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俺の人生は雨のち雨!?  作者: へたれ度100%
第2章 初陣は総力戦?すでに死亡フラグなんですが!?
10/12

中東遠征命令?

ここは関東司令部の射撃訓練場。

関東の「司令部」だというのに、練習している人はほとんどいない。


いや、1人だけ練習をしている人がいる・・・ことにはいる。

その人はただ一人でせっせと弾を込め、ひたすらに的を狙い、そして撃つ。

・・・ただし当たらない。



「・・・」



彼は少し息を切らせて、再び回転式拳銃リボルバーに弾を1発ずつ込めていく。



「ご主人様、本日はもうやめておいたほうがよろしいでは?」

「あともう少し・・・」

「そう言って、もう7回目の装填になるぞ?あるじであるお前が壊れてはどうにもならん。」



俺の名前は、西野騎士。

「騎士」って名前なのに、目の前にはレイピアのように細い剣と・・・

「拳銃」がある。



「そうじゃそうじゃ、それより余にも名前をそろそろ考えてくれないかのぅ?」



・・・人が特訓中だというのに、このうるさい連中が・・・

俺の相棒たち、となるわけだ。


俺のとある特殊能力?

そんな感じらしきもののおかげで武器としゃべれてしまっている現状がここにある。



こんなの日常茶飯事だ。

最初は驚いたり否定する考えを持っていたけど、今じゃそんな感情なくなった。

何をみても、「あ、そうなんだ」と理解するぐらいだ。


何しろ、今のこの世界は「なんでもあり」の世界なのだから・・・



だから武器がしゃべる、なんてのはちょろ口のことなのだ。

この世界には「時間をとめる」というチート技を実際世界で使ったり・・・

風よりも早く走れる、とか「陸上選手になればいいんじゃね?」と思えるぐらい足の速い奴もいれば・・・

はたまた怪我をしてもすぐに治っちまう奴だっている。


それどころか、ここ最近この司令部を観察していると、ホントにこれが現実世界なのか?

と疑いたくなることばかりが起こっている。



極端な話、びっくりすることに疲れたのだ。

・・・だから普通に受け流すしかない。

どうせ受け入れるしか選択肢はないわけだし。


・・・きっと俺は今後何をみても驚かないだろう。

ここですでに最高潮なものを見ているのだから。




「ふぅ・・・」



ようやく弾を込め終わり、銃を持つ。

この回転式拳銃の正式名称は「S&W M29 製造番号20,537」らしい。

長ったらしいので、「流星」という名で俺は呼んでいる。



実際この拳銃の使いこなしはかなり難しいと思われる。

ここにきて、すでに1週間とちょっと。

初日から、俺の力が暴走した、とかで剣が出来た。

なんて出来事もあった。



そっから1週間とちょっとだ。

家族を失った悲しみの傷はまだ完全には癒えてはいない。

だが何もしないよりは何かをしたい。


俺はとりあえずこの銃をいち早く使いこなせるようにするため、日々特訓している。

・・・のだが・・・




「うぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・肩が・・・」



撃った衝撃・・・すなわち反動がでかい!

とにかくでかい!


