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俺の人生は雨のち雨!?  作者: へたれ度100%
第1章 俺の人生が180度回転!?
8/12

剣と銃と騎士?

「流星。」

「・・・ん?」



旋律の剣関東本部、射撃訓練場に1人の男が弾を込めながらに言う。



「お前の名前。」

「・・・流星・・・」


彼の手に握られている銃から声が発せられている。



「気に入らないか?」

「騎士がそう呼ぶのであれば我はそのような名前で返事するまでだ。」



・・・その「ど~でもいいですよ、名前なんて」みたいなノリ、やめてくれないかなぁ・・・



「どうでもいいわけではない。主のセンスを確かめている。」

「だから人の心を読むな!!」

「そういう仕様なのだ。」


その言葉を聞くだけで、俺は萎える・・・

このままいくと「そういう仕様なのだ」恐怖症になりそうである。



「その恐怖症になる前に「慣れ」というものがくるだろう。」

「・・・はぁ・・・」


なんて深いため息をつきつつ、再び銃を構える。



しかし冗談抜きで肩が限界にきているようで、先ほどよりさらに的からズレてしまっている。




「・・・」


その結果を見て、ますます萎える男が、実は俺である。


そんな状況のなか、ドアが開いた。



「ん?」

「進んでるか?」



やってきたのは、五十嵐だった。



「・・・に見えるか?」

「見えないからきいているんだ。」


そうかい、けど残念。

お前の目のほうが正しい。



「だよな。進んでねぇよ。」

「はぁ・・・」


その答えに、彼女は深いため息をついた。


ま、そりゃそうだろう。

俺が仮に彼女だったら同じ反応をしていると思われる。



「仕方ない。先にスキルでも覚えてもらうか・・・」


スキルとは、各自が使える特殊能力のようなもの・・・

と流星が銃を撃っているときに、説明してくれた。



「まずは初歩中の初歩からだから・・・そうね、保存がいいかな。いい?」


一応きいてくれるんだな。

よかったよかった・・・

勝手に話が進められそうで少し怖かったんだわ・・・



ちなみに、保存とは、体内に武器をしまうことができるびっくり仰天なスキルだ。

これが初歩中の初歩とは!

世界というのは広いものだ。



「いいぜ、別に。」

「じゃ保存からね。準備はいい?」


準備なんてすることあるのだろうか?


