73話 情けない背中 03
流石に『ゲーム』の中の設定には無いし。
人間は知らないコトだろうけど。
───私達エルフは、竜が好きだ。
───特に、その背中に乗って、空を飛んでもらうのが大好きだ。
これは老若男女を問わず、絶対。
エルフとして生まれて、竜が好きじゃない者は存在しない。
「どれくらいか?」と言うと・・・う~~ん。
目の前に竜がいて、その背に乗せてもらえるとしたら。
仲良し家族でも、一番良い場所を巡って喧嘩になるくらい。
むしろ、エルフが喧嘩する理由なんて、それくらいしか思い浮かばない。
・・・でも、ね。
竜なら誰でも良い、って訳じゃないの。
優しいけれど、不器用で。
カッコイイけど、少しドジで。
好意を持っていても、言葉に出来ず。
そのくせ、「好きだ」なんて言われたら、固まってしまって。
「大抵のことは何とかするよ」と言うけど、上手くは出来ずに。
だから周囲が、放っておけなくて。
「乗せて!」と頼んだら、少し『引く』くらいの。
『そういう竜』が、好きなのだ。
エルフは、それが一番好きなのだ。
一応、エルフ族の名誉の為に付け加えておくけど。
───私達は決して、変態ではない!
───変質者なんかじゃない!!
でも、誤解されたくないから。
当の竜達には、そのコトを言ってはならない決まりになっている。
うん。
誤解されたくないからね!
オーレンには、とても感謝してるけど。
彼は駄目。
本物のプレイボーイだから。
恥ずかしがる事もなく、どんどん背中に乗せるだろうから。
私の中、エルフの本能が断言している。
《彼は、違う》、と。
───私が今、背中に乗せてほしいのは。
アルヴァレスト先輩だ。
もはや私達にとって、伝説級の竜。
アルヴァレスト先輩、なのだ・・・。