ここ1週間、とにかく慣れるために銃を撃ちまくってはきているが・・・

なかなか反動に慣れられない。



しかも・・・



「・・・下手くそ。」



後ろで腕を組んで、俺の特訓を「キリッ」とにらみつける女性が一人。

五十嵐、俺の所属するチームのリーダーだ。


さらに彼女の後ろに、男性が2人。

島風と不死鳥だ。



彼女は俺の撃った、的外れの位置に弾が着弾していると思われる穴があいているところあたりを指差して言う。



「あんた、この1週間ぜんぜん進歩してないじゃない!!やる気あるの!?」



彼女の逆鱗にふれて、怒られることも珍しいことではない。

ここ1週間ずっと怒鳴られっぱなしだ。


後ろでは、呆れ顔をする不死鳥と、俺が怒られているのをみてニヤニヤと静かに笑う島風。



「島風!あんたも笑ってないでなんか言いなさいよ!!」



そしてその怒りは島風を巻き込む。

・・・ご愁傷様です。



しかしその彼女の怒りとは裏腹に、いまだに笑みをうかべている島風。

苦笑しながら彼は言う。



「ま、しょうがないんじゃねぇの?拳銃なんて実際撃ったことなかったんだろうし・・・」



そして今度は不死鳥がノートパソコンを開いて、画面を見つめつつ言う。



「今の弾の着弾点、昨日より0,03mm縮まっています。これも慣れかもしれませんね。」



・・・なんか逆に悲しくなってきた・・・

0,03ってどんだけちょっとなんだよ・・・



そんな地味な萎えに心を蝕まれそうになりつつも、再び銃に弾を入れていく。





そんなこんなをしていると、放送が入った。

ノイズも入る。

・・・だいぶ古いものなのだろうか・・・

おいおい、関東司令部、マジで頼むぜ・・・



「総員至急集会場にて集合。」



いきなりそんな命令が入る。

・・・俺としてはフツーだったが、後ろ3人は驚いていた。




「・・・総員?ついに人手不足も山を越え、関東司令部も終了のお知らせがやってきたか?」



島風が肩をまわしつつ言う。


ま、そもそも連中ゲルレレが1体や2体なら総員なんて集められるわけない。

人手不足といっても、そこまで人がいないわけでもない。



「それも“至急”よ?なんか重要なことかしらね・・・」

「ふむ・・・とりあえず行って見ましょうか。そこでわかることでしょうし。」





そんなこんなで基地の中心にあるといわれている集会場へとやってきた。

・・・俺は方向音痴なので、基地の中心にあるといわれてもわからんが・・・

とりあえず中心にあるらしい。



そこはたしかに広く、この基地にいる全員が集まっても余裕ができる、安心の広さだ。

・・・1000人集まっても大丈夫☆



一番前には、拡声器を使ってしゃべろうとしている竜胆基地司令と、その隣には大蔵副基地司令が大量のプリントをもってたっている。



皆は綺麗に列をそろえて「気をつけ!」の姿勢をしてたっているあたりをみると、小学校の運動会と大してかわらない光景がここにある。



「皆集まったようだな。・・・それではこれより緊急集会を始める。」



・・・誰かがやらかしたのだろうか・・・?

なんだか妙な空気だ。



「長ったらしいのが嫌いなので、一言でまとめる。」



その言葉に皆が首を傾げる。

何なのだろうか・・・?




「皆には今日の午後には中東司令部へと遠征にいってもらう。」

「なっ!?」

「遠征というよりは“増援”といったほうが正しいのかもしれないな。」



中東・・・

中東って、あの世界地図とかにある中東か!?



しかしそれをきいても、驚きの表情はみせるが口には出さないまわりをみていると・・・

さすがに慣れているのかな、とか思う。



「諸君らも知っての通り、中東では我が同志たちが勇敢にゲルレレに対して攻撃を行っているが依然として敵の守備陣は強固で落ちない。さらに現在大規模なゲルレレの戦力集中もここ、中東で起こっている。」



つまり連中が集まっている分、ちょびちょび叩くよりは一気に畳み掛けるほうが良い、という考えか。


しかしそれはこちらにも大きな被害がでる可能性が高い。

・・・負ければなおさらだ。


それを承知で、関東司令部からほとんどの戦力を中東に送る、というのか・・・?







その頃、アメリカに本社を構える・・・

表向きは傭兵会社の肩書きを持つ、ゲルレレ討伐のもう1つの組織「螺旋の剣」本社でも多くの将兵が集められていた。

傭兵会社といっても、この会社の情報範囲は広く、正規軍を動かせる者も何人か混じっている。



一番目の前の席には堂々と足を組んで座っている男性、この組織の最高責任者である「アーネスト・P・ワクレー」がいる。


その後ろにはこの傭兵会社の「エース」といえる部隊の隊長や1個師団の師団長など傭兵会社の規模をこえたレベルの人物たちが非常に多く集まっていた。



「皆さんを集めたのは他でもありません。」



会議はちょうど今、始まったばかりのようだ。




「現在中東全域で、ゲルレレと我が部隊が交戦をしていますが押され気味という報告が入っています。連中は石油関連施設さえも手中におさめている今、我が方の中東部にての車両の燃料や弾薬もわずか。このままでは中東師団は壊滅します。」