なんて俺の答えも聞かずに彼女はサッサと始める。


「じゃ、まず・・・」








青い空と海。

風が吹き、一瞬ここが戦地であるということを忘れてしまうぐらいに平穏な環境が目の前にある。


ここ、地中海を数十もの武装船が進んでいく。

中心には、艦載機を大量に載せた巨大な航空母艦がいる。

その周りを、盾となるべき「イージス艦」群が覆っている。



「6時の方向より対艦ミサイル接近!」

「ファランクス撃ち方はじめ!!」


各艦が巧みな連携を見せている。



その様子を英国海軍第4艦隊が見つめている。


「さすがは「世界最強」の海軍。・・・演習中でも素晴らしい動きだ。」



新生第4艦隊の旗艦にして英国海軍の最新鋭航空母艦「プリンス・オブ・ウェールズ」の艦橋ですらそのような言葉があふれている。



彼らが見つめていた艦隊は、米国中東艦隊。

もともとこちらの方面は「第5艦隊(アラビア海艦隊)」と「第6艦隊(地中海艦隊)」で事足りていた。




が表向きでは、中東による対多国籍軍勢力の戦力拡大のためさらに艦隊を増やすべきとして、特殊に編成された艦隊。

だが本来の目的は、「螺旋の剣」による中東攻略のためにどうしても艦隊が必要だった。

そのため、米国海軍上級仕官と表向きにだしている「螺旋の剣」の者たちに意見させ、中東艦隊を作らせた。


故に表向きでは「第8艦隊」とも呼ばれている。




中東は、フリューゲルを大将とする、ゲルレレたちが多く出没している。

故に毎日のように時間がとまり、その空間のなかで、人とゲルレレとの戦いが繰り広げられている。


陸上での戦闘は、一部の地上多国籍軍に装った「螺旋の剣」の者たちが行うが、やはり陸上だけでは戦力的に不足している。

そのため、海上からの支援部隊として、地中海艦隊を出撃させた。


海上からの支援があれば不足はないが、すると今度は地中海艦隊が狙われる可能性がある。

そのため、念には念を、という意味もおさえて、英国海軍第4艦隊をも出撃させている。



現在は時間は流れているが、各艦はいつ来てもおかしくない実戦に備えて演習を行っている。

「いつ来てもおかしくない」と思うのには根拠がある。

それは先日、英国第4艦隊所属の海上警備隊3隻が、太平洋にて行方をくらませたということだ。



英国海軍第4艦隊の「螺旋の剣」本部からの任務は、中東艦隊の護衛、および海上警備。

そのため、主力部隊は中東艦隊のそばにいて、他の船を警備に送っていた。

そんな艦隊が、たった1隻の船型ゲルレレキャンベラーに一瞬でやられた、という報告を受ければどんな艦隊でも焦る。


しかも米国中東艦隊は、中東攻略の上でなくてはならない存在。

故に今後狙われる可能性も高い。

そのため、英国海軍第4艦隊はすべての警備隊を本隊に戻し、そのまま第4艦隊は中東艦隊の護衛に全力を注ぐ姿勢を見せた。








アメリカに本社をもつ「螺旋の剣」。

表向きには「傭兵会社」の本社ということになっている。


が、実際は対ゲルレレのための戦闘本部である。


その最上階はただ広い一部屋があるだけだ。

その広い部屋からは、外の光景が一望できるようになっている。



「命令通り英国第4艦隊は、中東艦隊の護衛につくため各方面からすべての警備隊を撤退させています。」



この広い部屋に、似合わない。

というより、つりあわない、机が1つだけおいてある。

その机の椅子に深く腰かけている男に、秘書らしき男が報告する。



「第4艦隊の艦隊司令を口説くのは大変でしたよ・・・」

「いくら我らの兵とはいえ、英国軍ということか・・・」


彼らの言葉から察するに、第4艦隊の艦隊司令は米国中東艦隊を全力で守る、という命令に反対だったらしい。

たしかに、そうすると英国海軍のメンツは丸つぶれである。

