711話 僕の事を 04
「・・・とにかく、爆弾に関しては言える事がない。
自分でも、理論立てて説明出来ないんだ。
何回聞かれようが、無理なものは無理さ」
「──────」
沈黙。
蛇のように細めた目で、男が僕を凝視する。
もう一発ブチかますかどうか、悩んでいるらしい。
おっかないな。
心に余裕を持とうぜ?
ストレス社会においては、個々のセルフケアこそが命綱だぞ?
「───だったら、爆弾に突っ込んでいった理由は何だ」
「ああ?」
「わざわざ身を盾にして、近くの連中を避難させたのは、どうしてだ」
「”どうして”って、そりゃ。
そうでもしなきゃ、人が死ぬだろうが」
「”そうしろ”とお前に命令したのは、どこの組織の誰だ」
あのなぁ。
薬でもキメてるド阿呆かよ、こいつ。
どうあってもこの件を、アヤシイ何かのせいにしたいって?
想像力が暴走する『お年ごろ』か?
『陰謀論にドハマリのキッズ』かよ?
SNSで親指上げてもらうだけで、満足しろっての。
もういっそ、得意満面で『カトリックの特務員だ』とバラすか?
・・・まあ、駄目だよな。
本気にされた場合は多分、手が付けられない事態になるよな。
政治介入だとか指摘され、国際問題に発展して大騒ぎだ。
そんでもって僕は。
ようやく、晴れてクビになるってワケだな!
「・・・組織とか、そんなものはない。
言い掛かりだ、夢見るのも大概にしてくれ。
こういうのは、ただのイジメだからな?
あんたはイジメっ子で、僕はイジメられっ子だよ」
バンッ。
また発射音がして、脚が痛んだ。
バンッ。
くそっ!
もうこれ、いくら何でも限界だぞ!
更に追加で、金属棒による打撃が見舞われた。
1回、2回。
3回、4回。
5回、6回。
完全に抵抗不能。
歯を食い縛り、ひたすらカウントに集中するしかなかったが。
突然、ばきり、と。
頭の中で、何かが割れる音が聴こえた途端。
───視界の半分が、暗くなった。
───真っ暗な穴のように、そこだけ何も映らなくなって。
”ああ、これは脳にダメージ入ったな”
そう認識しながら、激しく嘔吐した。
・・・おい。
ついにコイツ、一線を越えやがったよ。
向こうも向こうで、その事に気付いたんだろうな。
忌々しげな舌打ちが、小さく響いた。