とりあえず今の現状確認を行っている。

説明している男性の言葉に、将兵たちは若干小馬鹿にするような笑みを浮かべる。



「さらについこの間には太平洋警備艦隊が船型ゲルレレキャンベラーによって一瞬で沈められました。正直な話、このままではわが社の面目は丸つぶれです。」



男性がパッと合図をすると、目の前の壁に地図がでた。



「そこで我々はこの失態を取り返すため、中東を攻略してしまう作戦を考えました。」

「おいおい、そんな簡単に攻略できてたら中東師団は苦労しないだろ?」

「それとも中東師団が軟弱なだけか?」


なんて言葉が飛び交い、笑いが生まれている。



「中東を攻略すれば石油は手に入ると同時に、一気に相手の多くの戦力を消費させることができる。連中にとっても中東は重要なポイントのようだからな。」



社長であるワクレーがトーンの低い声で言うと、先ほどまでしゃべっていた皆が静まり返る。



「諸君らにはこの中東へと向かってもらう。」

「!?」


その言葉に皆が同様する。



「しゃ・社長、正気ですか!?ここにいるのは我が社の戦力の60%を動かせるほどの人材ですよ!?それをすべて投入なんて・・・」

「それに太平洋などの警備はどうするつもりです!?」

「中東では補給もままなりません!大部隊で行っても餓死者が増える可能性も・・・」


一度に多くの反対意見がでた。

この場にいる将兵のほとんどが反対をしていた。



「黙れ!!」



その反対派の意見を一度で社長は静めた。



「補給に関してはこちらから輸送機を大量に出す。警備は最低限の戦力で行う。・・・こちらが大移動を行えば連中も対応するはず。連中とて戦力的には厳しいものだろう。」

「しかし負ければこちらの被害が・・・」

「戦う依然に負けを考えているのは致命的だな。」



社長の言葉に反対派の将兵たちは俯く。



「それにゲルレレ、そして我々が動きときいたら・・・フヌケどもも動くに決まっている。いざとなれば連中のほうに敵を集中させ、その間に拠点を奪えばいい。」



ちなみにフヌケとか「旋律の剣」のことらしい。


社長の考えに若干戸惑い気味でもあるが、一応将兵たちは落ち着いてようだった。



「・・・話を続けろ。」

「はい。・・・でですね、中東を攻略する際には多くの部隊を分割して・・・」




螺旋の剣でも一部はこのことはすでに知らされ、そして現在に至るまで中東へ応援をよこしていた。

そして最終段階として、大移動をさせることでゲルレレたち、そして旋律の剣をも中東におびき出す。


これが螺旋の剣の考えだった。


・・・しかしその情報はすでに漏れていて、グルレレたちはすでに螺旋の剣を迎え撃つ準備が整っている、とは誰が思っただろうか・・・?

そして旋律の剣は逆にこの「螺旋の剣」を盾にしよう、と考えていたら・・・?






再び旋律の剣関東司令部。



「我々関東司令部はあくまで中東に増援をだす、ということだけであり作戦そのものは立てていない。作戦は中東司令部のほうできいてくれ。」



そういって竜胆は下がった。



「基地司令。」

「なんだ、不死鳥。」



すると不死鳥が手を上げて質問をした。



「・・・ここにいる者は全員中東遠征ですか?」

「あぁ。」

「・・・初心でも?」

「あぁ、そうだ。」



初心というのは紛れもなく俺のことなんだろう。


正直俺は銃の使いこなしもできていない。

明らかに足手まといになるだろう。



「拒否権はない。この中東戦で螺旋の剣よりも早く石油施設を攻略すれば連中の面目は最低限にまで落下する。」



俺はその言葉に疑問を感じた。


旋律の剣と螺旋の剣、対ゲルレレ用組織として2つあるというのは前にきいていたが・・・

なぜ同じ人間同士なのに対立するのであろうか・・・?

俺にはそこが理解できない。




「他に質問は?・・・なければ解散。」



すると皆は各自歩き出し、自らの部屋へと向かう。

・・・おそらく荷物の整理などをするのだろう。



「なおこの増援は我々関東司令部だけではない。多くの部署から増援が中東に集まるだろう。・・・これまでにない大きな戦いになるが、1人でも無事にここに帰ってきてくれることを願っているよ。」



最後に竜胆はそういって、ゆっくりと基地司令室に戻っていった。






その頃、中東では時間が動いているときでは人と人が、時間がとまっているときでは人とゲルレレが激戦を続けていた。


その中東で一際大きな石油関連施設がある。

人々は単に攻略ポイントAと呼んでいる。


ここはゲルレレたちの本部となっていた。



そこにゲルレレの増援先遣隊としてやってきたインドラ男爵が到着していた。



「で?現状はどうなの?」

「現在は味方も敵も消耗戦となっています。すでに32区間は陥落、その地区の部隊はバラバラとなっています。しかしこちらは新たに13・54地区を攻略しました。ただ空襲がひどく、この施設にも毎日敵機が空襲にきています。」



その答えにインドラは目を細める。



「ただ空襲にくる敵はほとんど撃ち落していますので、連中にもそれなりのダメージが・・・」

「空襲にくる航空機はいくら撃ち落しても意味がない。・・・叩くべきはそれを飛ばしている母体だ。」



外の様子を見るため、廊下を静かに歩きながらしゃべる。

廊下には、すでに負傷しているゲルレレが多くいて応急手当てが行われているようだが、間に合ってはいない様子でもある。



それから窓をあけて、基地全体をインドラが確認する。



「・・・ここは無人機が多いな。」

「はい、将軍が大量にもってきてくれるので。」



外には無人で動く対空砲が大量に設置してあった。

その姿はもはや「石油関連施設」などではなく、「防空要塞」と化していた。


ただ通常の人間にはその対空火器が見えない。

しかし螺旋の剣や旋律の剣のような対ゲルレレ組織の者からすれば丸見えもいいところだった。



「・・・とりあえず今は負傷者の手当てを最優先しろ。あと1週間後には連中が本気でせめて来るぞ。」

「はい!!」



インドラがこの防空要塞に見惚れるかのように眺めていると、彼の部下である羽根つきの高機動ゲルレレピュートのうちの1体がやってきた。



「どうだった?」

「連中の防衛陣地も強固です。さらに新たに滑走路を追加している様子もありました。また黒海には艦隊がウヨウヨしています。」

「すでに結構な量じゃん、これでまだ増えるとか冗談もほどほどにしてよねって感じだよな。」



彼は呆れ顔をしてから羽根を広げた。



「どちらへ?」

「第3機動師団にも出撃命令を出してくる。第1・第2じゃ足りそうもないからな。」



インドラは人の中東の戦力を軽く見すぎていた、と後悔した。




・・・中東総力戦まであと1週間。




                               「中東遠征命令?」 完


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