目立つ仕事はない上に、一番の仕事は他国の艦隊の護衛といった畑違いな任務なのだから。



「よく説得できたな?」

「口説くのは大得意ですから。」


秘書は苦笑しつつ言う。



「それで主に太平洋上を警備する艦隊がなくなりましたが・・・どうするおつもりですか?」

「ロシア海軍を使おうと思っている。」


ロシア海軍には、4つの艦隊が存在している。

「北方艦隊」「太平洋艦隊」「バルト海艦隊」「黒海艦隊」の4つである。



「太平洋艦隊を分散させ、警備に当たらせたい。」

「・・・了解しました。総旗艦は「ヴァリャーク」でよろしいですか?」

「目的は海上警備だ。ミサイル巡洋艦だろうが何だろうが問題はない。」

「了解しました。さっそく掛け合ってみます。」



そういうと、秘書らしき男は軽く会釈をして、部屋から出て行った。



椅子に腰かけている男は、目を細める。

それから手を組み、次なる螺旋の剣の作戦を考えるのだった。


・・・今度こそ失敗は許されない。

すでに先日の警備隊3隻の沈没で、旋律の剣との立場が危うくなっている。

次の作戦は必ず成功させ、失態に報いなければならない。


だからこそ、念入りに1人、その男は考えるのだった。









再び射撃訓練場。



「・・・できないんだけど?」

「お前、やる気あるか?」



結構あるんだが・・・

だが教え方が「精神を統一して、手をかざせ」だけじゃ出来るわけがないと思うのだが・・・



「できないのはお前にセンスがないから。」

「お前な、あんなテキトーな教え方でできると思ってるのか?」

「できないはずがない。」



その自信はどこからくるのだろうか・・・


彼女は自信満々に腕を組み、俺を見下すかのように言った。




「間違ったことなどいっていないし、余計なことも言っていない。これが最短ルート。」

「省きすぎだろうが!!」



俺はこうは訴えるが・・・

彼女は聞く耳をまるでもたない。



「じゃ諦めるのね。」


そんな時に、またもや扉が開いた。




「進んでますか~?」

「・・・に見えるか?」

「どうみても見えませんね。だから聞いたのですが・・・」


前と同じ反応かよ・・・


そんなに俺の心を粉砕したいのだろうか、こいつらは・・・



「お前が正しいよ。」

「そうですか・・・ま、最初は皆、そうですよ。」


と彼は微笑みながらに言う。


その笑みはやはり温かみがある笑みで、自然と心にゆとりをくれる。



「不死鳥ならより上手く教えられるかもね。」

「何がです?」

「いや、銃はとりあえず肩がイカレてるから、先にスキルの特訓をしようということになってな。」

「あ~、なるほど。」


彼は満足気な笑みを浮かべて言った。



「つまり、島風さんの反対を押し切ってとった銃が使いこなせなくて、挙句に気合がないから肩が痛くなってしまったので銃はとりあえず置いておいて、肩を使わないスキルの特訓をする、ということですね。」



・・・なんかものすご~く嫌な言い方だな・・・

たしかに一寸の誤りもなく、見事に当たっているのだが・・・

なんか不愉快だ・・・




「というか、気合があっても肩は痛くなると思うが?」

「そんなの気合です!!」


なんだよ、それ・・・

こいつは鬼教官か・・・

というか、簡単に言ってくれすぎだろ・・・




「で?最初は何から取得しようとしてるんです?」

「保存がいいんじゃないかと私は思う。」


お前に聞いてるんじゃねぇよ・・・

俺に聞いてるのに、なぜお前が答えるし・・・



「そうですね。それがあるかないかではだいぶ違いますからね。」


で、俺のことはスルーなのね・・・



「学校に行くにも武器を見えるように携帯はまずいですしね・・・」


そういえば学校のことをすっかり忘れていた!!



