崩れた日常
はじめまして。
うまく書けるかわかりませんが、と・とりあえず頑張ります!!
これからどうぞよろしくお願いします。
「私たちはお前の味方よ。」
誰かの叫び声がきこえた。
誰かが倒れる音がした。
誰かが斬られるのをみた。
どういうことだよ!?
このときの俺にはさっぱりだった。
目の前の現実が、夢かパラレルワールドか幻覚か・・・
それらを信じたい。
意味わからねぇよ・・・
ふざけんなよ・・・
俺の名前は「西野 騎士」。
まぁ、よく「騎士」とかいて「ナイト」と読むので、格好良いといわれる。
自分でも結構この名前は好きで、親には感謝している。
「はぁ・・・」
「今日は意外と遅かったじゃないか。」
俺は陸上部に所属している。
専門は中距離であり、詳しく言えば800mと1500m。
一応どうにか県大会にでれるレベルだ。
出身の「音島」中学は、陸上と剣道が非常に強かった。
剣道には、全国2位の男と関東大会レベルの奴らがたくさんいた。
陸上は長距離が強かった。
俺はこってりしぼられながらもしっかりと練習して、己を鍛えた。
そして・・・今も陸上という競技が好きだから、陸上部にいる。
「おい、騎士。2分24秒なんてお前らしくないじゃないか。」
「不調だよ・・・不調。」
ちなみに今は800mを走り終えたところである。
「なぁ・・・今日、帰りにゲーセンいかね?」
友達が誘ってくるのだが・・・
あいにく、最近不調続きなので、少し休んでおきたい・・・
「ごめん。今日、疲れてるから・・・また今度誘ってくれよな。」
「OK。」
とりあえず一刻も早く家に帰って休みたい。
急いで帰りの支度をして、家に向かう。
俺の高校生活はそれなりに充実しているだろう。
部活は楽しいし、友達もいるし・・・
これで「彼女」がいれば完璧なのだが・・・
まぁ、前に「音島」中学である女性に告白しまくって、許可してもらったのだが・・・
俺がやらかしたせいで、1週間もたずに終わった。
まぁ、あれは確実に俺が悪い。
だから、高校こそは、あの失敗を繰り返さないようにしたい。
なんて思ったりしている。
家から高校までは電車を使っている。
徒歩の時間もいれて約20分とそこまで遠くもないが、今の状況だと座ると電車内で寝てしまいそうなので、たつことにしている。
どうにかこうにか我が愛しの家についた。
インターホンをならし、玄関の扉をあけて、靴をぬいて、家のなかにあがる。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
「お兄ちゃん、お帰り~。」
うちは母と父と妹・・・
それに俺で4人家族。
「今日、ご飯なにがいい?」
「なんでもいい。」
母も父も優しい。
妹も妹らしい妹だ。
すごく平和だ。
やっぱり家が一番癒される。
「悪い、俺疲れてるから寝るわ。」
「また?ちゃんとご飯のときには起きてよ?」
「あぁ。」
父は午後7時ぐらいに家に帰ってくる。
それから家族そろって飯を食べるシステムだ。
「大丈夫だよ。起きなかったら、私がお兄ちゃんを起こしにいってあげるから。」
「サンキューな。」
とりあえず7時に父が帰ってくるので・・・
7時に目覚ましをセットして寝よう。
ゆっくりと自分の部屋がある2階へとあがっていく。
自分の部屋のドアをあけて・・・バッタリ。
あぁ・・・意識が遠のく・・・
・・・
・・・
・・・
「・・・て。」
ん?
誰だよ・・・
人が気持ちよく寝ているというのに・・・
「おきてってば。ねぇ~、お兄ちゃん!」
「!」
妹が頬を膨らませている。
「やっと起きた・・・もうご飯だってお母さんがいってるよ?」
「悪い・・・寝すぎた。」
急いで階段を下る。
食卓につくと、もう父が席に座って、テレビをみている。
母も最後のおかずをもってきて、いすに座った。
「遅いぞ。」
「ごめん。」
父は微笑みながらに言う。
「今日はどうだったんだ?」
「めちゃくちゃ疲れたよ・・・最近不調だから思ったようにタイムもよくないし。」
「まぁ・・・そういうときもあるさ。家でゆっくりと休んでおきなさい。」
と父は言う。
実際、家に帰ってきての昼寝だけじゃ足りない。
やはり少し早めに寝るべきか・・・
「じゃぁ、いただきます。」
「いただきます。」
なんて復唱をして、箸を手に取る。
「そういえばさぁ、昨日お兄ちゃんがね・・・」
たわいもない話をして、盛り上がり、笑いあう。
これが俺の日常。
平和で楽しくて・・・
俺は幸せな人間だ。
飯を食べ終わり、食器を片付ける。
「母さん、風呂できたら起こして。俺、また寝てくるわ。」
ぶっちゃけうちの風呂は遅い。
30分程度はかかるので、その時間も有効に使うのだ。
自分の部屋のベットへ吸い込まれるかのように倒れる。
・・・あ~・・・もうたちたくねぇ・・・
・・・
・・・
・・・
ん?
