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帰宅

そこは、本当に、現実味のない場所であった。


何千年前の作り方をされたのか、コンクリートでもなく、レンガを積み上げて作られている。


そして、電流の配線は剥き出しのまま、廊下を流れている。


「なんで、こんなものを作ったんですか?」


ここが作られたのは、百年単位も前なのだ。


「最初は、人の話し合いの場でしたが、やがて支配の象徴としても見られるようになったからです」


「だから、わかりやすく内装も外装もお城の形にしたんですか」


「はい」


だとしても、ままの石よりも、コンクリートなり使えば良いのではないか。


使えないというのは、知っていてもやはりそう思ってしまうのは、差別と似たようなものだろうか。


目の前の人、女性だ。


ファッションが一時代前なのだが、それを気にしないほど顔の艶がいい。


(美容液や化粧の技術は、とっくにカンストしているものな)


この世界、魔物が住む場所というのは、もっぱら資源不足に陥っているのが現状だ。


そもそも、この地下空間というのは、採掘のしすぎと世界的な人口の増加が合わさり、たまたま出来た地下空間を住居スペースとして使うことにしたのだ。


(宇宙に出ることを失敗したから、尚更に地球を食い潰すような真似をする)


それは、バカみたいな話ではあった。


宇宙に技法を託した。


人口の分散、新たな鉱山となる星、まだ見ぬ物質。


そういう夢を、宇宙に託した。


しかし例外一つ見つかればマスコミは誇張して煽り、民衆は考えもせず、宇宙進出を批判する。


その批判人が、大数の投票を占めていたのが、西暦の末期なのだ。


(成功していても、結局今の今日みたいになっていただろうけど)


宇宙に出れたとして、人を宇宙に投げ出したとて、能無しの西暦人は発情した獣以上に腰を振るだろう。


それで生まれた子供に、大した教育を受けさせず放っておいたくせに。


親が、大人が、子供世代に自分たちの問題を放り投げたのだ。


それは、無責任であるとしか言えない。


おおよその解決策も出さず、謝りもせず。


過去からのツケをより大きくして子供らに託す。


それに異議を唱えるものは、確かにいたのだ。


しかし、偶々、偶然の産物で出来た科学の技術、それが全てをひっくり返した。


だから、親が子に、子が次世代に、自分達の愚かさを押し付けることに反論はできないのだ。


科学力があれば、ありとあらゆる問題は解決できると思い込めたからだ。


道具は進化し、人は退化を辿る。


その結果が、人類が滅ぶ直前までいった戦争なのだ。


(だから、間違いを正さないためには確度ある情報が必要なんだ。自分の目と耳で掴み、そこから考えた答えが、私には必要なんだ)