「学校には行って大丈夫なのか!?」

「多分。・・・ま、一応基地司令に確認しないといけないだろうけど。」


彼女はいかにも「面倒だな・・・」と言いたげな顔で言った。



「それに他にも利点はありますよ?」

「?」

「いつでも武器を使用できますし、直接持ち運びしなくていいですし。」


たしかにそういう利点はあるな。

それに流星はさすがは回転式拳銃リボルバーということもあって、結構重たいし・・・



「よし、じゃぁさっそく教えてくれ!」


するとまたもや怖い目でにらまれた、五十嵐に・・・



「・・・お願いします。」







その頃、将軍フリューゲルは「龍」本部へと戻っていた。

前に話し合った広場のような場所へと向かう。


後ろにはロイヤーとヴェルナーが続く。



「・・・」



その広場では、皆が手を組み、まるで何かを考えているようだった。



「・・・どうしたんだ?そんなに真剣な顔しちゃって・・・」


将軍は苦笑しつつ、ポケットに手を突っ込みながら、歩く。



「やっときましたね・・・」



軍師であるゼンメルが呆れ果てた様子で言う。



「貴様、今までどこへいっていた?」

「ちょいと野暮用・・・でいいか?」


その反応に皆は将軍をにらみつける。




「なにそんなにカリカリしてるんだ?牛乳飲むか?」

「・・・マジな話だ。」



普段はこういうのも笑顔で見ている男爵インドラの反応に将軍は少し肩の力を抜いて、真面目な顔をした。




「で?どうしたんだ?」

「中東で「螺旋の剣」が総力戦を仕掛けてくるらしい。」

「・・・信用できるのか、その情報は。」


将軍が目を細めて言う。




「あぁ。だが・・・今、中東を落とされるわけにはいかない。」

「しかも我々の中東部隊はほとんどが傷ついている状態。これで人間どもが本気をだしてこられたら・・・」



ゲルレレたちにとって、今中東を落とされるわけにはいかない理由がある。

それは中東を落とされれば、「螺旋の剣」の石油確保は確実。


螺旋の剣は武器の数は充実している。

足りないのはその動力源。


すなわち中東を落とされ、石油を確保されれば中東以外に本格的武力衝突をしている本面をすべてドミノ倒し方式で、力押しで落とされる可能性が高い。




「中東は貴様の担当のはずだぞ!!」

「はいはい、そうカッカすんなよ。」


将軍はため息をつきつつに言う。



「だが実際ピンチだ。」

「ピンチは最大のチャンスらしいぜ?」

「つまり?」

「ここで螺旋の剣の連中に痛い思いをさせれば、当分中東方面は安心できるぜ。」


そうはいっても、実際かなり厳しい戦いになりそうだ・・・

と将軍自身ですらそれを理解している。




「この戦の指揮はこの私がとらせてもらいます。将軍のような手ぬるい指揮では人間に我らの強さを知らしめることができません。」


軍師ゼンメルはかけているめがねを光らせて言う。



「我が軍で根拠地のまわりを堅め、カタリナの部隊で攻めます。インドラの部隊は地中海に展開している艦隊への攻撃を任せたいものですね。」

「おいおい、あんたらの参戦は別にいいが、俺の仕事がなくなっちまうぜ?」


するとゼンメルは地図の中東部分をもっている杖で叩き指す。



「螺旋の剣中東方面軍の総力戦ということは旋律の剣も黙ってはいまいでしょう。」

「・・・」

「我々にとって最大の脅威は旋律の剣の介入だ。そこを貴様に任せる。」

「ま、いいだろう。」


将軍は自信満々に言う。


将軍には自信があった。

それは今まで温存してきた地上戦力。

そしてキャンベラーの艦隊。

優秀な部下。


すべてがまだ無傷なままそろっていた。



参謀オレセイは・・・」

「私はここの見張り番でもしてるさ。」


参謀である彼女の反応に軍師ゼンメルは目を細める。




「参謀、あなたはこの事態を正確に把握できてるのですか?中東を落とされるわけには・・・」

「正確に把握できてないのはお前だ、ゼンメル。ここを仮に突き止められたら守るべき戦力は番人セバートだけじゃ苦しいだろう?」

「・・・」



その反応にゼンメルは目を細めつつも、いい返す言葉が見つからない。



「時雨の馬鹿もまたどっかにいっちまったし、センライもセンライでどっかにいってるし・・・総力戦はお前らに任せることにしよう。」



参謀である彼女には彼女なりの考え方がある。

それに本部を守るべき戦力も必要なのはたしかなことである。



「で?大体いつに連中の作戦が指導するのかはわかってるのか?」

「2週間後だ。」

「なんだ、ぜんぜん余裕じゃねぇか。それだけあれば戦力を整えることだってできる。」

「それはあっちもだけどな。」


カタリナの厳しい発言に、将軍は苦笑する。



(2週間もあれば・・・Mk-Ⅱが間に合うか・・・)





