84話 Watch Cat 02
───昔々、ある日のこと。
王様のところに、虎が訪ねてきた。
『虎』というのは、猫の親戚みたいなもので・・・まあ、悪い奴ではないけど。
自分のほうが大きくて強いものだから、少し威張ってるところがあって。
「おい! お前達は、もう決めたか?」
「何をだい」
「神様への願い事だよ!集合は3日後だぞ!」
「ああ、そうだね。そういえば、そうだった」
「何を呑気な事を!
ウチはな、一族で話し合った結果、『牙』を強くしてもらうことにした!」
「君達の牙は、今でも十分に鋭いじゃないか」
「いや!もっと、もっとだ!そして、沢山の獲物を狩る!」
「なるほどね」
「お前達は、そうだな・・・『牙』よりも『素早さ』を貰ったほうがいいな」
「今でも十分に素早いけどね」
「だから!もっと、もっとだ!」
しばらくの間、虎は大声で色々と喋っていたけど。
やがて王様が目を細め、うつらうつら、と揺れ始めたので、渋々帰ることにした。
それでも、小さな親戚の体に毛布を掛けてから、というのが虎の優しいところ。
───王様は、ぱたん、と扉が閉まり、誰も居なくなったのを確認して。
ゆっくりと身を起こした。
・・・虎が言う、『神様への願い事』。
それは一ヶ月前、各種族の代表者に届いた手紙に端を発する。
”某月某日某時、
全ての種族の長は、創造主の前へ集まり、要望を述べよ。
どんな事でも叶えるが、ただし、1つのみ。
注意!!
時間厳守!!”
・・・実のところ。
王様は、その手紙を読んでいない。
ネズミが郵便受けを開けて、盗んでいったから。
けれど、王様はすでに、何が書いてあるのか知っていたし。
『届いていない』ほうが都合が良いので、ネズミを追わなかった。
(『何でも1つ、願いを叶える』?
───ふふん。
そんなうまい話があって、たまるもんか)




