68話 Tears of Victors 08
「先生は、そのまま蹴り続けろッ!!
『攻撃』班、準備ッ!!
3・・・2・・・1・・・GOッ!!」
「《盾》に『治癒』を。
連続詠唱は禁止。
1~6番の順序を厳守して使用」
俺と離れた位置で、プレイギルが冷静に指示を飛ばしている。
サンダルを履けるのは、先生のみ。
つまり、《盾》である先生が倒れたら、全滅確定。
『校長先生』の攻撃を受け止める以上、『治癒』は必須。
加えて、蹴る度に魔力を消費しているから、『魔力補給』もだ。
その過程で敵対値を高め過ぎれば、詠唱者に攻撃が向かってしまう。
そのあたりを上手くコントロールするのが、プレイギルの仕事だ。
『攻撃』班は現在、順調に『校長先生』の体力を削っている。
・・・赤い。
・・・『校長先生』は、とても赤い。
だが、これは怒ってらっしゃるからであり、『炎系属性』な訳ではない。
『氷撃』の類は、大して効果が無いのだ。
・・・『校長先生』は、『無属性』。
ついでに言えば。
悪名高き、魔族教職員組合・・・通称『魔教組』にも属しておられない。
独自の教育理念に燃える、孤高の教育者である。
・・・その結果が、この『特別行事』なのだが。
「先輩!!見ててくださいッス!!
竜族の誇りに懸け、このオレのドラゴニック・パワーでッ!!!」
「ちょッ・・・!!待て待てッ!!!」
ビシビシと『校長先生』の尻を引っ叩いている、オーレンに。
ぐるり、と巨体が振り向く。
「ブルルゥアアアアアーーー!!!」
無造作に右腕が振り下ろされ。
べちんッ!!
「へぶうッ!?」
ああッ!!
一発で倒れやがった!!
見所のあるヤツだったのに!!
熱い魂を抑えきれなかったのが、敗因か!!
火竜なだけにッ!!
「左隣のヤツ、オーレンの武器を拾って使えッ!!
以降、お前が『攻撃』班、班長だッ!!」
「は、はいッ!!」
「敵対値を取り過ぎるなよッ!!
パン!パン!パン!、休んで、パン!パン!パン!、だぞッ!!」
「はいッ!!」
PingPongのラケットが、ひたすら『校長先生』の尻に炸裂する。
ちらり、と横目で確認すれば。
『雑魚殲滅』班は、何とか安定しているようだ。
次々に湧いてくる『ミニ校長』を、『引き役』が誘導。
教室の角で絶え間なく処理している。
・・・留学生らしき、エルフの女の子が上手いな。
元は、『探索チーム』のほうに居たのか?
会話する暇も無いまま、戦闘開始になってしまったが・・・。