会議の終了後、将軍は本部の地下へと向かう。

そこには、無人空中戦艦。

人間たちは「キャンベラー」と呼んでいる兵器が何十隻も並んでいる。



「・・・素晴らしい艦隊ですね。」

「雪風か。」



将軍がそれを眺めながらに歩いていると、後ろから声をかけられる。

後ろには、白銀に光るドレスのような服をきた美女がたっている。



「なんか大変なことになってるみたいですね。お話は聞きました。」

「お前は参加するのか?」

「はい。」

「お前、大丈夫なのか?」

「覚悟はできました、大和が目の前で死んだときに。」



大和とは「龍王の盾エンゲージ・リング」の1人だった男だ。

彼は正面からの対決が得意な男だった。


だが、その男はつい先週に中東にて散った。

大和の部隊の任務は、中東の旋律の剣本部を攻撃するといった、「特攻」だった。

それを雪風の部隊が守る、というのが雪風の任務。


だが、その「特攻」は旋律の剣本部に着く前、迎撃にあい失敗した。

結果、大和が旋律の剣の一流戦闘チーム「フレイバー」と他多数のチームにより討ち取られたのだ。


生き残ったのは、雪風自身とごく少数だけとなってしまった。




「本来は私が死ぬべきだったんです。大和さんは戦闘にいるだけで味方の士気が上昇しました。それに・・・彼が仮に相手の本部まで着いていたら・・・」


彼女は手の拳に力を入れて言う。

おそらく手に力が入っているのは本人は気づいていない。

思い出すだけで苦しい、苦い記憶となっていた。




「やめときな。所詮IFなんてのはIFでしかない。」

「ですが、もし私があそこで守りきれていたら!!私たちの部隊は彼らの護衛だったのに、護衛が生き残るなんて聞いたことありませんよ!」


その彼女の反応に将軍は目を丸くした。

本来彼女はここまで感情的になることはないからだ。




「・・・先ほどゼンメルさんからカタリナさんとは別の攻撃部隊として攻撃してくれ、と言われました。」

「・・・お前、一人で突っ込む気じゃねぇだろうな?」


将軍はここにきて、一番真面目な眼差しで彼女にいった。



「・・・」


だが彼女の返事はなかった。

そのままほんの少しだけ気まずい空気が流れる。


それから将軍は苦笑して言う。

おそらくこの空気に耐え切れなかったのだろう。



「センライは?」

「センライさんなら人間との交渉にいっています。これがダメなら・・・」



そういうと、彼女は自らの腰にかけてあるレイピアのように細い蒼い剣を見つめる。


彼女とセンライは人間との交渉に懸けていた。

幾度となく交渉を続けてきた。


が、答えは毎回同じ。

行きは迎撃部隊に攻撃され・・・

帰り道は追撃部隊に追い回される。


雪風は今回の交渉を最後の交渉にしようと決心していた。

もちろんそう決心させたのは紛れもない大和の死である。




「・・・将軍さんは何のために戦っていますか?」

「俺か?・・・俺は皆を守るために戦ってる。」


将軍は「Mk-Ⅰ」、現在では「雷龍」という名のキャンベラーを見つめつつ言う。



「でしたら仮に人間の大部隊は我々ではなく、我々の家族を狙ってきたらどうします?」

「・・・」


将軍はその答えをいえなかった。


なぜならその答えを言ってしまえば、雪風をとめることができなくなってしまうからだ。



「あなたなら1人ででもいきますよね?・・・私もそれと同じようなものです。」


彼女もまた、「雷龍」を見つめて言う。



「・・・この世に自らが望んで戦っている者なんていませんよ、きっと。ですから・・・仮に私の「幸運」が尽きたら、私の想いのぶんも背負って一刻も早くこの戦争を終わらせてください。」



