表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/29

13.潜入捜査(12)調査報告

13.潜入捜査(12)調査報告


 ミシェルの話では、女子寮は各室にシャワールームがあるらしい。


「アッシュアッシュ。ビデまであるの」


 そこまで聞いていない。


 この時間、夜に開いているのは職員用のラウンジだけだ。もちろん新館、旧館と二つある。


 今は旧館のラウンジで、ミシェルと二人だけだ。他に職員がいるが、遠くて話は聞こえない。


 今回は学校法人からの要請なので、ぼくたちが使う許可は得ている。


 横を見ると、ミシェルが椅子にひざを乗せてうさぎのように背によりかかっていた。


 あの後、男子寮から女子寮までフリーダに尻を蹴られながら案内(御披露目)されたらしい。


「あの女、プロだわ」


 こころなしか、ヒップが大きくなっているように思えた。


「そうか」


 ウィルキンソンのソーダを飲みながらぼくはぼんやり聞いていた。


「最初の一発目だけ本気で、あとは傷にならないように調節コントロールしていたのよ」


「そうか」


 加虐性欲サディズム被虐性欲マゾヒズムもぼくには分からなかった。


(分かりたくもないが……)


「ビデくらいあるだろう? 温水洗浄便座なら」


「違うよ、アッシュ。ビデ専用があるのよ。ホテルみたいに」


 この学校は、良家の子女のたしなみを教えているそうな。


「それで?」


 ぼくが日本語で言い返した。


「監視カメラだけでなく、マイクまであった。ここにもある」


 同じくミシェルが日本語で答えた。


「記録にない設備か……」


「化粧室のなかまで。たぶん生徒は知らないでしょうけれど、上に確認したら『適切に利用している』ですって」


「上、とは?」


「あなたも持っているでしょう? 茶泉のアプリ」


(ああアレか)


 スマートフォンからアプリを立ちあげると、衛星経由で秘匿ひとく回線で接続された。


 私用で使うことはないが、料金を考えたくなかった。


 わざわざ日本語表記になっている。


 ミシェルが歩かされたところのカメラとマイクの地図がアップされていた。


 ミシェルは仕事が速い。


 夕方の襲撃の場所を確認すると、やはり監視カメラがなかった。


(変に頭がいいというのは不幸だなあ……)


 男子寮の監視カメラの記録にアクセスした。


 やはりぼくしか映っていなかった。周囲をひろげて、三名を特定した。


 ジョン・ブラック、アーサー・マクミラン、ボブ・オコーナー。


(ジョン・ブラックは色白で赤毛なので、ブラックの直系じゃあないだろう。マクミランはスコットランド系の名前なのに、アーサーとは?)


 伝説のアーサー王はスコットランドではなく、今のイングランドの英雄である。


 オコーナーはアイルランド系で「コナーの子孫」という意味だけれど、ロバートじゃあなく略称のボブを正式名としているのに違和感があった。


 三名の成績を閲覧した。


 当然のことながら、歴史は全員がCかCマイナス。


 身長は三名とも一七〇cm前後あるから、米国の被疑者とも疑われるけれど英国からの出国記録も米国への入国記録もなかった。


「情愛にかられて罪を犯すだけの知性もないということです」


 画面を覗きこんだミランダが英語で感想を述べた。


「日本語が読めるの?」


「いいえ。けれど生徒の個人データでABCがあれば成績だと考えつきます」


「これ機密トップシークレットなんだけど……」


 秘密には三段階ある。


 ・機密トップシークレット

 ・極秘シークレット

 ・コンフィデンシャル


「隠してもバレます。――というかあの三名でしたら無実です。あの日、三名とも補習を受けていたから」


 調査済であれば、こちらにデータを開示してくれてもよさそうなものである。


(違う。ぼくたちの能力を確かめていたんだ)


 フリーダがミシェルのヒップを蹴っていたのは趣味だろう……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