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俺の人生は雨のち雨!?  作者: へたれ度100%
第1章 俺の人生が180度回転!?
7/12

相棒

果てのないかのような海。

周りには何もなく、ただ青色の空と海だけが広がっている。


ここは太平洋。


海の水の波は、どこかの彫刻に書かれたものかのようにとまってしまっている。


当然といえば当然だ。

何しろ時間がとまってしまっている。



とまっているはずの波が、崩れていく。

彫刻のような波を、崩して進んでいく船が3隻。



「総員対空戦闘用意!!」


この広い海で、波の音すらしない、静か過ぎる空間のなかで3隻の船は1列になり進んでいる。

そんな時に、突然先頭の船からアラームがなった。


先頭の船はアラームを鳴らしつつ、先ほどより速度を上げる。

後続の船はそれにあわせて、同じく速度を上げ、攻撃態勢を整える。



「直ちに、「螺旋の剣」本部へと報告せよ。」


先頭の船の艦長は静かにそういった。


先頭の船の艦橋は、先ほどまで静かだったのにもかかわらず・・・

今は騒がしくなっている。



「こちら英国海軍所属第34海上警備隊。本部、応答を願います。」


そこの無線兵と思われる男が無線を使い、本部へと焦りつつ連絡をとっている。



焦るのも無理はない。

この時間がとまっているはずの空間で、こちらに急速に向かってきている巨大な影をこの艦隊の旗艦である駆逐艦「バーミンガム」のレーダーが捉えたからである。


もちろん敵味方識別装置も、味方の反応は示していない。




対空ミサイルシー・ダート用意!!」


旗艦バーミンガムに続き、後続の艦船も素早く攻撃態勢に入る。



「全艦攻撃態勢よし。」

「全艦一斉発射開始!!」


その命令が出た瞬間に、各艦の艦上が一斉に光った。

凄まじい轟音と同時にミサイルからの白煙が周囲を覆った。








ここに1つの無人島がある。

何もなく、木々が生い茂っている、名前もない無人島である。

大きさは無人島のなかでは「大きい」という部類に入るだろう。


遠くの海を見てみれば、大量の油を積んだタンカーが海を進んでいる。

空は晴れていて、風もあり、非常に気持ちの良い空。


そんな無人島に1人の人らしき人が歩いていた。



「・・・」



無言で歩きつつ、何かを探しているようだった。



「・・・」


やがて彼は無言のまま、1つの木の前でとまった。


それからその木に乱暴に蹴りをいれた。

すると、地面がスライドされ畳1畳ほどの大きさの空間ができていく。


スライドされ、ポッカリあいた地面には階段があった。

その階段を彼はゆっくり下っていく。



「・・・」


細く暗い道。

足音が1歩1歩響く。


電球のような光を放つものもないため、そこはまったくの闇の世界。

ふと気を抜けば常人なら階段を踏み外してしまいそうである。


やがて、目の前に光が見える。



「これは将軍閣下!」


光があけると、そこは無人島の地下とは思えないほどの広さを誇る倉庫のような空間があった。



「よぅ。作業は進んでいるか?」



そこには多くの人があるものを作っている。

形的に「船」だろう。

・・・巨大な船だ。


その巨大な船体の隣では、今後取り付ける予定らしい重武装兵器が山のように積み重なっている。

その光景はまるで「ごみ山」にすら見えてしまう。




そこにいる人たちは「人」ではない。

「人」の形をしたゲルレレ。

本来のゲルレレの体格となると、力を周囲に放ち、「旋律の剣」に探知される可能性があるため、人となり力をださないようにしているのだ。




「はい。すでにMk-Ⅱは形は完成しました。」

「こいつが・・・Mk-Ⅲ?」

「はい。Mk-Ⅲよりさらに重装備・頑丈に作り上げる予定ですが・・・思う以上に時間がかかってます。」



「将軍」と話している男は白衣をきている男。

めがねをかけ、マスクをしている。




「クラウス、Mk-ⅡとMK-Ⅲの違いはそれだけか?」


