677話 落ち着いてから死ぬ 03
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いかれた───いや、イカした天才老人達の所業。
目下、鋭意取り組み中の『スペシャル実験』。
その半分までは、どこにでも提出可能な代物だ。
具体的に、世の役に立つかどうかは別として。
少なくとも、アメリカ合衆国や提携各所からOKを頂ける体裁にはなっている。
ただし。
僕の任務の範疇は、それを含んだ上で『それ以外』にも及ぶ。
そっちのほうは当然、公的機関には提出不可能。
《書類》の形でこの場に持って来ることもできない。
そういうオカルティックなヤツの、オンパレードを。
たった今、僕はエイスリルから《口頭で伝えられている》んだが。
「・・・お前、よくそんなペラペラと暗唱出来るな・・・」
うんざりするような量に加え、専門用語がアホほど出てきやがる。
聞き返せばその都度、解説が加わる。
規則上、スマホに打ち込むわけにはいかず。
かと言って、全部が全部、正確に憶えられるわけもなく。
こうなったらもう、『魔力の焼き付け』による走り書きしかない。
”物品の盗難で情報が流出しました”とか、査定に大ダメージだからな。
おかげで袖を捲り上げた左腕に、タトゥーのようなメモがビッシリだ。
そのうち消えるとは思うけど。
消えなきゃ本当に、意味不明のダサいタトゥーだぞ。
「『暗唱』というか。そこは単に、種族の差でしょ」
「まあ、そうだけどな」
自慢するでもなくサラリと流されたら、口撃の糸口も見つからない。
参ったな、ホント。
『マーカスエンジン』の調子が狂うだろ。
営業妨害だぞ、これ。
思い切りブン殴ったらショックで馬鹿に戻るとか、救済措置はないのか?
「───でね?
ここまでは、報告書に書いても良い部分なんだけど」
「え??
おい、よせよ。
何か、《書いちゃいけない事》があるみたいな言い方するなって」
「仕方無いわよ。実際にあるんだから」
ふう、と軽く溜息をついてから、エイスリルが僕を見つめた。
「『焼き付け』は、無しでお願い。
よく聞いて、しっかり憶えてね。
報告書には一切、記せないでしょうけど。
多分、これがマーカスの任務の《本命》だと思うわ」




