19.殺人事件(2)奇妙な殺し方
19.殺人事件(2)奇妙な殺し方
ぼくのジャブがアーサーの顎を打った。
倒れたアーサーは動けない。軽い脳震盪だ。
「え?」
ジョンが奇声を上げた。
水滴がアーサーの顔に落ちた。
動けないアーサーが、視線でそれを追った。
ぼくとミランダが見上げた。
流血が、全員に降ってきた。
真っ赤な雨のなか、吊られていたボブの肉片が落ちてきた。
ボブの体重はおよそ六〇kg。血液の総量は約四・六kg。そのほとんどが絞りとられていた。
「動くな!」
後ろ腰から銃――H&K P7を抜いたミランダが声を上げた。
「ボブ!」
ジョンが膝をくずし、バラバラになったボブの頭部を手にした。
「動くなと言ってる」
ミランダがジョンの後頭部に蹴りを入れた。
アーサーの横に倒れる。床の鮮血が跳ね、ぼくの上半身をベタ塗りした。
複数の足音と金属音。
警備部だ。小銃――H&K G36を手にしている。
(G36?)
おそろしく高価な銃でまったく売れなかった小銃だった。そのぶん性能は必要十分だったのだが……。
戦争や暴動に対処する訳でもない、大学校内であれば少ない数で問題ないのだろう。
銃剣の切先がぼくの頬に向けられた。




