78話 自己責任と、贈り物 04
「───だはあぁぁ・・・・・・」
ようやく、途中休憩まで漕ぎ着け。
俺は、喫煙室の椅子に腰を下ろした。
上等な座り心地に、溜息1つ。
煙草に火を付けるが、いつもより苦く感じる。
とてもじゃないが、あんなのは『交渉』の場と呼べない。
もはや、話し合いの体を成していない。
どうする?
どうなるんだ、これ?
閉会まで、あと2時間も残ってるぞ・・・。
「───少し、邪魔をさせてもらおうか」
げぇっ!?
イスランデル!?
何で、対面に座るんだよ!?
幾らでも席が空いてるだろ!!
あっち行けよ!!
「・・・お前、煙草吸うのかよ」
悠々と吹かしやがって。
「こんな物、大した毒でもないが」
「体の心配なんざ、してねぇよ。天使としてどうなんだ、って話だ」
「出世しているのでね。ストレスも貯まるさ。
それに引き換え、今の君は。
宿敵だった頃の記憶を失ってしまいたいほど、哀れだな」
「失えよ、勝手に」
「──────」
「・・・・・・」
「ランツェイラは、元気か?」
「実の妹を犯罪者呼ばわりしておいて、良く言う」
「私にも、立場というものがあるのさ」
「へいへい───元気でやってるよ。
美味い食事を作ってくれるし。
最近は、うちの若い奴のバンドに入って唄ってるぜ」
「───そうか。唄っている、か」
イスランデルが数瞬、目を閉じ。
それから、微かに笑った。
「しばらく、面倒を見てやってくれないか」
「お前に言われなくても、そのつもりだ。
あと、しばらくじゃない。もう返さねぇよ」
「そのほうが良いだろうな」
「・・・・・・」
「──────」
「お前。本当に邪魔だから、会議場へ戻れよ。
今のうちに、少しでも意見調整とかしてこいって」
「そう邪険にするな、アルヴァレスト。
話はまだ、終わっていない」
「ああ?」
テーブルの上に。
イスランデルの腕が、伸ばされた。




