67話 Tears of Victors 07
『校長先生』の見た目は、まあ、アレだ。
何のヒネリも無く風船2つを縦に繋げた、シンプルな形状。
『ミニ校長』に、カールした八の字ヒゲを付けて。
そのまま大きくしただけだ。
・・・天井に頭が突っかえて、若干変形はしているが。
・・・後はまあ、申し訳程度の、丸っこい手足があるくらいか?
「~~~~~~」
余裕の笑みで前進してくる、『校長先生』。
突如、結界の向こう側に、小さなラウンドテーブルと椅子が出現し。
どうやったかは不明だが、そこに腰掛けて。
「~~~~~~」
小さな小さなティーカップが、口元に運ばれる。
即ち。
アフターヌーンなティータイムを楽しんでいらっしゃる。
チャララーーララーー。
《絶対攻防壁の残り時間、5分です》
奇天烈なサウンドと共に、アナウンス。
・・・ヤバいッ!!
5分間で、作戦会議かッ!?
「───という訳で。マッチャム先生、《盾》な」
「ちょっとおおおお!?嘘でしょ~~!?」
「仕方無いでしょう。先生のサンダルが『ヘイト武器』だと、確定しましたから」
「誰か代わってよおおお!!」
「先生以外に、履ける者がいませんので」
プレイギルが、すい、と長い銀髪を掻き上げ。
落ち着いた口調で、先生を『落とし』にかかっている。
白衣が似合うなぁ。
やっぱり、人間界じゃ医者をやってるのか?
「『攻撃』班、武器は持ったか?」
「は・・・はいッ!!」
「お前らは、とにかく『校長先生』の背後から叩け。
大丈夫だ、殆どの攻撃はマッチャム先生が引き受けてくれる」
ひぃ!、と先生の震え声が上がる。
うむ。
聞こえるように言ったからな。
「おっと。残り30秒ですね」
「配置に付け!!無事に卒業したかったら、気合入れていけよッ!!」
「はいッ!!!」
・・・ガシャアアアアアン!!!
ガラスの砕け散るような、騒音。
それとほぼ同時、教室内へ『ミニ校長』の群れが侵入してくる。
「『氷撃』!!」
「『炎の矢』!!」
『雑魚殲滅』班が先制し、素早く後退。
教室の隅まで奴等を引き寄せる。
プレイギルが言っていた通り、『決戦場』の準備は万全だ。
障害物となる机、椅子、ロッカー等の備品は、すでに他の教室へ運び出してある。
後は、雑魚と『校長先生』の引き離しを、どれだけ維持できるか───
「~~~~~~」
『校長先生』が、入り口で悶えていらっしゃる。
その巨体では、中に入れない。
ぐにぐに、と体を揺すり、変形しながら突破を試みていらっしゃる。
「先生ッ!!恐れずに近寄るんだッ!!
蹴りまくれッ!!
今のうちに、敵対値稼ぎだッ!!」
「う、うわあああーー!!やってやるじょーー!!」
おかしな語尾になっているが。
半泣きならぬ、全泣きで先生が特攻。
「こう見えても!!昔は地元で、『マッド・ベア』と呼ばれてたんだじょーー!!」
げしげし、と蹴り続ける、俺の元担任。
ほほう。
そんな過去があったのか。
意外だなぁ。
入り口にハマッた『校長先生』の体色が、次第に赤く染まって───
「そろそろ抜けて来るッ!!先生、中央へ移動!!」
「わああああーー!!」
すぽん、と軽快な音が響き渡り。
「ブルルオアアアアアアアーーー!!!」
───赤鬼と化した『校長先生』が突っ込んできた!
なんて学校・・・。
もしもこの日、授業参観とかだったら、どうなるんでしょうか(笑)




