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翌日、あぜ道を歩いていると、奈美に会った。
声をかけようとしたが、僕は菜美を見て驚いた。
顔が異様だった。
目と目があり得ないくらいに離れている。
そして目の周りがもこもこと盛り上がり、それはまるで皮膚の下で、芋虫がはい回っているかのようだった。
すると目と目がさらに離れたり、かと思うと引っ付いたり、目が回転して縦になったり横になったりしたのだ。
――ええええっ?
目は異常だが、それ以外の奈美の顔は能面のようだった。
固まり見ていると、奈美は突然四つん這いになり、まるで犬のように走り出し、山の中に消えた。
九歳の人間の少女とは思えないほどのスピードで。
――なんだ今のは?
なんだかわからない。
かと言って今言ったことを誰かに言っても、とても信じてはもらえないだろうということは、九歳の僕でも分かった。
僕はとりあえず家に帰った。
日が沈みかけたころ、村の周りが騒がしくなった。
奈美が帰ってこないのだ。
もともと学校帰りのより道など当たり前なのだが、暗くなっても帰らないことはなかった。
村人総出で探す。
僕は何度も、山の中にいる、と言おうかと思ったが、言えなかった。
そのうち誰かが声を上げた。
「祠の戸が開いてるぞ!」
これはこれで騒ぎとなった。
誰がやったんだと。
奈美はどこ行ったんだと、戸は誰が開けたんだとの、二重の捜索となっていた。
結局、奈美はその日見つからず、祠の戸を開けた犯人も判明しなかった。
あれから五年、奈美はいまだに見つからず、祠を開けた犯人もわからないままだ。
終