男はゲルレレのなかでも高い知識を持つ男・・・

クラウス。



「いえいえ、Mk-Ⅱは単独行動可能の戦闘空母。Mk-Ⅲは戦闘のみのために作られる大戦艦です。」


そこにもう1人、白衣をきた男がやってくる。



「ジュノール博士、これはこれは。」


将軍は軽く会釈をする。


ジュノールと呼ばれる男は別に階級が高いわけでもない。

むしろ「龍」のなかでは、将軍はベスト3には入る。



「よしてください。私はあなた方に脅迫されて入ったのではない。自らの意思で入ったのですから。」


ジュノール、という名の博士はここの最高責任者でもない。

最高責任者は「クラウス」である。


だが、この基地でNo,2である。

そして、唯一本物の「人間」である。



「お前のおかげで人間の技術を理解し、利用することができているのだ。」

「お役に立てているのなら光栄です。ですが、私は「人間」としてではなく、あくまであなたの部下として扱われたいのです。」


彼もまた、大天才と呼ばれるにふさわしい男である。

自らで興味があるものを分解し、徹底的に検証し、より効率の良い物を作り上げる。

それが彼の生きがいである。


そして、彼の一番の自信作は、「無人戦闘兵器」。

ヘリ・戦闘機・戦車など多様なスタイルで、兵器たちは自らで考え走り攻撃する戦闘兵器。

これらは米国の無人偵察機「プレデター」「グローバルホーク」などの兵器の分解から改良を加えて完成したものである。




「ふむ・・・」



将軍とよばれる男はしばし考える。

すると、ジュノールは苦笑して言う。



「でしたら、今度は「42型駆逐艦」を鹵獲してもらえますか?あの船には若干興味がありまして・・・」

「そりゃぁ、残念。昨日ちょうど沈めちまった・・・」

「そうですか・・・」



その答えに、ジュノールは少し残念そうな顔をして答える。



「ま、今度見かけたら持ってきてやる。ちょうどいい土産だろ。」



将軍はそういい、苦笑する。

それから、Mk-Ⅱに今度取り付ける予定の武装の山を見て、クラウスに言う。




「Mk-Ⅱは武装がだいぶかわったな。」

「はい、今回は私が基本的に作り上げましたから。ゲルレレの技術を最大につぎ込みました。」


ちなみに、Mk-Ⅰ、現在では「雷龍」と呼ばれている戦艦は、一定の技術以外は、ジュノールが完成させた。



「Mk-Ⅲは我々2人で共同開発中ですが、なかなかうまくいかなくて・・・」


クラウスは困り顔で将軍に説明する。


本来クラウスとジュノールはそこまで仲が良いわけではない。

所詮は人とゲルレレ。


故にグループを作り、対立相手より、より良いものを作ろうとしてきた。

その結果が「雷龍」および「Mk-Ⅱ」である。


だが、この戦艦の完成は両者を両者ともに驚かせたところが多く・・・

結果、2人のグループで協力し合い、「Mk-Ⅲ」を完成させる、という結論に至ったようである。




「なぁに、時間なんてかかったっていいさ。まだまだ時間には余裕がある。」


将軍は、Mk-Ⅱの船体を見上げながらに言う。

それから目を細めて白衣の男に問う。



「それで?あとどれくらいかかりそうなんだ?」

「Mk-Ⅱの兵装開発が予想以上に遅れてしまいまして、まだだいぶかかると思われます・・・」

「まぁ、焦ることはない。まだ雷龍を旗艦とすることで事足りている。」



将軍は静かに言う。



「艦隊は今、どこに?」

「本部の倉庫に待機中だ。」



本部の倉庫には船らしき形のものが何十隻単位でならんでいた。

しかしそれらの船は決して単なる船ではない。

「戦闘用」の船であり、同時に人間が使う船とは異なる船である。

いわば「空中戦艦」とでも言おうか・・・

空中を飛び、空から強力な主砲を浴びせるのだ。


また人が使う船は何人もの人が連携して使うものだが・・・

彼らが使う船は「船」そのものが生きている。



「旋律の剣」では「船型」のゲルレレとして、恐れられている。

理由は2つ。

船型は普通のゲルレレにくらべて、弾幕をはるため近づくのが困難である。

すなわち「剣」や「槍」では苦しいものがある。

