75話 自己責任と、贈り物 01
【自己責任と、贈り物】
───風が吹く。
山の向こうから。
海の彼方から。
───風が、時間を運び。
人を動かしている。
薄く白煙を上げて、車両が通り過ぎ。
信号機の下、ストロー付きのカップを手に語らう姿がある。
・・・ここは、沢山の『風』が吹いたのだ。
・・・そして、変わった。
決して、悪い事ではない。
道行く人々の表情が明るく。
暮らしが豊かならば、その方がいい。
ただ、『風』の流れが変わった時、自分はここにいなかった。
それだけの話。
ほんの少しの後悔と、懐かしさ。
寂しさがあるだけで。
「昔は・・・露店を冷やかしながら、骨董品屋を回ってたもんだ」
「例の、宝探しですか」
「おう。宝探しだ。竜はみんな、『収集家』だからな。
当時の上海は香港と同じく、『魔都』なんて呼ばれてた」
「各国の諜報組織が、入り乱れていた時代ですね」
「人だけじゃなく、物もだ。
100の商品の内、50は真っ赤な偽物。
だが、1000の内に1つくらい、『掘り出し物』があって。
胡散臭くて、わくわくして。
妙な熱気と、高揚感があったよ」
「なるほど───ところで、ボス」
「何だ」
「そろそろ、着きます。あそこにホテルの看板が」
「・・・やめろ。俺を現実に戻さないでくれ」
「──────」
「・・・何で俺が、『代表』なんだよ?」
「さあ」
「こちら側の面子、全員俺より位階が上だぞ?
しかも、バリバリの『好戦派』だ。
それをどうやって仕切れ、ってんだよ?」
「さあ。私に言われても」
「・・・代わってくれよ」
「評議会の指示ですから。
現実を直視してください」
「・・・・・・」
「『責任を取ってこい』、という事でしょうね」
「・・・あ?何の責任だ?」
「色々とやらかした事の」
「おいおい、複数形か?
一体、俺が何をやった、って───」
「着きましたね」
「・・・代わってくれよ!!」
「それでは、いってらっしゃい」
「ついてきてくれよ!!」




