表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/29

3.潜入捜査(2)ようこそ英国に

3.潜入捜査(2)ようこそ英国に


 魔女ザ・ウィッチとの面談を終えたぼくに「アッシュ」と声をかけたのは、銀髪の美少年だった。


 肩下までの髪を指できながら、手を振っていた。


「ふう……生きていたのか」


「そんな顔しないでよ。――アッシュ(あなた)のおかげで助かったんだから」


 ミシェル・ラングレイはベルギー王国の首都ブリュッセル出身の仏系ベルギー人だが日本語が上手で、初見で目を瞑ったままならたぶん日本人だと思うはずだ。


「あなたの熱い接吻くちづけにわたしの心は奪われたの」


 人工呼吸をしただけだ。


(それにしても……)


 美しい少年だった。前回それで足を切断されている。


「足は?」


「あるわよ! ホラ!」


「よくくっついたなあ……」


珠子たまこさんは名医だもの」


(あの人の専門は再生医療だったっけ……)


「さあ行きましょう!」


 ミシェルがぼくの腕をつかんで先導した。


   *


 ロンドンヒースロー空港 (LHR) は霧だった。


(この国はいつ来ても陰鬱いんうつになる……)


 関西国際空港 (KIX) からミュンヘン空港 (MUC) 経由のルフトハンザドイツ航空で、十四時間十分+二時間で、日本武尊やまとたけるのみことのように三重になった足をさすりながら、ロビーに降りたった。


 背後に近づく気配を感じたぼくがたいをかわした。


 ぶつかろうとした男が倒れそうになる。


「大丈夫か? ミスター?」


 手を差しだしながら、ぼくが上から声をかけた。


 当然、手をはたこうとする。手を引っ込めるぼくをにらみつけると男が立ち去った。


ロンドンを楽しめ(エンジョイ・ロンドン)


 ミシェルが茶化した。映画『コラテラル』の冒頭の台詞〝Enjoy L.A.(LAを楽しめ)〟のジョークだ。


 とかく海外では黒髪の東洋人とみると、差別が多い。今のようにあからさまなことをされることは少ないが、無視をする透明化は日常的だ。言うと「気がつかなかったわ」となる。


 なお、さっきのはぼくが上から声をかけなければ、られていた。


 白人のミシェルはそうしたことはされない。熱い視線を贈られることはあっても。


「アッシュ・オッタニーさまでいらっしゃいますか?」


 黒服の執事がぼくに声をかけた。


「はい。〝Ohtani(オオタニ) Atsushi(アツシ)〟です。アッシュと呼んでください」


 外国人にぼくの名前は発音できない。


「では、ミスターと」


 ぼくは客人だが、英国は貴族社会だ。白人には白人のプライドがあるのだろう。


「ミシェル、お前さんまだ生きていたのか?」


「残念ながら。『雑草はすぐ蔓延はびこる』からね」


「まったくだ。――ようこそ英国にエンジョイ・イングランド




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