また空中を移動するため、機動力にも優れていた。


もう1つの理由はその「船型」は決して単独で動かないということ。

基本は、最低でも3隻はかたまって動いているため、手も足もでないのだ。




「昨日は雷龍1隻で「螺旋の剣」の護衛艦3隻を沈めた。」


それが先ほどジュノールが求めた「42型駆逐艦」、バーミンガムを旗艦とした英国海上警備艦隊だった。




「螺旋の剣」は「旋律の剣」とは異なる組織である。

「旋律の剣」は「リクルート」とよばれる力をもつ人材を扱う組織。

「リクルート」そのものが珍しいため、戦力も多くはない。


「螺旋の剣」は何の力も持たない人間たちの組織。

表向きには傭兵会社であるが・・・実際は「対ゲルレレ討伐組織」である。

「旋律の剣」の干渉をうけた人々が作り上げた組織。


そして各国の軍隊のなかにも少しずつ「螺旋の剣」の者たちが紛れ込んでいる。

というより、軍を指揮する上級士官に「螺旋の剣」の者たちがいて、その仕官の指揮する部隊は「螺旋の剣」の命令下にあるといえる。

故に各国は知らずに、上級仕官にいわれ資源を「螺旋の剣」に援助している。



普通の人間でも「旋律の剣」の干渉をうければ時間がとまっていても動けるようになる。


「螺旋の剣」は特殊な力はもたないが、兵器をもつ。

もちろん普通の人間レベルの兵器で、「レールガン」や「空中戦艦」等は使えない。

だが、戦力も多い。




「それはそれは・・・我らとてうれしいことですが、「旋律の剣」の連中も喜んでいるのでは?」

「かもな。」


現在は「旋律の剣」と「螺旋の剣」は対立中。

武力では対立はしていないが、仲はよろしくない。


「対ゲルレレ組織」は2ついらない。

そんなわけで、にらみ合いが続いている。



「雷龍はとりあえず素晴らしい出来だといえる。」

「一刻も早くMk-Ⅲを完成してみせます。」

「あぁ。」


そういうと彼は背を向け、階段に向かう。

が、脚をとめた。




「あ、そうだ。この基地の砲台・・・バレバレだぞ。」


一般の人間には見えないだろう。

細工がしてある。


だが・・・

人間の異質、「リクルート」の力をもつ人からみれば、簡単に見つかるつくりをしていた。



「それに砲台も少なすぎる。・・・ここは俺にとって要所だ。連中におとされたら困る。」

「承知しました。後ほど改善いたします。」


その答えが気に食わなかったのか、将軍は目を細める。



「Mk-Ⅲはあとでいい。すぐにやれ。」

「承知しました。」


そういうと将軍はまた静かに階段を上っていくのだった。











さて、基地司令官である竜胆と2回目の話をして3時間ほどたった。

俺は竜胆司令から、正式な彼らの部隊への所属命令が下った。



そして、今、俺は「彼ら」とこのくそわかりにくい基地を歩いている。



「とりあえず戦う、とはいっても武器がなければ困りますね。」



というわけで、武器庫に向かっているらしい。



「精密診断室での検査の結果、お前は銃が得意らしいからな、好きな銃を選べ。」


と五十嵐はこのバカでかい武器庫に俺をつれてきて言うが・・・

正直困ったことに俺は銃の知識なんて全くない。


強いて言えば、メジャーなもののしかないわけだが・・・

どうせ「特殊コーティング」とか「対ゲルレレ用弾」とかいうもののせいで、その知識は役に立ちそうにない。


とりあえず俺は辺りを見渡し、少し歩いてみる。



先ほどもきて思ったが、やはり武器の量が尋常ではない。

同じ形の武器まで大量に棚に並べられている。

日本警察は何をやっているのだか・・・

これだけ武器があれば闇商売だってできてしまいそうである。



俺はそんな光景に思わずキョトンとしてしまうしかない。



だが、彼らはその膨大な武器の山を見ても、フツーにしている。

・・・慣れとは怖いものである。



歩いていると、1つの銃が目にとまった。



「S&W M29」


不死鳥に先ほど進められた拳銃だ。




「おっ!?どうした?気になる銃でも見つけたか?」


島風がこちらにやってくる。

