表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
732/739

730話 ま" 02


(会議室って───何処(どこ)の会議室だ?)



すでにカルミアの姿は見当たらず。

廊下では、決して少なくない職員達が小走りに移動している状態だ。



(どうなってるんだ、一体??)



よく分からぬまま、その『流れ』に乗るように走る。

運動不足だが、走る。

後ろから押されかけるのを感じつつ、何とか転倒しないように走り切って。



───辿り着いたのは、同階の東側に位置する『第一会議室』。


───開けっ放しの入り口から中へと入るなり、視界に飛び込んできたものは。



(うわっ!!)

(何だこれええええっ!!??)



中央に寄せた、全てのテーブル。


その上に載せられた料理。

料理。

料理。

シャンパン。

ワイン。

デザート類。


これでもか、とばかりに盛られたそれらに、皆が群がっているが。


私は逆に脚が止まり、顔が引きつった。



いかん。

こりゃ駄目だ。


『こういう』のは、気軽に(つま)んでいいものじゃあない。


評議会(メナール)の。

いや、旧・評議会議員のパーティーにも呼ばれた経験がある自分だ。

そこでさえ、滅多と提供されなかったような、高級の!

超特上の品々じゃないか!


おい、駄目だってば!

立ったまま食べるな!


まず、何はともあれ、最大限のフォーマルな服装(かっこう)

当然、所作(マナー)も相当なグレードが求められる。

一品(ひとしな)ごとに、他の誰とも(かぶ)らぬ評論(うんちく)だって必要で。


考え無しにポイポイと口の中に放り込めば、たちまち恥をかくこと請け合い。

中途半端に関わるくらいなら、回れ右して逃げ出すべき《おもてなし》だぞ!


どれもこれも、紙皿に取り分けるような代物じゃあないんだよ!

プラスチックのフォークを突き立てるなッ!

食材の段階から選びに選ばれた、気高い料理を汚すつもりかッ!?

パンケーキを手で持って、直接かぶり付くな!

そこいらの安物とは訳が違うんだぞ!

それ一枚で、私の小遣いが全て消し飛ぶんだぞ!?


これだから、モノを知らない『庶民』ってやつは!!




「───おっ、ヤックモル君!」



叫び出す寸前の怒りにわななき立ち尽くしていると、肩を叩かれた。


報道部のトップ、ヒルダーズ部長。

よく飲みに誘われるが、一度も(おご)ってくれたことがない、ケチな男。

噂によると現在、家庭内別居の状態。


そういう部分も含めて色々と自分に似ている為、どうにも好かない相手だ。



「やぁやぁ、有難うね!

ウチの部も全員で、御相伴に預かってるよ!

凄いねェ、君んところのオルトゥ君は!」


「───は??

オルトゥが、何ですって?」


「これ、彼の『差し入れ』なんだろ?

次から次へと持って来て、ここに並べてるのを見たよ?」



え??

『差し入れ』??


いやいや、いや!

こんなの、平の給料でどうにかできるようなモンじゃないから!

できちゃイカン、レベルなのよ!

アンタもそれくらい分かれよ、部長職だろ!


どう見たって明らかに、格式高い老舗の名店からの取り寄せじゃないか!

しかも、このデタラメな量だぞ!

いつから予約を入れて、どれだけ支払った?

あいつ、実家でも売却したのか?



まさか。


もしかして、”社内経費で落ちる筈”、とか。

”請求書を回しとけば大丈夫だろう”、なんて。

そんなウルトラ阿呆なこと、考えてないよな!?



───慌てて、混雑した『即席ディナー会場』を見渡せば。


───人だかりから少し離れた壁際に、バカガラス発見だ。



野郎!!

グラス片手に、何を気取ってやがる!!


おい、そこから動くなよ!?

今すぐ行くからな!?


絶対に動くなよッ!?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