バカじゃないの?」
五十嵐はこちらをギロリとにらむ。
「ホントだぜ、「ist」もあるだろ。」
「そうそう、ぺロリストとかミルキストとか。」
・・・なんだよ、その「テロリスト」に似た感じの言葉は・・・
片倉と島風に関しては、もうこいつらに意見はきかん。
話がゴチャゴチャになるだけだ・・・
「あ、私こっちだから!またね!!」
「おぅ!」
最初に相山が道を曲がって、歩いていく。
「俺も今日はここで。」
「・・・また病院か?」
「あぁ。」
樋田は彼の彼女が病院で入院しているため、よくそちらに行く。
今日もそうみたいだ。
「じゃ、俺もここでだな。」
「今日は早いじゃないか、片倉。」
「家に帰ってまたアニメを見るんだよ!まだ今期のアニメは間に合ってないのがあるんだから!!」
・・・さっきまでのアニメの話だったのか・・・
ようやく理解した。
「じゃな!!」
そんなこんなで結局最終的にこの3人となったわけだ。
「・・・で?樋田は彼女がいるぞ?」
とりあえず気に入っているようだが、五十嵐には言っておかないといけないことがある。
「あっそ。別に好みじゃないし、あんなの。」
・・・ひどいいい様だな・・・
「じゃぁなんで・・・」
「気づかなかったんですか?」
今度は不死鳥が俺に向かって言う。
「気づかなかったって?」
「“探知”があるくせに気づかないなんて・・・」
五十嵐はすご~くダルそうな顔でこちらを見る。
「彼、素質あるわよ。」
「・・・は?」
「たまたまお前を見張るために来た高校で、素質のある男と会うなんてな。」
・・・まさか彼・・・
樋田にも俺と同じような能力がある、ということなのだろうか。
「セクレットも反応したという報告はない。・・・ということはまだ目覚めまでは少しかかるわね。」
セクレットとは、力に目覚めた者を探し当てるレーダーのようなものらしい・・・
ということを前に聞いた気がする。
「今後目をつけておくわ。」
その人を監視する、みたいな言い回しはよくないと思うのは俺だけだろうか?
そして気づけば基地のなか。
「・・・なんで俺、ここにいるんだっけ?」
「あ~、それは俺がお前を後ろから殴ってだな・・・」
「もう少しまともに人を扱えないのか!!」
いきなり後ろから殴られる、って今後警戒しなければ!!
特に島風には!!
だがよくよく考えると五十嵐も殴ってきそうだし、その気になれば不死鳥だって自慢のノートPCを使って角を使ってガツンと・・・
・・・信用できねぇ~・・・
するとドアが開いた。
「どうだった?久しぶりの学校は。」
「これはこれは、基地司令。」
基地司令官である竜胆がやってきた。
「・・・疲れました・・・」
「だが学校にいた時間では少しは暗い記憶を忘れられただろう?」
「!!」
そういわれてみれば!
・・・今、また思い出したけどな・・・
「今後も学校へ行く事は許可する。せめて学校ぐらいは楽しんでおけ。」
そういうと竜胆は部屋からでていった。
ま、彼の言うことは正論だ。
俺はもう戦うことを決意した身だ。
いつ実戦に送り出され、そしていつ死ぬかもわからない。
そんな中で唯一疲れるけどこんな非日常を忘れられる学校は最大の救いの場なのかもしれない。
だからせめてそれぐらいは全力で楽しんでおこう!
俺はこの暗い現実のなかで、やっと明るい場所を見つけたのだった。
「平和な時間、明るい場所」 完