「お疲れではありませんか?」


「いえ、まだ大丈夫ですよ」


目の前の魔物は、普通の人だ。


足が太く、しっかりとした、女性だ。


そういうものに、心惹かれるのは性欲だろうか。


そうではなくて、もっと、慈愛のようなものであると信じたい。


長い廊下の先にある、一つの扉の前で彼女は止まる。


綺麗にお辞儀をして見せた後、足音を立てず去っていった。


私は、ノックを三回し、反応を待つ。


「どうぞ」


威圧感がない声なのは、私がそう感じただけで、実際はもっと低い声をしていたりするのだろう。


ギギィと、古い扉らしい音を奏でてくれれば、気持ちは安らぐ。


中は、大きなガラスが外の景色を映し出し、よく見える。


ただの事務室的なもので、ゲームのような玉座があるわけでもなかった。


そしてそこに座る男も、ただの人だ。


「初めまして」


「彼から話は聞いているよ、純粋な人間は二人目だね」


純粋な人間、それは自分たちがそうではないということなのではないか。


「混血ですけどね」


人間なんてそれらしき形をしていれば全部純粋だというのに。


「好きにしていいよ」


客用のソファーに座り、持っていたペットボトルの水を一口飲む。


そして、対極のソファーの端にいるソルトを見やる。


マリーの父親が言うには、私の傍にいるのを避け、すぐにここに来たらしい。


「ありがとう。私をここまで運んだの、ソルトなんだろう?」


頷き、それだけの彼女は、私を一度も見やしない。


リンクスキルは、ソルトに対して働かない。


それは私が知りたくないのか、私は知らない方がいいことがあるからなのかは、よく分かりようがなかった。


「ここの歴史の話だろ?」


男は、元々机に置かれていた本を、分厚い本を手に取り、投げ渡す。


分厚いそれを、重い本を受け取った手は、自然と最初の1ページを開いていた。


(同じだ……)


そこに書いてある文字は、英語で、まさしく人の言葉であった。


ボロボロになって、重心があやふやなそれは、今日までの歴史が書いてある。


魔物達の歴史が、書いてある。


再生期の歴史と同じように、同じような密度を持って。


これはまさしく、魔物が人たる証拠、魔物と呼べる人間が、歴史を重ねる生物であるということの、何よりの証ではないか。


「君はどう見る」


「何を、ですか」


「この戦争のことさ」


彼がこの部屋で行なっているのは、紙に目を通して印鑑を押す仕事。


アナログティックでもあるが、偶にノートパソコンに目を通す。


「その本には書いていない、つまり今の歴史の話になるけど、いまは急進派と穏便派で別れてあるのが現状なんだ」


「戦争で土地を奪う急進派と、今を尊ぶ穏便派」


「そう、だから、君たちには申し訳ないと思う反面、感謝もしてある」


「ん、ああ。そうか、結局政治を握るのは穏便な、知恵あるもので、反対の急進派は頭が悪いのか」


冷たい事実で、愚かな現実。


「貴方たちは最初から勝つ気がない。ただ急ぐ人達を地上の人間にぶつけて、急進派の数を減らすのが目的なんですね」


「そうで、それを踏まえた上で、君はどうする?」


「このまま行けば、共倒れですよ。だから、私は止めに行きます」


本を閉じ、横に置く。


柔らかいソファーに重い本は沈む。


「あなた方の目論見は、もう達成している。のに、この戦争に調和も和平もする気がないのは、あわよくばを狙っているからだ。イマバルグゥがでて、あの黒いアニマドールが出て、自分達にも日の目を見れるチャンスがあると思っている。だから、穏便派の中にも急進と手を組み支援をする。その結果人間の大量のアニマドールとわたり会えてしまい全面戦争みたいになった」


無言で肯定する彼に対し、私はさらにいう。


「別に、今の地上の自然は管理できているから、あなた方が節度を守れば住めるはずです。だから戦争なんてする必要はないんですよ」


魔物はバカになるしかない環境で育ったのだ。


核戦争の被害から逃れたのは唯一この地下空間のみ。


しかし資源も、何も、強いていうなら人工の空のみがあるこの場所では、できる生活のレベルというのは限られてくるものである。


教育に使う科学技術がないから、全体的な知能は下がるわけだ。


しかも、最悪なことにその、魔物達が地下に避難する前であろう、西暦七千年あたりは、教育というものが二極化を極めていた。


とことん積み重ね、理論で行う教育か。


それとも最低限しか物事を教えず、あとは放置するだけの教育を受けるか。


無論後者の方が多く、そういうやつはとことん落ちていく。


そのバカどうしがまぐわって子を産んで、バカの子はバカになるよう教育されて!


バカだから自分の子がバカなのもわからないで性欲も我慢せずまたバカを作る!


そのバカ達のせいで、戦争は起きて人類は滅亡一歩手前まで行って!


生き残った魔物達は結局バカだから、今日のような無意味な戦争を起こして平気で同族の地上人を踏み潰す!


「賢いと自負し傍観者を気取るぐらいなら、前に出て人に向かって喋ればいいじゃないですか。少なくとも、魔物の代表たる貴方が、こんな机で事務作業する必要はないんですよ」


指導者なら、偉いのなら!ふんぞりかえってないで行動しろ!