・・・あれからどれだけたっただろうか?
今・・・ドン!って音がした気がした。
母が食器でも落としたのだろうか・・・
繊細な母が食器を落とすなんて珍しいけど。
あ、父か妹がこけたのだろうか・・・
時計をみてみると、あれから15分しかたってない。
・・・あれ?
時計がとまっている・・・
「また電池切れかよ・・・」
地味にイラッとくる。
まぁ、あと15分もあるし・・・
もう少し寝ようかな・・・
そう思ったときだった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「!?」
なんだ!?
今の・・・
母の叫び声。
ただ事ではない。
完全に眠気が覚める。
「や・やめろ!!」
父の声もきこえた。
なんなんだ!?
とりあえず立ち上がる。
すると階段を駆け上がってくる音がした。
「・・・」
今の2人の叫び声からただ事ではない。
こぶしに力が入る。
ドアがあいた。
「お兄ちゃん!!」
「!」
入ってきたのは妹だった。
「お兄ちゃん!パパとママが・・・ママが・・・グスッ・・・」
「お・おい?なにがあったんだ?」
妹は下を向いたままだった。
そんなとき、さらに階段から上ってくる音がした。
ゆっくり・・・トン・・・トンと。
くそ!
よくわからないが・・・
これは非常にまずい状態だ。
昔野球をするのに使っていた金属バットを握り締める。
恐怖で脚が震えている。
今までにこんなこと・・・なかった。
「お・おにいちゃん・・・」
妹が俺の後ろに隠れる。
目の前を見てみると・・・
1人の女性がたっていた。
俺と同じぐらいだろうか。
「か・刀!?」
右手には日本刀のような細くて長い剣があった。
ま・まさか!?
いや、だが血はついていない。
ということは父と母は殺されてはいないだろう・・・
「そいつから離れろ。」
「え?」
彼女は刀の剣先をこちらに向け、はっきりいった。
そいつ・・・というのは妹のことだろうか・・・
というか、いい加減にしてくれよ。
こいつは何かの遊びのつもりなのだろうか?
「お前・・・誰だ?人の家に勝手に上がりこんで。」
「・・・」
相手の反応はない。
彼女の視線は俺ではなく、その後ろの妹にいっていた。
するとまたしても階段を上がってくる音。
今度は走ってきている。
「1階はクリア。」
ドアが開くと同時に声が聞こえる。
今度は男性。
年はとりあえず俺よりは年上だとわかる。
「よし。あとはそいつだけ・・・か。」
男は長い槍をもっている・・・
先端が3つにわかれていて、かなり鋭いものだ。
クリアって・・・
拉致でもするつもりか。
・・・こいつら・・・
何が目的だ?
金?
うちにはそんなに金なんてねぇぞ・・・
「お兄ちゃん・・・助けて・・・」
妹は俺の後ろにしがみついている。
「お・おう!」
怖い・・・
歯がガタガタとなる。
脚も震えている。
俺がこんなに怖いんだ・・・
妹はもっと怖いだろう・・・
このすべてがひっくりかえったような状況のなか、無言という名の気まずい空気が流れる。
このままの状況はさすがにまずい。
「お・お前ら・・・何が目的だ?」
「・・・」
相変わらず彼女は黙っている。
「お前さんだ。」
「・・・は?」
男は俺に指をさして言う。
・・・ゆ・誘拐!?
やっぱり拉致ってやつなのか・・・
しかしながらわからないこともある。
それはなぜこんな「刀」や「槍」やらを使うのか、ということだ。
今の時代は極端にいえば「マシンガン」とか銃類もあるだろう。
それになぜ家で行う?
こんな住宅街なら叫び声ですぐに近所の住人がやってくるはず。
待て待て。
というか、なんで先ほど叫び声がしたにもかかわらず、町は静かなままなんだ・・・
まるで時間がとまっているみたいじゃないか。
「ら・拉致ってやつか?」
「はぁ・・・」
目の前の女性と男性は顔を見合わせて、ため息をついた。
ということは拉致ではないのだろうか。
そんなことを考えていると、目の前にいたはずの女性がいなくなっている・・・
「え!?どこに・・・」
すべての言葉を言い終わる前に、女性は俺の隣をスッと越していった。
それはとめられる、なんてスピードではない。
とんでもないスピードである。
俺はハッと我にかえった。
「くそっ!!」
金属バットを再び強く握りなおし、このわずかな空間の俺の部屋のなか・・・
俺の隣を越していった女性をとめるため、後ろを向こうとする。
すると、金属でできているはずのバットがいきなりまっふたつになった・・・
「!?」
「頼むから落ち着いてくんねぇかなぁ・・・」
槍をもった男が苦笑しながらにいう。
何があった!?
