674話 さいきょうどらごん 04
「・・・ああ?
何だよ、『どれくらい』って」
陛下の強さを疑ってんのか?
自ら出陣されて、ドカスカ倒したんだぞ、群がる《蜂共》を!
文句無しだろうが?
「いや、ほらぁ。
《位階》上位者のアル君から見てさぁ。
”おおよそ、俺の何倍くらいだな”、とか。
”力はあるけど、戦い方は甘そうだな”、とかぁ」
「馬鹿を言うのも大概にしろ。
そりゃあ、療養明けに出てこられたんだから、本調子じゃなくて当然だが。
それでも、俺如きが立ち向かえるようなモンじゃねぇよ。
圧倒的に上だ、次元が違うってやつだ」
「んーー、でもさぁ。
陛下って一部、『白くなってた』じゃん?」
「ああ。《塩化》してたな、かなりの範囲。
だがその上で、あの強さだぞ?
流石は地獄の支配者、我等が祖にして王!」
「───なーーんか、不自然だなぁ」
「え?」
「思い出したくないだろーけどもぉ。
アル君だって大戦時、死んでゆく悪魔は山ほど見たでしょ?
一度《塩化》し始めたら、本気で抵抗し続けるしかないわけで。
抵抗出来なくなったら、一気に全身に廻って《塩柱完成》の憂き目だよね?
つまりさぁ。
陛下は《塩化》に逆らう為に力を振り絞りつつ、《蜂》と戦ってた。
最も強い悪魔である陛下が、その御身すら《塩化》してしまうような。
そういう『とんでもない相手』と裏でバチバチやりながら、《蜂》も倒した。
───これって、おかしくなぁい?
一歩間違ったら、その場で砕けて終わりなのに。
いくらなんでも、余裕ぶっこき過ぎじゃなぁい?」
「おかしくないだろ、どこも。
それくらい陛下は強いんだよ、無敵なんだよ。
俺らの《当たり前》なんざ、全く意味を為さないんだよ」
「そうだねぇー。強いねぇー。
実は陛下って。
死んでも、それだけじゃ『死ななかったりして』ねぇー」
「??
いや、だからそう思っちまうくらい、滅茶苦茶に強いって事だろ。
というか・・・どうしたんだよ?
何だってそんな、陛下の御力を疑うんだ?」
「うん───ちょっと、このままではイカン!、ってね。
なるべく自然にさ。
みんなが納得出来る形で、陛下には弱くなっていただきたくてぇ」
「はあ??」
「ま、いわゆる『下方修正』ってやつよん」
「・・・・・・お前、まさかッ!?」
「ふふ、ふへへへ!
アタクシ、次の新刊でっ!
《アルヴァス》に陛下を襲わせようかとっ!!」
「おいッ!?
ふざけんなこの、糞エロ作家ッ!!」
「ああ、陛下───おいたわしや!
真の力が発揮出来ないばかりに、”えいや”と組み敷かれ!
誰にも触らせたことのない、至高な《すぼまり》に!
ここぞとばかり、《アルヴァス》の淫猥な指が!!」
「やめろッ、書くなッ!!
妄想すらするなッ!!不敬だぞッ!!」
「いいって事よぉ、アル君!
名称ボカして、でもそれっぽい姿で、読者様の想像を上手く誘導するから!
検閲なんて、どうにかして擦り抜けちゃうからぁ!」
「う、うああああ!!
何やってんだ、評議会!!
早くこの馬鹿を連行しろおおぉ!!」
「ッくくく!
極上のネタ、毎度ありっしたぁ〜〜!」
駄目だ、こいつ!
目がマジだ、本気で執筆する気だ。
イカレてる。
魂が腐り切り、直視不可能なくらいに糸を引いてやがる。
そして。
俺のほうも、かなりマズい!
妙に酒が効きまくって、フラフラしてきた。
倦怠感が半端無い。
ここいらで逃げないと、取り返しの付かない事態に発展しそうだ!
「・・・よ、よし!
これでもう、用は済んだからな。
俺はそろそろ、帰らせてもらうぞッ」
「んあー?
もうちっと遊んでいきなよ、アル君〜。
ほら、アレだ。
一発、ヤッときますかい?
アタクシ、おっぱいデケェよ?
おまけに処女ビッ◯よ?」
「全身全霊をもって、お断りだッ!
お前の《最強ドラゴン》にでも、面倒見てもらえッ!!」
転移だ、転移!
急げッ!!
しこたま水を飲んで、さっさと眠ってしまいたい!




