685話 天啓 05
───私は決して、《便利屋》ではない。
『The Pain of Dry Bones』の放映中も、放映後も、『集会』はあった。
ごく小規模、2〜3名による『儀式らしきもの』は、何回も確認している。
それらは確かに、『それっぽい事をして』はいたが。
結局は、遊びだ。
好奇心と暇に任せた、文化的な余興。
一々付き合うようなものではない。
私が本当に現れてみせたところで、悲鳴を上げ逃げ出すだけだろう。
そして、二度と同じ事はしない。
向こうにその程度の覚悟しかないのは、明白だった。
けれども。
現在、日本の都庁とやらを包囲している集団は、それらと根本的に異なる。
彼等はとんでもなく強い《願い》を持ち、必死に訴えているが。
何をしてほしいでも、助けてくれでも、叶えてくれでもない。
単純に、私の《復活》を望んでいる。
ただそれだけの。
それさえ果たされるなら、後はどうなっても構わないという、強固な願い。
「───私が───間違っていたわ」
「レンダリア様」
「正直、失念していた。
彼等の事、心情を計算に入れていなかった。
いいえ。
より正確に言うなら、ほとんど気にも止めていなくて。
時間が経てば煙のように消えるだろう、なんて楽観していたのよ」
「・・・・・・」
溜息をつく私の横で、セイジは無言。
私は。
現実の世界へと出て来る為、多くのドラマ視聴者の『感情』を利用した。
その際には、悪魔や風変わりな天使など、人ならざる者のそれも使ったが。
《出現しようとする私》を知覚できたのは、一部のみ。
特に人間は、ごくごく少数しか何が起きているのか理解できなかった。
それはまあ、仕方のない事ではある。
人間達はそういう能力を持ち合わせていない故に、『人間』なのだ。
皆がアニーみたいに突き抜けてたら、この世はとっくに崩壊している。
───問題は、その後だ。
ドラマの最終回にて、【悪魔レンダリア】は死んだ。
完全に消滅した。
つまり。
私の《現界》を知らぬ者にとっては、それこそが結末。
揺るぎない事実で。
彼等は受け入れることが出来ず、苦しんだのだ。