そういって、彼女は会議室の方向へと歩き出す。

自らの意思を伝え終わった、かのように。



「・・・まるで遺書だな。」


将軍がそういうと、彼女は歩くのをピタリと止めた。


「みたいですね・・・」


雪風は将軍のほうを見ず、ただ背中を向けて言う。



「・・・無理はするなよ?」

「わかっていますよ、それぐらい。2週間という間にだってできることはたくさんあります。」


そういうと、2人は再び逆方向の道へとお互い進み始めた。







射撃訓練場では今しばし、光がもれていた。



「そうそう、そんな感じです。」

「なるほど・・・」



さすがは不死鳥だ。

誰かと違い、教え方が上手くて助かる。



「それで完成です。」

「・・・」


目の前が輝いた。

再び机の上を見ると、流星が消えている。




「これが・・・保存。」



あまり何かがかわった、という感じはしない。

体のなかに「武器が入っている」なんて感じもしない。


ごく普通でいつも通りだ。



「今の逆パターンで銃を出します。」


そういわれ、俺は先ほどの逆パターンをやってみる。


すると、またもや視界がまぶしくなった。

そして気づかぬうちに流星を手に持っていた。




「完成ですね、お疲れ様でした。」



これが初歩の初歩・・・か。

意外と時間がかかってしまっていた。



「もう一度だけ練習しておくか。」


復習というやつである。

何事も重ねて練習しておけば忘れない。



すると突然でていた光が赤色になる。



「なんだ・・・これ?」

「まずい!!力をストップさせてください!!」


不死鳥が珍しく大声を上げた。

しかし、そういったときには遅かった。

赤色の光は、いつしかまぶしすぎるぐらいにだていた。

先ほどの通常の保存のときの光の2倍はでている。


あたり全体が真っ赤になった。



そしてその3秒後に、射撃訓練場のなかで轟音が響いた・・・




「ゴホッゴホッ・・・」


俺が目をあけたとき、射撃訓練場のなかはぐちゃぐちゃな状態になっていた。


射撃したときに破片が撃った人にあたらないようにあるガラスはバラバラに割れていた。

ここに入るためのドアは廊下まで吹き飛んでいた。

近くにあった棚や机はもはや原型をとどめていない。




「やってくれましたね・・・」

「まさかこんなに早く力を暴走させるなんてね・・・」


2人は平然とたっていたが・・・

その様子には呆れともう1つの感情・・・

驚きの感情があった。



「あ~あ・・・直すのが大変そうですね・・・」



不死鳥は苦笑しつつ言う。



「ごめん。」

「いや、大丈夫ですよ、多分。初心者にてよくあることですし。」



その「多分」というのが地味に怖くてならない。



俺はとりあえず立ち上がる。

それから壊れた机の近くの床に吹っ飛んでいる流星を拾う。

流星は無事のようだ。



完全に立ち上がるとあることに気づく。


瓦礫の下から蒼色の光がもれている。




「・・・これは?」


俺は素手で瓦礫をどけていく。



「この光は・・・」


不死鳥や五十嵐ですら首をかしげている。



「とりあえず瓦礫をどけてみるしかないみたいね。」


そう彼女は言うと、瓦礫をどかし始めた。

こんな華奢きゃしゃな体つきなのに、テキパキと重い瓦礫をどかしている。


・・・もしかして俺より力があるんじゃないのだろうか?


なんて彼女の姿に驚きながらも、俺も続いて瓦礫をどかす作業を行う。



「はぁ・・・」


だが、その光のもとはいくら瓦礫をどかしてもでてこない。

光そのものはだんだんと強くはなっているので近づいているのはたしかなのだが・・・




「これだけどかしてもでてこないということは・・・相当光をだしていますね。」

「源力石かしら・・・」


と彼女は言う。


「源力石」ってなんだよ・・・



「源力石とは自らの力を格上げすることが出来る石だ。」


流星が説明してくれた。

何気に流星は良く知っている。




「そうそう、でも1回しか使えないっていうのは不便よね。」

「あぁ、1回使うと石にある力がなくなるから、源力石もただの石になってしまうからな。」



なるほど・・・


ってあれ?



「・・・って、今の誰!?」


五十嵐は瓦礫をどかす作業をやめ、こちらを見る。



「・・・俺はしゃべってないからな。」

「私も同じく。ですが、私の耳にも聞こえました。」



え?

流星って「コミュニティ」とかいう力がなくてもしゃべれるのか?