「とんだ……正論だな」


手に顔を当て、面目なさそうにして、席に座ったままだ。


そんな彼に対し、私は言う。


「私と一緒に来て、戦争を止めてください。魔物側の代表として、あなたの力が必要なんです。あなたの肩書き、魔王の意味が意味をなすんです」


「だから来いと」


「そうです。ちゃんとした人たちは、馬鹿を見捨てて宇宙に出た。その結果が戦争なら、今の私たちがするのは見捨てないことです。命一つも、無駄にしないのが大切でしょう?」


「そうだな」


彼は私の手を取り返して、くれたのだ。


(いくら才能があろうと、力があろうと、一人で生きるのには限度がある)


だから、他者の手を握り、共に生きる。


それは生まれた意味から他者に依存する人間としては、当たり前のことではある。


それが現人類の到達点、ミライ・クラシックの答えであった。


「よろしくお願いします。魔王、ラ・シーパルさん」






意気揚々と、確固たる信念を持ち、前に進むことを決めたミライは、魔物領──現在の地下空間の仮称──の諸問題を解決するために動くことになった。


魔物の王様を地上に連れて行き、地上で和平を行う以上、地下は手薄になる。


だから、その手薄になった魔物領で問題が起こらないために、出来ることはやらなければならないのだ。


しかも、壊れかけたフォックスドールを直すのにも時間は必要なのだから、暇なのだから、やらないわけがないのであった。


「古いアニマドールでも、私は戦える!」


貸してもらった、埋まっていたものを掘り起こしただけの作業用のADは、ガタガタ音を鳴らしながら、魔物をぶん殴る。


人が何倍もの大きさを持った魔物になり、自分の機体にキバを向けるのを見ると、本当に嘘だと言いたくなる。


「でも、認めなくては。私が今までやってきたのは、人殺しだと!」


口に出して、覚悟を決める。


地上の人たちがやっているのは、魔物殺しとは、人殺しなんだ。


それを知ってもらうためには、世界の一部だけとは言え真実を見た私が、行動するしかない。


気絶した人間を放っておいて、アニマドールから降りたミライは土の上を走る。


走れば自分の前にあった木々は後ろに行く。


先にある洞窟は、進めば進むほどに鮮明に見えてくる。


そもそも今、何をしているのかと言えば、反乱軍、つまり戦争を推し進める急進派の人たちを黙らせているのだ。


知能が低い集まりの急進派は、戦うことでしか、勝ってからでしか話し合えない。


だからミライは古いアニマドールであろうとも戦う。


そして勝った。


先手を全て跳ね除け、洞窟へと入ったミライは、ようやく机に座った人を見つけた。


「投降の言葉の意味ぐらいわかるなら、あきらめてください!」


足に携帯していた電気の銃を構え、相手の出方を伺うことにすれば、やはりの反応が返ってくる。


「我々の理想もわからないバカ共が!」


棒、おそらく木製が私に振り翳される。


「貴様に言われたくない!」


全身を横にそらし、縦に振られた棒は砂埃をあげる。


その隙に電子銃を撃つ。


スタンガンの役割を果たす電子銃は、巨漢の男を痺れさせ、動きを止める。


そのまま顎に1発、腹に2発、拳を叩き込めば、リーダー格の男は何も言わず泡を吹いていた。


(本当に、これが獣に変身するのか?)


