24/29
22.殺人事件(5)暗転
22.殺人事件(5)暗転
俯きながらジョンが「ありがとう」と言った。
(礼は顔を見て言うものでは?)
まあそれにしても助かってよかった。
「えっ?」
二人してアーサーを見ると、両手で喉を押さえていた。顔が蒼い。
「まだ?」
いやちゃんと吐きだしている。
「何が?」
「ヴッ!」
血を吐いてアーサーが倒れた。
ドアが開くと、警備部の屈強な男性がぼくとジョンを蹴り倒した。
部屋の隅まで飛ばされる。
(撃たれないだけマシか……)
アーサーの頚動脈を調べた男性が、心臓マッサージを始めた。もう一人が血液を採取している。
顔を上げたぼくの目の前に、フリーダ・レイサムが立っていた。
消える。
(違う!)
反射的に回し蹴りを避けた。
それがいけなかった。
ダブルタップ。着地と同時にもう一回、蹴り。反動があるぶん二回目は素早く、避けられなかった。
意識が遠のく。
ジョンが後ろ手に手錠されているのをぼんやり見ていた。
暗転。