「そんなことはないはずなのだが・・・我の声が響いているのはたしかなようだな。」

「ま・まさか、その銃!?」


彼女は銃をにらむ。



「あんた、何したの?」

「何もしてねぇよ。」


なぜいつも俺が怒られなければならないのだろうか・・・

俺はつくづく疑問である。




「流星は普段しゃべれないはずなんだけど・・・」

「ということは、あなたには「コミュニティ」の素質があったということですね。」


不死鳥はやはり頭がいい。

すぐに気づいてしまう。



「こんなにも早くスキルを習得するとは・・・」


不死鳥は珍しく真顔で、手を顎にあてる。


確かにそういわれてみればそうだ。

俺はもうすでに「コミュニティ」と「保存」が使えるようになっている。



「それに「探知」も騎士には素質があると思う。」

「探知?」

「普段から人に化けているゲルレレを見つけることができるスキルよ。」


すでに3つか・・・



「ですが探知は前にもいった通り、非常に珍しい力です。やはり彼の力は・・・」


不死鳥がそう言おうとした瞬間である。



「いつまで余をこの瓦礫に閉じ込めるつもりだ?早く瓦礫をどかせ。」



女性のような高い声が聞こえた。

その声は蒼い光がでている方向から聞こえている。

俺たち3人は顔を見合わせる。



とりあえず瓦礫をさらにどけてみると、そこにはまるで「軍刀」のような美しい細剣があった。

その剣は刃が蒼色の光をだしていて、その光は鞘さえも貫通して外にでている非常に強い光だ。



「・・・この剣は・・・」


先ほどの力の暴走、とやらの前にはなかった。



「おぉ、お主が余のご主人様か。」



非常にどうでもいいことなのだが・・・

今、「ご主人様」といわれ、ついついメイドを思い出してしまった・・・



「騎士よ、そんなどうでもいいことを思うでない。」

「だから人の心を読むな!!」


というか・・・

なぜ俺がこの剣の主人なのだろうか。


俺はこんな剣は始めてみた。



「余は主の力によって生み出されたのだ。」



おぉ~、なんかまたとんでも発言が・・・

ホント、世界って広い!!



「冗談ではない。」

「ということは、騎士の力の暴走で生まれた・・・ということか。」



俺の力ってホントなんなんだ?

力を暴走させると、剣まで作り上げてしまうのか・・・?


なんか自分で自分が怖ぇ~よ・・・



「そういうことじゃ、愚民ども!!ちなみに余の主人にはこれから「様」をつけることじゃ!!」

「何、この剣?生意気ね。」



五十嵐は剣相手ににらみつける。



「愚民ども、お主どもが誰のおかげで我ら武器と話せていると思っておる?」



え?

ということは、この剣のおかげなのだろうか?



「その通りじゃ。さすがはご主人様。」

「・・・」


五十嵐は「なんか納得できない」という目で見ている。



「もしそれがホントならすごいことですよ、五十嵐さん。」


そんな五十嵐を見て、不死鳥が言う。



「そうじゃそうじゃ!愚民ども、もっと余を称えよ!!」

「・・・やっぱ生意気ね。」


頼むから喧嘩とかはしないでくれよ・・・

と心から願う俺がいた。


喧嘩とかになったら非常に面倒そうだ。




その後、俺はとりあえず俺の部屋へと戻った。

剣と銃、2つの武器を「保存」して。



しかし、ますます意味わからない方向へといっている。

俺から生み出された剣・・・



「はぁ・・・」


俺は倒れるかのようにベットに寝っ転がった。



やっと今日一日という日が終わろうとしている。


昨日の夜に彼女たちと合い、そのままここまできて・・・

今日一日いろいろとありすぎだ。

頭が痛くなりそうだ。


よくこんな状況でまともにいられるものだ。

こんな状況で発狂しない俺がすごいとすら思えてしまう。



あの蒼剣の名前を何にするべきか・・・

考えておかねばならない。



「・・・」



考えてみれば、俺の武器は2つとなった。

が、俺はこの2つを使いこなせるのだろうか?


戦いの最中にも保存を繰り返して、接近戦は蒼剣。

遠距離戦は流星とするか・・・


いや、もっと手っ取り早いのは、片手に剣、片手に銃というスタイルをとることだが・・・

現在、流星は両手で撃つだけで肩が死ぬそうになる。



「・・・無理だ・・・」


そう思うとますます萎える・・・



たしかに、こういう「SF」的な戦士系なヒーロー的存在になることを憧れていた歳もあった。

だが歳を重ねるごとに「そんなものはいない」という現実を知った。


そんな状況下で、こんな状況になって戦う、と俺が決めたとき・・・

俺は地味に「騎士」らしく格好良く戦うイメージがあった。


が、この状況はなんなんなのだろうか・・・

「銃」という地点で騎士でもなんでもない。


しかも今では「片手に銃、片手に剣」といった、オールマイティー?