もう意味がわからない。
恐怖と混乱で頭のなかがおかしくなりそうになる。
「!」
再び俺が妹のほうを向くと、妹は倒れていた。
見てみれば、侵入してきた女が刀をぬいていた・・・
まさか・・・斬った!?
だが、やはり血はでていない。
「くっ・・・」
妹は倒れていたものの、意識はあるようだった。
とりあえずはよかった・・・ホントに。
「・・・」
女は倒れている妹を無言で見下ろす。
その目は、冷たい目・・・
というのを通り越して、寒気がするほど無感情な冷酷な目。
「・・・ゼロは・・・渡さない。」
すると妹は小さい声がたしかにこういった。
「ゼロ」・・・
何のことだろうか。
ただわかることは、こいつは俺の知っている妹ではないということ。
こいつもまた、目の前の刀を片手にもっている女のように無表情・無感情。
その目には先ほどの恐怖など微塵も感じられない。
まるで誰かに洗脳されているかのようだ。
そんなこの無感情な間に、俺の恐怖心はますます強くなる。
「将軍さま・・・」
妹は倒れたまま、ゆっくりと片手を天井に向けあげていく。
「しょ・将軍さまにバレれば・・・お前・・・なんか・・・」
「そう。」
目の前の名も知らない女性は妹が言葉を言い切る前に、自らの言葉でピリオドをうった。
「じゃ、あの世で将軍さまにあえるといいんじゃない?」
そういうと、彼女は刀の刃先を下に向ける。
「なっ!?」
おい、まさか・・・
急に寒気がほとばしる。
血もでてない。
きっと何かの悪ふざけだ。
誰かがどっかに隠したカメラをつたってみてて、楽しんでるんだ。
そう自らの心に釘をさして強制して思わせている。
だが、それでも俺はその光景を最後まで見れなかった。
目を背けた。
きっとその刀の先は妹の顔面をめがけて落下していったのだろう・・・
「や・やめろ!!!」
俺は心のなかで叫ぶしかなかった。
そのほんの少しあとだ・・・
ザシュッ!
というグロい音がした・・・
「ふぅ・・・これでクリアだな。」
「ったく・・・こんなのに30分ってのは考えすぎだったんじゃねぇのか?」
「いいえ。むしろここからが大変ですよ?」
いつの間にか目の前にもう1人男がいる・・・
手にはノートパソコン。
「槍」や「刀」といったものではなく、今度は電子機器。
だが、そんなことはどうだっていい・・・
妹がどんな状況になっているのかを確認したい。
そっと・・・
少しずつ・・・
俺はそむけた目を妹のほうへ向けようとする。
すると、不意に声がした。
「見ないほうがいいですよ。」
それは三人目の男が放った言葉だった。
「え?」
俺はその言葉につい戸惑った。
けど・・・
どうすればいいってんだ?
フツー、この状況だったら誰だって戸惑うだろ!!
「見なくても確認したいことは私が報告しましょう。」
彼の言葉遣いや発音は非常にやわらかい。
無感情といったものなど感じさせない。
ただこの状況で暖かみを感じる言葉遣いだ。
「あなたの妹さんは先ほどお亡くなりになりました。」
その暖かな言葉は、一気に俺を凍りつかせた。
絶望しかなかった・・・
めまいのようなふらつきがくる。
頭が痛くなる。
心臓の鼓動が異常なまでたかい。
「・・・怯えることはない。」
女がいった。
・・・怯えることはない?
この状況で怯えない人間なんていてたまるか。
「私たちはお前の味方だ。」
彼女はそういうと、こちらにまた一歩一歩と近づいてくる。
脚が震えていて、思うように動けない。
後ろに下がりたい・・・
けど、うまく動かない。
「く・くるな・・・」
「安心しろ。」
「くるなよ・・・くるな!!」
なぜか知らんが、折れたバットの先を・・・
半分になったバットの先端を彼女に向ける。
「ほら・・・ね?これからが時間かかるでしょ?」
「・・・」
誰がどうみても手がガタガタと震えている。
こんな状況ではどんな相手でも楽勝だと思うだろう。
俺は妹のようになるのだろうか・・・
俺はいったいどうすればいい?
すでに俺の頭のなかは真っ白だった。
ここから俺のありふれた幸せな日常は壊れていく。
いや、正確にはもう壊れた。
そしてこれから・・・さらに壊れていくのだ。
「崩れた日常」 完
いきなり最初から長くなってしまいました(申し訳ないです)
これからよろしくお願いします。