そして、俺が見ていた銃を見て、今度は島風がキョトンとした。



「そいつは・・・S&Wじゃねぇか・・・」

「あぁ。さっき不死鳥に進められた銃だよ。」

「おいおい、大丈夫か?回転式拳銃(リボルバー)は反動がとんでもなく強いんだぜ?」


それは先ほど五十嵐から説明された。

弾も6発しか入らない。


が、とても威力のある銃だときいている。




「軽いみたいだからね。」


どこぞやのアサルトライフルはとんでもなく重たくなっていたからな・・・



「だけどよ、弾数の多いオートマチック拳銃にしたらどうだ?」

「う~ん・・・」



なんて考え込みながら、なんとなく銃を持ってみた。


すると、なんと説明すればいいのだろうか・・・

この個人的にものすごく納得できるというのだろうか・・・

なんとなくこの銃が俺に一番適しているように思えるような感情が湧き上がる。



こういうのを使って、いきなりめちゃくちゃすごい力を発動したら、それを世の中では・・・

「ご都合主義」と呼ぶのかもしれない。

いや、もうこの感情だけで「ご都合主義」なのだろうか・・・


が、そんな「ご都合主義」万歳的流れが来るはずもない。




「うぉ~・・・肩が・・・」


とりあえず、俺はこのしっくりと来た銃をとりあえず持ち、島風の反対を振り切り、射撃訓練場までやってきたわけなのだが・・・


どういうわけか、1発撃っただけで、肩がイカレそうな状況になっている。

たしかに反動は強いといったが、ここまでとは想定していなかった。


しかも的からだいぶズレたところに弾が命中している。


やはりカッコつけて片手で撃ったのがまずかったのだろうか・・・

すでに銃を持っている右手・・・というか右肩は「お前はすでに死んでいる」状態となっている。



「だからいったのに・・・」



島風は呆れ顔で言う。




「初めてなのに片手で撃つなんて論外ね。」


五十嵐も呆れ呆れに言う。



「いいじゃねぇ~かよ?だって、西部劇とかだと皆片手で撃ってるし・・・」

「あ~、あれはご都合主義ですから。」



おいおい・・・

この非日常のほうが俺はよっぽどご都合主義に思えてならないぞ。



「あれは主人公が必ず勝つと決まっていますが、現実世界はあなたが主役と決まっているわけでもありませんし、仮に主役でも生きていけるかはわかりません。」


俺の夢を見事にぶち壊す言葉をありがとうございます。



今度は反省して、両手で銃を握り、的を狙う。



「今度こそ!!」


バンッと、どこかのゲームや映画で聞いたような音が周囲に響いた。

俺の耳は、キ~ンとこれまたイカレそうになっている。


それから少しして、我にかえってみると・・・



「ぐぁぁぁぁぁぁぁ!!」


急に肩に痛みが!!


今度は右肩だけじゃない!!

左肩まで「お前はすでに死んでいる」状態となってしまった!!



「あ~あ・・・」



五十嵐はその光景を見て、またもや呆れる。



「お前、バカだな・・・」


と島風も再び呆れている。



「まっ、バカは好きだけどな!!」


そういって島風は笑うが・・・


それはフォローなのだろうか?

仮にフォローなのなら、まったく役にたっていない。



「やっぱ違う銃にしたほうがいいんじゃねぇか?」

「う~ん・・・」



なんてことは思うが、どうもこの銃がやはりしっくりくる。



「気に入っちゃってるみたいだな・・・」

「とりあえず銃なんて慣れよ、慣れ。」



そうだよな、慣れだよな!!



「だから今日はここでずっと弾を撃ち続けていること。弾はここにおいておくから。」



はいぃぃぃぃぃ~!?


すでに2発撃っただけで肩が死にそうなのですが・・・



「お前、俺の肩に死ねというのか?」

「銃なんて慣れよ、慣れ。」


それはさっききいたし・・・


その前に俺の肩はどうなるんだし!!



「ま、頑張ってください。私も少し用事があるので、失礼させていただきます。用事が済んだらまたきますので。」


そういって、不死鳥は部屋を出ていった。



・・・ん?

私「も」?



