66話 Tears of Victors 06
「消火器、ピンを抜けッ!!構えッ!!」
「はいッ!!」
「放出ッ!!」
「はいッ!!」
「使い切ったら、後ろへ回せッ!!再装填、開始ッ!!」
「はいッ!!」
───予想通り、3階へ上がって直後が、激戦地点となった。
使っている消火器は当然、人間界のそれとは異なる物だ。
対・火炎系魔法用。
本来は、魔法学の授業で『魔力暴走』が起きた際の、防災設備。
これを、奴等に使うのだが。
効くのは、赤い『ミニ校長』だ。
青いのは氷雪属性・・・全く効果が無い。
一応、対・氷雪系の消火(??)器も、あるにはあるんだが。
あちらさんは、赤青混じって突撃してくる。
2種の消火器で対処なんかしてしまうと、最悪だ。
干渉して、どちらにも殆ど効果がなくなる。
このあたりは、遥か昔の先輩から受け継いだ知識だ。
こういった情報無しに、この『特別行事』は乗り切れない。
そして。
乗り切れなければ。
『校長先生』を倒せず。
屋上の『校旗』を、ポールの根元まで降ろされてしまったら。
───アンデルト・レンバー第3初等学校は即時、『閉校』となり。
───在校生の全てが、他校の《途中編入試験》を受けざるを得なくなる。
友人とは、離れ離れ。
しかも、編入試験に合格しなければ、『初等学校・留年生』だ。
いくらなんでも、酷すぎる!
スパルタ教育とかのレベルじゃねぇぞ!
そもそも、だ。
校内に卒業生以外が入れない、はともかく。
教員も、卒業生も強制的に能力を限定される、とか!
完全に『禁呪』だろ、これ!!
「突破してきたのを、狙い撃てッ!!」
「『氷撃』!!」
「『氷撃』!!」
「うわあああッ!!だ、誰かッ!!」
「『治癒』をッ!!早くッ!!」
「こっちもッ!!」
「退却だッ!!『決戦場』まで退がれッ!!
使用中の消火器は、使い切ってから逃げろッ!!」
号令をかけ。
動けないほど体力を消耗したヒヨッコを引きずり。
8年3組の中に、ブン投げる。
「『絶対攻防壁』、発動ッ!!」
黄金色の、格子状結界が展開される。
ぷるうーー!ぷるるーー!!
ぷるるあーーー!!
物凄い勢いで『ミニ校長』が押し寄せて。
結界にブチ当たっては消滅。
・・・だが、それもすぐに収まる。
「うおお、来やがったッ!!」
『ミニ校長』の群れを掻き分け。
巨体が現れた。
我が母校最高の、教職(権力)者。
初代にして、おそらく次代などないであろう、『校長先生』のお出ましだ───




