2-4
まずは行動コマンドで治療院を入力、
これは魔力が上がるうえに、お金までもらえる、
一番オイシイコマンド。
治療院といっても、大怪我の人や、
重病人は、プロが対処する為、
まだ未成年でアマチュアの私は軽症者を担当している。
簡単に言うと、転んで膝を擦りむいたとか、
包丁で誤って、ちょっと手を切ってしまったとか、
その程度の事。
今日もそんな感じで、気軽に治療院に行く。
「おい!しっかりしろ!」
「回復魔法師はどうした!」
治療院に入った所で、大騒ぎがあって、
私は足をすくませる。
「ああ、ごめんなさいね」
疲れた顔をした、年配の回復魔法師に声をかけられ、
ぼーぜんとする。
いままでかいた事がないぐらい血の匂いが充満してる。
「どうしたのですか?」
「本来は国の回復所に行くような患者が、
数か多すぎて、街の回復所まできているのよ」
この国では戦争などなく、そんな大量に患者が
出るような事は思い当たらないけど・・・
「キメラが出たんだ」
後ろからいきなり声をかけられ、びっくりする。
「ライアン!」
攻略対象者の1人である、騎士団長の息子の
ライアンがそこにはいた。
短い赤い髪、がっしりした体、
今は鎧も脱ぎ、シャツ一枚の為、
その体つきが余計に分かる。
うわ~ホンモノ・・・
意識が一瞬飛びそうになる。
それをライアンが誤解したのか、
「血に酔ったのか?」
とフォローしてくれた。
そうそう、熱血漢キャラなのに、
こうゆう細かい心配りがぐっとくるのよね。
ゲームの情報を思い返す、
キメラという猛獣が出たと言う事は、
これはゲームのイベント、
ここで、ライアンの好感度を上げれるか決まるのだ。
ゲームでは怪我をしたライアンの治療をしていたけど、
見た所ライアンには怪我がない、
微妙にゲームと現実が違っているのだろうか?
そう考えながら、私は回復魔術師に声をかける。
「私はどうしたらいいですか?」
「とにかく回復魔術師が足りないの、
いつも以上で悪いけど、
腕に黄色い布を巻いている人に、
回復魔法をかけてくれない?」
「分かりました」
腕に、赤、黄、青と布が巻かれており、
赤が一番重症のようだった、
普段は青色ぐらいの患者しか任されないが、
勇気を振り絞って黄色の患者に向き合う。
そして、黄色の患者の1人を回復している時、
声をかけられた。
「俺はいいので、ライアン様を回復して下さい」
「どうゆう事ですか?」
「ライアン様は俺と同等の傷を負っているのです、
しかし、他の人の回復を優先して、
自分は何でもない振りをしていて・・・」
「分かりました」
やっぱり!怪我していたんだ!!!
部下を優先するのが、いかにもライアンらしくて、
でも、無理はして欲しくなくて、
その患者に回復魔法をかけた後、ライアンの元に向かう。
ライアンの前に立ち、いきなり回復魔法をかける。
「おい!何して!?」
「怪我をしていると聞いたので」
私はしれっとした顔をして、回復魔法をかける。
足に傷があるようなので、屈みこみ、
足に集中的に回復魔法をかける。
これで回復してくれればいいけど・・・
「はい、おわり」
なんとか無事に回復できた事にほっとしつつ、
ライアンに笑顔を向けた。
「ありがとう」
どこか呆然とした顔で言うライアンに、
「どういたしまして」
と、笑顔で答えた。