65話 Tears of Victors 05
『アルヴァレスト』は、ヴァレストさんの本来の名前。
1度目の降格時に、罰則で名前を削られました。
「ええとね。この子がさっき話した、例の『問題児』だよ」
「オレは、問題児じゃないッス!火竜のオーレン、ッス!」
「制服着てないじゃん!校則違反でしょ、その服装!」
「男たる者、常に正装ッス!
本当なら、ちゃんとしたスリーピースで決めるべきッス!
でも先生のメンツってのも分かるんで、これで我慢してるッス!」
「何それ!?」
白のサマージャケット。
同色のスラックス。
ノーネクタイではあるが、渋めの緋色のシャツ。
ううむ───
「マッチャム先生。彼は、立派だぞ?」
「はぁっ!?」
「有難うッス!アルヴァレスト先輩ッ!!」
「おう、俺の・・・昔の名前を知ってるのか」
「はいッ!オレら竜族の、伝説ッスから!
評議会とか、クソ喰らえッス!!」
おうおう。
若いねぇ。
目が輝いてるねぇ。
「服装は100歩譲る、としてもね!
君の校内での行動は、目に余るんだよ~!」
「何がッスか?」
「手当たり次第、女子生徒を口説いてるでしょ!?
何度も注意してるのにっ!!」
「竜のオスは、財宝を蓄え、美しい女性を囲い込むのが当然ッス!」
「か・・・『囲い込む』っ!?」
「今はまだッスが、いずれオレも自分の『巣穴』を持てば、そうするッス!」
「マッチャム先生。彼は、立派だぞ?」
「・・・・・・そういえば・・・君も、問題児だったよね・・・」
「おいおい。よしてくれよ、笑えない冗談は」
「・・・・・・」
「先生は、ギャグのセンスが無いッスね」
「・・・・・・」
8年生、火竜のオーレンを含む、15名。
7年生、ゼロ。
6年生、27名。
3~5年生、21名。
後は、俺とマッチャム先生。
───以上。
ここに居るのは、合計65名。
「先生。7年組はどうした?」
「修学旅行中」
「8年組の残りが、やけに少ないが?」
「アル君。思い出してみて?」
「何を?」
「午前の授業が終わったら、どうしてた?」
「廊下の窓から飛び降りて、中庭に来てる外部のパン屋に」
「そして、リタイア。だって職員室の横だよ?」
「おお・・・う」
これは回避不可能。
俺が在校生なら、今頃は意識を失ってたな。
「前線がここなら、『探索チーム』は今、3階だよな?」
「そうだね。あ、言うの忘れてたっ!
プレイギル君が、助っ人に来てるよ~」
「おお!!アイツ居るのか!
連絡してみるわ」
スマホの動画チャットを起動し、通話申請。
“やあ、アルヴァレスト。久しぶりだね”
「久々だな、話すのは!
お前も普段は、人間界に居るんだろ?
たまには一緒に、酒でも飲もうぜ!」
“そうだね。近々、会いに行こうかな”
「ああ!歓迎するぞ!
・・・ところで、『探索チーム』はどうなってる?
他に同期は居るか?」
“卒業生は、私だけだよ。
何とか『特殊アイテム』を集めたけれど、あと1つ足りないな”
「どれだ?」
“『ヘイト武器』”
「よりにもよって、一番重要なヤツかよ・・・」
“けれど、当たりは付けているよ。
おそらく、『そちら』が持ってるんじゃないかな”
「・・・ん?俺達が、か?」
“そう。機を見て、3階に上がって来てもらえるかい?
こちらは私を入れて、18名だよ。
合流して、最終的な打ち合わせをしよう。
すでに『決戦場』も、作り終えているから”
「了解!あちらさんの侵攻を確認次第、2階を放棄して上がるぜ!
階段登り切った辺りで『雑魚戦』になると思うから、応援頼む」
“分かった。すぐに準備するよ”




