07話 燃えるNY(その7)
瞬間。
轟音と共に炎の壁が出現し。
攻勢に出ようとしていた天使の一団を阻んだ。
「な・・・・」
呆気にとられたヴァレストの目の前。
炎は収束し、人形へと変わり。
「・・・なんで、ここに!!姉貴っ!?」
「『なんで』って、あんた。
か弱き弟の窮地に颯爽と現れ、美味しいとこ全部持ってく。
それが『姉』ってモンでしょ?」
「いや・・え・・・?」
しどろもどろなヴァレストの額が、びし!、と指で弾かれた。
「いぎっ!!!」
「さっさと『現界』解かんか、この愚弟っ!
あーー、マギル。あんたも休んでなよ。
よくこの馬鹿を止めてくれたね。今度、美味い酒を送ったげるからねー」
燃えるような赤髪。
白と金のドレス。
ひらひらと振っていた右手には、いつの間にか大剣。
「ヴァレスト。これ、どのくらいの本気でやっちゃっていい?」
「凄く遊び半分、そのまた半分で頼む」
即答する弟。
ふむふむ、と頷く姉。
そして、しばしの沈黙
「────いよおぉおおっっし!!片っ端から、平らげていこかああああ!!!」
「姉貴っ!?」
・・・大剣の一振りで、数体の天使が炎上し、落下してゆく。
「ほらっ!死ぬ気で避けないと死ぬぞ?小僧共っ!!!」
・・・避けたはずの天使も、まとめて炎上した。
ああーーーーはっはっはっは!!
とてつもなく上機嫌な哄笑が響き渡る中。
一方的な破壊力で蹴散らされる敵、敵、敵。
「・・・哀れだ・・・天使達が・・・」
ヴァレストの呟きに、残された悪魔達も無言で頷いた────
お姉さんは、自分の強さを良く分かっています。
分かっているので、よっぽどの事が無い限り、戦いません。
ただし、よっぽどの時は。
よっぽどの事が無いと、大変な事態になるようです。