90話 Watch Cat 08
ガラステーブルに新聞を広げ、スポーツ記事を読む『ろくでなし』。
その隣で横になり、くつろぐボク。
”あのさあ・・・ヴァレストってほんと、駄目な奴だよねぇ”
「しみじみと言うな。俺は、駄目じゃない」
”最初の頃、『ソロモンの指輪』無しじゃ、猫の言葉分かんなかったし”
「俺は、猫じゃないからな」
”熊とか、鰐なら、まだしもさぁ。
猫の言葉を理解できない悪魔とか、まずいないよ?”
「誰しも、得手不得手はあるもんだ」
ばさり、と新聞が裏返される。
今度は、TV欄だ。
”・・・男としても、不甲斐ないし”
「ちょっと待て!───そりゃ幾ら何でも失礼だろ!
お前に俺の何が」
”『分からない』けど、『知ってる』よ?”
「何をだよ!?」
”昨日の、夜遅くにさぁ。バーガーショップに行ったよね?”
「・・・え」
”エストニアから、就労ビザで滞在してるんでしょ?あの店員さん”
「・・・え?」
”お仕事が終わるまで、バーガーセット4つも食べながら待って。
それから駅前のバーで、カクテルなんか奢っちゃって”
「・・・・・・」
”かなりいいカンジのムードまで、持っていったのにさぁ。
結局、彼女をアパートメントまで送っただけで、1人寂しく歩いて帰ったよね?”
「・・・マルシェル・・・さん」
”何?”
「マギルには、その事」
”わざわざ、言わないよ。一緒に見てたんだし”
「・・・・・・」
”───あ、それとね”
「・・・・・・」
”近所の猫達に、良く聞かれるんだけどさぁ。
『君のところのアレ、大丈夫なの?』って”
「うおああああああああッ!!!!」
ヴァレストが絶叫し。
頭を抱えた。
「何で、俺が!!猫に心配されなきゃなんねーんだよおおおッ!!」
───ふう。
楽しかった!
じゃあ、昨夜の事を『ご主人』に報告して。
そろそろ、お昼寝しようかな!




