20.殺人事件(3)無罪推定の原則
20.殺人事件(3)無罪推定の原則
ぼくたちは被疑者として、応接室の一部屋に閉じこめられた。
施錠されていない。英国らしく、判決で有罪になるまでは無罪という無罪推定原則によるものだ。
脱走すれば「自ら罪を認めた」=「自白」とみなされる。「紳士なら法廷でも名誉を賭けて戦え」ということらしい。
まま校内でそれほど大きな犯罪もないのだろう。差別があったとしても、金で解決できる世界だから。
(世知辛いな……)
アーサーは客用のソファーに横になっていた。まだ動きたくないらしい。
ジョンはその傍らで天井を向きながら無表情にしている。
三人の友情がどういったものか知らないけれど、思春期前の少年にとってはかなりショックだったのだろう。
ぼくはその向かいの主人用のソファーに座って、お茶を口にしていた。
(セイロン?)
リーフティーの缶にタータンチェックがデザインされていた。
(メルローズか……)
ふとアーサーの実家――マクミラン家の寄贈だろうと予想した。
どのような時にも――戦車の中でも紅茶を嗜むのが英国人だ。
アーサーは一口飲んでそのまま寝てしまった。考えたくないのだろう。
ジョンの紅茶は冷めている。
ぼくは二杯目を飲み干した。
ボブの死因は大量の出血によるショック死だった。両手両足をワイヤでつながれたあと、時計回転に血を絞られていた。
事故ではなく、他殺という判断だった。
(自分で死ぬとしてもあんな死は選ばない……)
死ぬまでの時間を苦痛で過ごすなんてゴメンだった。




