表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
668/744

666話 夜の、もうひと頑張り 04


───エンジンを回してもいない車内に、ひんやりとした心地良い風。


───蜘蛛のお嬢さんが、私の為に使ってくれた魔法だ。



ちなみに詠唱者からすれば、それほど暑くもなかったらしい。


悪魔だからか。

またもや”蜘蛛だから”という、特別ルールなのか。



「藤田先生、これ甘辛くておいひいですねー!

すっごくジューシーで!」



彼女が器用に箸を使って食べているのは、揚げ茄子の煮浸しだ。

鰹節と添えのオクラに彩られた、私の大好物の一つ。


夕飯がまだなのを心配した母さんからの、『差し入れ』なんだけどね。


おせちの『お重』もかくや、という、デラックス三段弁当だよ。

それを彼女の分も含めて、二人前だよ。

コンビニ惣菜が頼りの独身中年には、ヨダレものの《家庭料理》!



いやあ、嬉しいなぁ!

飲み物が冷たい麦茶じゃなく麦焼酎なら、もっと嬉しかったんだけどね!



「先生、この四角いオムレットは?」


「『だし巻き卵』だよ」


「へぇ〜〜。ムカデより」


「虫の話は、()しなさいってば。


・・・ええと。

それで、相談の件だけども」


「はい!」



栄養バランスは完璧なのに、量が《運動部の高校男子》な弁当を頂きつつ。

さてと、どう答えたものかなぁ。



「私はこれまで、アイドルや芸能人とかに夢中になった事が無いし。

当然、関係するような仕事に()いた経験も無いからさ。

ごく一般的な、常識的の範囲内でしかアドバイス出来ないと思うよ?


それでも構わない?」


「よろしくお願いします!」



ルームミラー。

箸を持ったまま、もう片方の手でスマホを操作する姿を見て、注意だ。



「録音は、禁止ね」


「ええ〜〜っ!?」


「駄目だよ、そういう個人を特定できるデータを保存しちゃうのは。

流出した際に、『何の証拠として』使われるかも分からないし」


「!!

そ、そうですよね!

先生、すごい!

なんか、こう───頭いい感じがするっ!」


「・・・そりゃあどうも」



君ね。

これまで講義の時とか、私をどう思ってたのかな?


単なる獲物?

《結婚したい男・ナンバー1》?



「まず最初に確認したいんだけども。


君はアイドル活動で、どれくらいお金を稼ぎたい?

それだけで贅沢な暮らしが出来るくらい、ガッチリと稼ぎたい?」


「え??

いやー、そんなには。


活動に掛ける時間とか労力を考えたら、損になるのは嫌だけど。

それより、みんなに楽しんでもらう方が優先かなー。


姉さん達は”どっちも最大限に”なんて、ハードモードでやってますけどね。

あたしは、もう少し(ゆる)い感じでいきたいです。

じゃなきゃ、長続きしないと思うしー」


「ふむふむ」



意外に真面目なようで、やっぱり基本的には自堕落そうで。

しかし、それくらいの目標であれば、素人でもそこそこの助言は可能かな?



『こういうの』とは全く無縁の、理学部構造地質学教授。

藤田慎一郎、55歳、独身が。



アイドルに対して、真剣に物申す───


申しちゃうかぁ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