現実味のない、理論ではあるのだけれど、それは事実なのだ。


「ミライ・クラシックとか、いったよな」


洞窟、洞穴、ただの穴。


何とでも呼べるここは、アジトと呼ばれていて、当然、ボスの他にも人はいた。


「イマバルグゥ!?」


そう、魔物に協力する人間とか。


両手の銃を地面に平行にするより早く、相手は拳銃をこちらに向けていた。


「奇遇というのか、偶然の産物なのか、まさかAD越しではなく、目と目を見ることになるとはね」


銃を向けられているのはこちら、優位があるのがあちら。


だから、この語りかけには同じる。


「魔物の手を組んでいたんですね、独りよがりの人かと思い込んでいました」


語りかけには意図がある。


「そちらこそ、死んだはずだろうに、まさか生きているとはな」


実際には死んだのだが、今は生きているのだし、大差はない。


「今、改めて急進派の方々と話し合いをしているから、ゼーリドルがいない地上の戦争は拮抗しているし……もし貴様が地上に出てしまえば、そのバランスは」


リンクスキルが危険を教える。


「崩れてしまうなぁ!」


相手が発砲するより早く、横に飛ぶ。


しかし、机と椅子しか──しかも木製──ないこの空間では、大した障害物はない。


だから、魔物を盾にする。


(ああ、嫌だ。こうも簡単に命を盾にできてしまう自分が嫌だ)


イマバルグゥは魔物と、盾にしている奴らと同盟を組もうとしていたのだから、簡単には引き金を引けない。


「ミライ、貴様は、何を望んでここにいる?魔物絶滅か?」


動揺も、隙をも誘っているわけではない、ただの好奇心の声。


「私は、ただ、間違えたくないし、後悔したくないだけです。私が戦争に飲み込まれたから、周りが見えなくなってマリーさんは死んだ」


だから、残った大事なもの、それだけは守ってみせるということだ。


「最初は、なんてことはなかった。けれど段々と、あの異性に対してわざと冷たい態度をとってしまったのは、私の間違いで後悔なんだ」


盾にしていた魔物を、地面に寝かせる。


「いや、ほんと情けないけど自分からフっておいて、今更恋しく感じているんですよ」


今、この地下にいるソルトに関してだけは、もう間違いたくない。


銃を構えた相手を、じっと見据える。


本当に情けない。


「貴方はどうなんですか。魔物が人を滅ぼすのを手伝うか、それとも別の理由があるのか」


まあとはいえ、目の前の人間に対して八つ当たりをする気にもなれないのだから、まだ私は壊れていないのだろう。


「私?私は、今の人間は、大部分が死ぬべきだと考えているだけだよ。オールド管轄に従属し生活するならまだしも、ただ技術に浸かり甘えた人間になる奴らはまだいる。戦争をする奴等など、特にそれだ。魔物は人だと教えたところで、誰も理解してはくれなかった。考えることを、やめた生物なんだよ」