というか、なんというか、我流なスタイルになりかけている。


もはや俺の理想からかけ離れすぎた。

それはもはや「騎士」ではなく、「海賊」である・・・



「・・・寝る。」



とりあえず寝ればすっきりするだろう。

うん、してもらわないと逆に困る。


俺は明かりを暗くした。

今日という日は、珍しくなかなか寝付けなかった・・・








中東では現在も戦いが行われていた。


銃撃戦、轟音、爆音が辺りに絶えず響き渡る。



「行け行け行け!!」


軍用トラックから兵士たちが降りて、奥のほうに見える市街地へと進んでいく。

市街地には、すでに対多国籍軍勢力の人間が至る所で待ち伏せている。


そんな市街地を戦闘ヘリコプターが空から掃射して蹴散らしていく。


1機のヘリがミサイルを放ち、それは比較的高めの建物に当たった。

ちょうどその瞬間だった。



・・・風がやんだ。




「・・・きたか。」



通常の攻撃ヘリや戦車、人ですらその場にとまっている。

ただ一部の兵や車両のみが動いている。



空を見え上げると、太陽の方向から羽根のはえた高機動ゲルレレピュートが大群でやってきていた。


動くことのできる者たちは銃を撃ち続けるが、相手の数が多すぎる。

距離をつめられ、やがてピュート特有の長く鋭い爪に兵が引き裂かれていく。




「中佐!!数で明らかに劣勢です、ここは撤退命令を!!」

「くっ・・・」


この隊の隊長と思われる男は辺りを見渡すが、どう見ても劣勢。

勝ち目なんてあるわけがない。

至る所で兵士たちが倒れていく。



「ここは一旦撤退する!!」


そう彼が無線を使った瞬間である。



「待てよ。」

「ん?」


中佐が振り返るとそこには黒いマントをした男が1人立っている。


その男はゆっくりと赤色に光る剣を抜いていく。



「せっかく男爵インドラがピュートの1個戦隊を貸してくれたんだ。あいつらが雑魚の気をひいているうちに、楽しい勝負をしようじゃないか。」



彼がそういい終わった瞬間に、剣もすべて抜き終わった。



「撃て!!」



その剣を抜き終えたと同時に戦車砲が火を噴いた。

彼のいた場は一瞬で黒煙が立ち、見えなくなってしまった。



だがやがて黒煙が消えてくると、ゆっくりと歩いてくる影が見えた。

黒煙にまぎれながらも、剣の赤い光が鮮やかに輝いている。




「なっ!?」


その光景に誰もが驚く。

誰もが確実にあたった、と思える弾だった。



「この俺を誰だと思っているんだ?伊達に一匹狼は気取ってねぇぜ?」




そういい終わると彼は消えた。

後ろを向いてみれば戦車が見事に戦車砲だけ吹き飛ばされて、車体だけが無残に残っている状況があった。



「!?」



その光景を見たときには中佐のまわりの兵士たちは赤色の液体を首から大量にふきだして倒れていた。



そして中佐がようやく戦車が破壊されたということを脳で理解したとき・・・

首から上は宙へと舞っていた。




「・・・」


彼はあたりを一掃し終わると、ゆっくりと歩き出す。


司令を失った兵たちは降参をした。


すると、彼は降伏した兵に捨てた銃を戻した。



「降伏は許さん、抵抗しろ。」

「なっ!?」


兵たちは皆、驚く。

そして最初の1人が銃をとった瞬間に彼はまた剣を抜き、殺戮を繰り返した。



・・・彼女の名前は時雨。

龍王の盾エンゲージ・リング」の1人。


彼は夢にも思わないだろう。

自らの腕の上達のため、もっとも戦いの激しい中東にて特訓していた。

その中東で2週間後に、ゲルレレ中東方面軍と人間たちの中東方面部隊の総力戦が行われるということに。


・・・中東総力戦まであと2週間。




                       「剣と銃と騎士?」  完

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