1.絶体絶命
『銀と灰:賭けのテーブルでメンバーを見回してカモがいないなら自分がカモである――お気楽ミステリーをどうぞ――』
〝The Silver and the Ash〟
二十世紀後半の英国イングランドのパブリックスクールで奇妙な殺人事件があった。調査を任されたのは銀髪のミシェル・ラングレイ(Michel(le) Langley)とぼく――アッシュ・オオタニ(Ash Ohtani)の二人。潜入するも敵にバレてしまい、絶体絶命に。
M「さて、どうしませう」
A「可愛い顔をして言うな! 全部お前のせいだろうが!」
お気楽ミステリーをどうぞ。
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1.絶体絶命
友人は選んだほうがいい。
本当にそう思う。
好奇心は身を滅ぼすというが、とにかく友人は選んだほうがいい。
心からそう思う。
「あとドレくらいかしら?」
美しい銀髪がぼくの肩にかかった。ぼくと背中でつながれているのは美少年ミシェル・ラングレイだ。仏系らしく〝H〟の発音があまい英語だ。
今は女装しているので〝le〟がついた〝Michelle〟なのだろう。発音は同じなのに、表記を気にする変な友人だ。
「もう朝になった?」
「なっていない。敵の言うことを信じるほうがどうかしている」
ぼくが静かな口調で返した。BBC英語――容認発音(RP)だ。気取っているといわれるが、ミッションスクールで学んだにすぎない。
『朝までにはこの水が満たされるだろう』
それに『朝までに』とは、五分後も意味する。
ロープにつながれた二人は水牢で朝を待っていた。その間も水が浸入してきている。
ミシェルがじたばたした。
「動くな! また締まったじゃあないか!」
濡れたロープは解きにくい。
「だってどうにか動かないと――」
こちらを向いた怒り顔のミシェルにキスをした。
「……」
ようやく黙ってくれた。
締まる前に挟んでいた指からロープを解いた。
もう腰下まで水が来ている。
閉じられたドアを確かめたけれど、鍵がかかっていた。当たり前だ。
おまけに内開きで、水圧で開くとは考えにくい。
壁上の窓に半月が見えた。
(とすると……)
「なるほど」
「ナニが『なるほど』よ?」
濡れ髪を気にしていたミシェルが返した。
「上弦の月だ」
「半月がナニ?」
「待つ」
「はあ? バカじゃあないの?」
言うと思った。