17.潜入捜査(16)賭けのテーブルでメンバーを見回してカモがいないなら自分がカモである
17.潜入捜査(16)賭けのテーブルでメンバーを見回してカモがいないなら自分がカモである
ぼくの目の前にある下着姿のミランダの胸が揺れた。
(そういうことか……)
言葉にできないほどミランダが笑っていた。
諺の「賭けのテーブルでメンバーを見回してカモがいないなら自分がカモである」は至言だ。
そう……米国の報告に第三者の存在はない。
茶泉の報告に改竄はない。
そんなことをしても意味がないからだ。犯罪者を囲うなんて危険なことを茶泉がする訳がない。有能なら、公表して責任を取らせて利用する。
または「事件そのものをなかったことにする」――たとえば「事故で亡くなったことにする」だろう。
『スミス夫妻は事前に、危険人物が近づいていると警告を受けていた……。チャーリーは気のせいだと言ってボディガードを拒否した。人は警告を無視すると気のせいで亡くなる。さて、犯人はどうなったでしょうか?』
ミランダが三白眼で疑問を口にした。
『(そんなことは決まってる……)今はもう影も形もない』
海の藻屑になったか、木材粉砕機で魚の餌か、映画のように生きたまま豚の餌だろう。
『スミス夫妻は経験から、学校法人に多額の寄付をした。――そもそもそれが魔女の意図だったのでは?』
ミランダが推論を述べた。
プラスα(アルファ)使い古した手だけれど、ぼくを生贄にした。
前回の件で消されても仕方がない二人を供物に。
とすると……。
『それを要求したのは……』
レディ・ベルだろう。発案は、目の前の美しい少女だ。
『……口にしないだけ賢いわ』
ぼくの口唇に、白い指先をあてた。
『舌を出して』
小さく出すと、ミランダが覗きこんだ。
『健康健康。――嬢が欲しているのは忠誠心ではなく、高価値の創造』
『それが変態だとしても?』
『マトモな貴族がいるとでも? さあ行きましょう』
ミランダがネイビィブルーのエドウイン503を履くと、オフホワイトのコンバースに足を入れながら、ホワイトのスナワチのTシャツを着た。
(寒くないのか?)
そういえば決闘を約束していたのを思いだしながら、そのスタイルを眺めていた。
*
結論から述べると、このあと二年半レディ・ベルが飽きるまでぼくは付きあわされた。