いま語られたことは、半分が正論で、もう半分は暴論であった。


確かに、今の時代にも、優れていると呼べない人は一定数いる。


しかしそれは今となっては無視できる範囲だし、そもそもそれが今の戦争とは、ゼーリドルを持ち出し、多数の人間を殺めることの正当化になりはしない。


そして、仮に自分が魔物について説明して理解してもらえないのは、ある意味当たり前であった。


お前が殺したのは獣ではなく人なんだぞ。


そう言われてパッと飲み込める人間がいるのだろうか。


再生期の平均的な知能レベルにおいて、イマバルグゥがした説明は至極真っ当でわかりやすく、尚且つ根拠もあるから、理解できたのだろう。


だから、理解された上で、イマバルグゥは否定されたのだ。


そのことを、目の前の男は理解できているのだろうか、考えたのだろうか。


私をしばらく見つめた後、彼は、口を開いた。


「そうか、それが貴様の考えか」


私の思考を読み取ったかのように、そう、


「リンクスキル……!」


リンクスキル、予測の最高能力のようだった。


口を使わず会話をしてみれば、相手の考えはダイレクトに伝わってくる。


先読みの先読みの先読み。


気が狂うそれをしてみせるのは、互いの才能と再生期の教育が由縁だろう。


リンクスキル同士が面と向かえば、先読みされたのを先読みしそれを先読みしさらにそれを先読みし続ける。


わかりやすく言えば、馬鹿みたいなことが自動的に起こる。


だから互いに動かない、動けない。


思考に行動というノイズが混ざれば、チェックメイトを撃つ権限を放棄するも同じ。


が、ミライクラシックは動いた。


動いた瞬間、銃から弾丸が飛び出してくる。


しかしそれは、未来を見るミライにとって、何の障害にもなりはしない。


「なっん!?」


変な声、イマバルグゥは変な声を出した。


予測の上を行った、というのが正しい。


走りながら回転していた、倍速で流すスケートの動画のように動いて弾丸を介して見せた。


(弾丸を飛び越えた!?いや違う、受け流したんだ!体を高速で回転させつつ防弾ベスト部分に弾丸を当て弾き飛ばしたんだ!だから弾丸はミライと違うZ座標に弾かれた!)


リンクスキル、それはただの思考力。


なら、人類の到達点たるミライクラシックこそが、先見の明に優れていることになる。


イマバルグゥは、初めから勝ち目がなかったのだ。


高速の回転が作る遠心力を加えた回し蹴りが、イマバルグゥを飛ばす!


「わかっているんでしょ!自分が理解され否定されたことぐらい!」


だから、彼の意見は、理性そのものではない。


幾分か八つ当たりが混じったもので、完璧な論理足り得ないのだ。


だから、間違っている部分もある。


まあでも人の主張などそんなものなので、ミライからしたらどうでもいいことであった。


そんなことより、うざったいイマバルグゥを思いっきり蹴り飛ばすことができて、気分が大変良い。


「人類半殺しになんかさせませんし、アナタも殺さず、地上のみんなの前で倒して見せます!」


捨て台詞を吐き、ミライクラシックはこの場を去る。


目的は、達成できていたのだから。

















幾分か日数が流れ、寒さが肌を指すようになってきた。


「動くようにはしましたけど、死に上がりで本当に戦争するんですかー?」


「動くなら、やってみせます」


アリネットの従者は、数少ない西暦の人の生き残りの技術をある程度受け継いでいる人だった。


だから、私一人でフォックスドールを直すより、彼女の手伝いがあるのはありがたかった。


スターターを起動すれば、何ら問題なく動くことがわかる。


ちゃんと説明してわからないという人間はいない。


だけど変に頭のいい人は、自分だけが分かる説明を無意識でする。


馬鹿からしたら、心底不親切な説明だろう。だから理解できない。


しかし知識ある人からすれば、人の話を理解できない人、と決めつけることになる。


このすれ違いはどうやったって絶えないのだが、相手の状況を想像することで幾分かは減らせるはずなのだ。


再生期の教育の正しさを再認識し、フォックスドールを、いま再び起動した。


海水を取り除き、以前の機能を取り戻したフォックスドールは、北極の空を見上げる。


そうして、以前以上の機能──自立型攻撃機構テールブレード──を確認する。


これこそが、この北極に眠っていた、フォックスドールの一部。


九つあるそれは、エネルギーを使わず宙に浮き、背中の少し後ろに佇んでいる。


フォックスドール本来の姿なのだが、この時代の人にはあまりにもどうでもいい話なので、感動したりする人はいない。


人口の空は、いつまで経っても青空なのだ。


「忘れ物はないですよね?」


クワガタンに乗り込んだソルトと魔王様にそう問い掛ければ、問題ないと言う旨の返事が返ってくる。


ならばいこう、私のために、誰かのために。


「フォックスドール、発進します!」


背中に炎が宿り、それは九つの尾を作る。


九尾を元に作られたそれは、西暦の人間からしてみれば、技術の結晶でもあるのだが、同時にただのオモチャでもある。


こんなのが、核より恐ろしい兵器が平然と使われたのが、太古の戦争なのだ。


昔からすれば、今は幸せだと言えるだろう。


だが、人は死んでいるのだから、止めなければならない。


このままいけば、双方に何の利益ももたらせないのだ。


炎は二体のアニマドールを持ち上げる。


寒空の中で、白い狐は前に進む。

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