「・・・」


よく見てみれば、この部屋に残っているのは俺だけだった・・・



「あの・・・1ついっていいですか?」


と俺は誰もいない部屋で、一人さびしく言う。

この際、誰もいないんだし、ダメなんていわれないだろ・・・



「この俺1人でどうしろと言うんですかぁぁぁぁぁ!?」







その頃、基地司令業務室では・・・



「司令、情報部からの報告では、昨日に「螺旋の剣」の船が3隻太平洋で消息を絶っているようです。」


この基地の副司令官「大蔵」は紙を1枚持ち、基地司令官である竜胆に報告する。




「ふむ・・・沈められたのかね?」

「その可能性が高いかと。」


そう大蔵がいうと、竜胆は椅子に深く座りなおした。



「詳しく報告を。」

「その艦隊は、「42型駆逐艦」バーミンガムを旗艦としていた英国海軍第4艦隊所属の3隻と思われます。」

「・・・第4艦隊・・・か。」



第4艦隊といえば、最近に組み直された艦隊である。


中東で勃発している紛争で・・・

その紛争だけのために組まれた米国中東艦隊とともに行動している艦隊である。




「無線中には「第34海上警備隊」といっていたようです。報告では本部への無線報告途中にきれた・・とか。後に検証してみたところ、3隻同時にレーダーから消滅していました。」

「警備中に、しかも一瞬でやられた・・・か。螺旋の剣の連中も気を抜きすぎだな。」


竜胆は、まるで「螺旋の剣」がやられたのをあざ笑うかのように言う。



「興味深いのはここからです。レーダーに巨大な影が映った、と本部に連絡しています。」

「巨大な影?」


竜胆は目を細める。



「それは、羽根のはえた高機動ゲルレレピュートの群れでもないらしいと。」

「・・・船型ゲルレレキャンベラーかね?」

「はい、おそらくは。」



その報告を聞き、さらに竜胆は目を細める。



(巨大な影、のみとなると相手は単体。・・・いくらキャンベラーが相手とはいえ、そんなに簡単に沈められるほど螺旋の剣の船はヤワなのか・・・)


竜胆は、この報告に少し寒気を覚えた。







再び射撃訓練場。



「くそ・・・」


文句を言いつつも、騎士は銃を撃ち続けていた。



「・・・」


カチッという音がする。

弾切れである。



「・・・」


無言で弾を込めつつ、騎士はこんなことを思う。


(俺の最も苦手なゲームがガンシューティングだってのに・・・なんてビンボークジだよ。少しは俺の人生も楽になれよ・・・)



よく考えてみれば、騎士が拳銃なんて道理はどこにもない。

騎士といえば、刀だ。


(俺も刀がよかったなぁ・・・)


刀なら、銃と違って撃ったときの反動もなければ、そのものも銃より軽い。



(俺の名前・・・射手に変えるかなぁ・・・)


ちなみに「射手」とかいて、ガンナーと読む!!



(いや、射手だと弓だから、この際「砲手」にするか・・・)


ちなみに「砲手」とかいて、ガンナーと読む!!

・・・先ほどとかわっていない。



「その名前はあまりに苦しいぞ・・・」

「だよなぁ~・・・かとすると、何がいいと思う?」

「ふむ、我はこのままの名前で良いと思うが・・・」

「う~・・・って、はっ!?」



さりげなく、会話が進むが・・・

俺は誰と話していたのだろうか!?


まわりを見渡しても、人なんていない。



(ついに幻聴まで・・・やっぱ俺、どうかしてるぜ・・・)


「そうでもない。こういう状況になったら、フツーはお前みたいに冷静にいられるほうがすごい。」

「・・・」



あの~・・・どちら様ですか?

ここには透明になれる人までいるのだろうか・・・



「我はS&W M29 製造番号20,537。」

「・・・」



俺はおそるおそる銃を見てみるが・・・

銃が口をあけてしゃべっているようには見えない。

というか、この銃は正常のままである。



「・・・なぁ、悪ふざけはやめてくれないか?」

「悪ふざけなどしていない。我はお前が今、右手で持っている銃だ。」



なんか、どんどんありえない方向に進んでいる気がするのは俺だけだろうか?



「・・・」

「信じてないな?」

「なんでわかるんだよ?」

「お前の心ぐらい読み取れる。」



・・・プライベート終了のお知らせが俺のなかで鳴り響いた。



「ま、そんなガッカリすることはない。」

「いや、あるから!!仮にお前が銃だとしてなんでお前にそんな機能があるんだよ!!」

「そういう仕様なんだから仕方がなかろう。」


そういう仕様ってなんだよ!!

ホント、誰だよ、こんな仕様考えてくれたのは!!!




「我はお前の相棒となるべき銃だ。」



銃って言い張るんだな・・・



「本来、普通のリクルートの力の持ち主では我と会話することはできない。」

「・・・は?」


ならなんで俺はできたんだ?



「それは、お前には特殊な力があるからだ。・・・ここでは「コミュニティー」と呼ばれている力だ。」



・・・頼むから人の心を読むのはやめてくれ。



「そういう仕様なんだから仕方なかろう。」


またかよ・・・

というか、その「そういう仕様」というのが、俺は気に食わんのだが・・・



「だが、実際そういう仕様なのだ。諦めろ。」


ま、この銃本人(?)がそういうなら、諦めるしかないようである。



「おそらくあの島風という男もお前と同じ力をもっておる。」

「・・・」



ということは・・・

あの愛剣、「神風」と会話できるということか。



「お前も、同じ力をもっているのだから力の周波をあわせれば会話できる。」


周波って俺は機械かよ・・・


もういっていることが飛び抜けすぎていて、びっくりしたくてもできなくなってきた・・・

こういうのを慣れというのだろうか。



「ちなみに周波をあわせれば、どこにいても会話できるようになる。」

「そうですかい。」


そいつはSUGEEEEE!!

という反応をしたほうがよかったのだろうか・・・



「いや、別にどちらでも構わない。」

「そりゃど~も。」

「にしても、お前は我がしゃべるということに驚かないのだな?」


いや、信じていないだけだ。


だが、今はもう信じてやってもいいぜ。

何しろありえないことがまわりでおきすぎている。



「それが慣れの第一歩だというのだ。」

「・・・」


恐ろしいことだ・・・

こうして違和感はなくなってくのか・・・



「で?なんでお前はすぐにしゃべらなかった?」

「我を使いこなすに十分な器か試していた。」


くそ、たかが武器が偉そうに・・・



「ふむ、減点10点・・・と。」

「減点するなぁ~!!人の心を読むなぁ~!!!」


と言うか、点数式なのか・・・



「ま、結果は不合格だが。」


なら、減点しても意味ねぇ~じゃねぇか・・・



「が、何事にも慣れというものが必要。我を扱うにも・・・だ。そして、それは今後慣れていけばいい。」


おいおい、なんだよそりゃぁ・・・

結局減点とか不合格とかまったく意味ないじゃん・・・



「主に気があれば、我を扱ってみないか?」

「・・・」


俺はこの銃を握ったとき、体内でものすごく熱くなるような・・・

妙な力を感じた。


そして、その銃と今、こうして話している。


さらに俺は今後扱う銃をまだ決めてはいない!!


なら・・・結果は決まっている。



「いいだろう。」


少しでも使っている銃のほうがいいはずだ。



「・・・我は主のことを単に「主人」と呼ぼう。」

「俺はあんたのことをなんて呼べばいい?」

「S&W M29 製造番号20,537。」



長い!!

そんな数字が覚えられるわけもない。




「一応我を作り出した親がつけた名だ。」

「・・・」


だからってそれは大変だな、覚えるのも呼ぶのも。



「だがこれからは主人が我の主だ。だから主の・・・」

「ストップ、ストップ!!その「主」とか「主人」とかどうも慣れねぇ・・・」

「何事も慣れだ。」


いや、にしたって違和感がある。



「俺のことは単に「騎士」と呼んでくれ。」

「主がそういうなら、そう呼ぼう。」


意外と話のわかるやつだ。



「お前のことの呼び名はとりあえず考えとくさ。・・・とりあえず今は特訓だ。」



こうして、俺は今後、ともに戦っていく一番の「相棒」と出会った。




    

                         「相棒」 完

あ~、一言いいですか?

「英国海軍、ごめんなさい」(特にバーミンガム)



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